岡山県南部の瀬戸内海に面する平野。岡山市,倉敷市,総社市,瀬戸内市などの地域を含む。吉井川,旭川,高梁(たかはし)川の三大河川および砂川,笹ヶ瀬川,足守川などの堆積作用で形成された沖積平野で,吉井川以東の部分をとくに千町平野と呼ぶ。三角州の成長により16~17世紀には児島半島が陸繫島となったが,ほかにかつて島であったところが平野の中の丘陵として点在する。条里遺構は南限が不明瞭であるが,岡山市中心部以東では山陽本線沿線,以西では国道180号線沿線に顕著に認められ,とくに後者の地域には加茂の造山(つくりやま)古墳(史),三須の作山(つくりやま)古墳(史),吉備津神社,吉備津彦神社,備中国府跡,備中国分寺跡(史),備中国分尼寺跡(史),こうもり塚古墳(史),備中総社,備中高松城跡(史)など古跡や名所が多く,吉備路風土記の丘県立自然公園に指定されている。
河川の堆積作用にともなって開発も進行し,岡山付近では古代に福岡荘,大安寺荘,鹿田荘が置かれた。16世紀末には宇喜多開発が最初の干拓地として成立した。以後,江戸時代には備前藩ではとくに17世紀と19世紀に大規模な新田開発を行い,旭川と吉井川の間に沖新田など,児島湾奥に興除(こうじよ)新田などのほか小新田も入れると175新田,約9200haが干拓された。備中側でも倉敷南部や水島において数多くの新田が生まれた。明治以後は藤田組,第2次世界大戦後は農林省により児島湾の干拓が実施され,また倉敷では水島地先を埋め立てて水島臨海工業地帯が形成された。この平野は古くから穀倉地帯であり,この用水確保のため湛井(たたい)十二ヶ郷用水,八ヶ郷用水,田原用水などの大用水組織が作られ維持されてきた。岡山から倉敷にかけての水田地帯は伝統的な越冬性のイグサ栽培地で,最高時は1964年の5553haで全国の46.3%を占めたが,工業化・都市化による労働力減少およびイグサ栽培の厳しい労働条件のため急速に減少し,最盛期の10%程度になった。岡山市中部や倉敷市の砂礫(されき)地では蔬菜栽培,西大寺ではイチゴ栽培,平野周辺の丘陵部ではブドウやモモの栽培が行われている。児島湾干拓地の興除,藤田は日本の機械化農業の発祥地として有名。平野中央には岡山,東には西大寺,西には倉敷および総社の市街地があり経済的に岡山県の中枢部を形成している。これらを中心として都市化の勢いが盛んで,とくに主要道路沿いに宅地化の進行が顕著である。
執筆者:由比浜 省吾
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岡山県南部、瀬戸内海に面する平野。吉井川、旭(あさひ)川、高梁(たかはし)川の三大河川や砂川、笹ヶ瀬(ささがせ)川、足守(あしもり)川などの堆積(たいせき)作用により形成された沖積平野である。古い時代に吉備(きび)の穴海として広く湾入していた瀬戸内海の一部を埋めたため、かつての島は平野のなかに散在する丘陵になっており、児島(こじま)も16世紀から17世紀初頭には陸繋島(りくけいとう)となって児島半島となった。開発の歴史は古く、岡山市北区津島や倉敷市庄(しょう)などでは平野の地下から弥生(やよい)式の遺物、遺跡が発掘された。条里遺構の南限は不明瞭(ふめいりょう)であるが、岡山市以東ではJR山陽本線沿線から吉井川東岸の千町(せんちょう)平野にかけて、以西では旧山陽道や国道180号沿線に顕著に認められる。平野には両宮山(りょうぐうざん)古墳、造山(つくりやま)古墳、作山(つくりやま)古墳、備前(びぜん)国府跡、備中(びっちゅう)国府跡、吉備津神社、吉備津彦神社、その他の古代の史跡、遺跡が多い。岡山市付近では中世には大安寺荘、鹿田(しかた)荘などがあった。干拓では1584年(天正12)宇喜多秀家(うきたひでいえ)による倉敷、早島付近の開墾を初めとして、岡山藩による17世紀の沖新田その他、19世紀の興除(こうじょ)新田、明治以後は藤田組、第二次世界大戦後は農林省による干拓が行われた。一方、倉敷南部や水島でも多くの新田が開発され、第二次世界大戦後は水島で臨海工業用地が大規模に造成された。岡山県の経済活動の中心で、豊かな穀倉地帯であり、また岡山市、倉敷市が商業の中心をなし、臨海部は工業が発達している。
[由比浜省吾]
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