(読み)テイ

デジタル大辞泉 「弟」の意味・読み・例文・類語

てい【弟】[漢字項目]

[音]テイ(漢) ダイ(呉) (慣) [訓]おとうと おと
学習漢字]2年
〈テイ〉
おとうと。「弟妹義弟兄弟子弟実弟舎弟従弟末弟令弟
門人。「高弟師弟徒弟門弟
自分を謙遜けんそんしていう語。「小弟
〈ダイ〉おとうと。「兄弟
〈デ〉門人。「弟子
[名のり]くに・ちか・つぎ・ふと
[難読]従兄弟いとこ弟姫おとひめ再従兄弟はとこ

おとうと[作品名]

(おとうと)幸田文の小説。昭和32年(1957)刊。17歳の女学生とその3歳下の弟の絆を描く。
(おとうと)市川崑監督による映画の題名。昭和35年(1960)公開。を原作とし、脚色は水木洋子。第34回キネマ旬報ベストテンの日本映画ベストワン作品。第11回ブルーリボン賞作品賞受賞。
(おとうと)山根成之監督による映画の題名。昭和51年(1976)公開。リメーク
(おとうと)山田洋次監督による映画の題名。平成22年(2010)公開。ストーリーは異なるが、作中にへのオマージュが見られる。
(弟)《原題、〈ドイツ〉Der jüngere Bruder》ドイツの小説家、ノサック長編小説。1958年刊行。
(弟)石原慎太郎の長編小説。平成8年(1996)刊行。自身の弟で俳優の石原裕次郎の生涯を描いたもの。平成16年(2004)テレビドラマ化。

おと‐うと【弟】

《「おとひと(弟人)」の音変化》
きょうだいのうち、年下の男。⇔
《「義弟」とも書く》夫や妻の弟。また、妹の夫。義弟ぎてい
古く、性別に関係なく、年下のきょうだいを呼んだ語。→おと1
の―をもて侍りける人に」〈古今・雑上・詞書〉
[類語]実弟義弟妹婿次弟末弟亡弟舎弟愚弟令弟賢弟弟御
[補説]作品名別項。→おとうと

おと【弟/乙】

[名]
上代、男女の別なく、兄弟または姉妹の関係にある者のうち年少の者。おとうと。また、いもうと。⇔
「其の―木花之佐久夜毘売このはなのさくやびめを留めて」〈・上〉
末の子。おとご。
「姉が手を引き、―は抱く」〈浄・油地獄
狂言面の一。不器量な若い女の面。乙御前おとごぜ。おたふく。おかめ。
[接頭]名詞に付いて、
年下の、年が若い、末の、などの意を表す。「―おじ(弟叔父)」「―ご(弟子)」
年若く美しい意を表す。「―たなばた(弟棚機)」「―たちばなひめ(弟橘媛)」

てい【弟】

年下の兄弟。おとうと。「けいたり難くたり難し」⇔けい
師について教えをうける者。門人。門弟。弟子。
「師は若く、―は幼く」〈蘆花思出の記

おと‐と【弟】

《「おとうと」の音変化》おとうと。古くは、同性のきょうだいの年下の者。
「いや―などをっていると、随分厄介なものですよ」〈漱石
「姉―(=妹)の中につとまとはれて」〈更級

だい【弟/提】[漢字項目]

〈弟〉⇒てい
〈提〉⇒てい

おと‐ひと【弟】

おとうと。
わざこのかみ―にけり」〈雄略紀〉

で【弟】[漢字項目]

てい

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精選版 日本国語大辞典 「弟」の意味・読み・例文・類語

おと‐うと【弟】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おとひと(弟人)」の変化した語。「おとおと」とも ) 年下のきょうだい。おとと。おと。
  2. 年下の男のきょうだい。⇔。〔二十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「おとうとの源氏にて、いときなきが元服の添臥(そひぶし)に取りわき」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
  3. 年下の女のきょうだい。いもうと。
    1. [初出の実例]「妻(め)のおとうとをもて侍りける人に、うへのきぬを贈るとて、よみてやりける」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八六八・詞書)
    2. 「古郷には恋ひ忍ぶをとうとの尼上にも文奉るとて」(出典:十六夜日記(1279‐82頃))
  4. 配偶者のきょうだいでその配偶者より年下の男。また、妹の夫。義弟。
  5. 年下であること。
    1. [初出の実例]「かれは十六と云(いひ)けん里の童子よりは、四つばかりもをとをとなるべきを」(出典:俳諧・笈の小文(1690‐91頃))
  6. 弟子入りしたり、仲間になったりしたものの中で、経験の浅いもの。「弟弟子」「弟分」

弟の語誌

( 1 )「おと」は「劣る」の語幹と同源で、「え」と対をなして年齢の上下を区別した。平安時代の「おとうと」は、兄弟の間ではのように「あに」と対をなして弟を指し、姉妹の間ではのように「あね」と対をなして妹を指した。
( 2 )中世には「おとと」のほか、「おとおと」の語形も並存し、キリシタン文献の用法などからみて、「おとと」が一般の通用語で、「おとおと」はより丁寧な語感があったらしい。
( 3 )現代のように兄弟のうち年下のものを指すようになるのは江戸時代からであるが、なおのように原義に近い用法もある。→いもうと


おと【弟・乙】

  1. [ 1 ] 年下の者を表わす。
    1. きょうだいの関係にある者で年下の者。父母とも同じである必要はなく、また、男女にかかわらずいう。弟または妹。⇔兄(え)
      1. [初出の実例]「唯其の弟(おと)木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)のみを留めて」(出典:古事記(712)上)
    2. 長子でない子をいう。特に末子をいうことが多い。おとご。
      1. [初出の実例]「五人はなむしにて乙はひめにてぞ候ひける」(出典:幸若・和泉が城(室町末‐近世初))
    3. 若い娘の通称。
      1. [初出の実例]「『いひや、そのややがむすめに、おとといふてあるは』『扨はそのおとでござるか』」(出典:虎明本狂言・枕物狂(室町末‐近世初))
    4. おとごぜ(乙御前)
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙 年若い者の意を表わす。
    1. 人を表わす語、または人名に付けて、年下の、末の、次の、などの意を表わす。「おと叔父」「おとご(弟子)」
    2. ( 人名または人を表わす語の上に付けて ) 美しい、または愛する、かわいいの意をそえる。「おとたちばなひめ(弟橘媛)」「おとたなばた(弟棚機)」

てい【弟】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 年下の兄弟。特に、年下の男の兄弟。おとうと。
    1. [初出の実例]「弟たるものは、兄にしたがふはよろしき処ぞ」(出典:春鑑抄(1629)義)
    2. [その他の文献]〔白虎通‐三綱六紀〕
  3. 師について教えを受ける者。弟子。門人。門弟。師に対していう。
    1. [初出の実例]「師は若く、弟(テイ)は幼なく、共に理想の光明界を指して」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三)
  4. 自分のことをへりくだっていう語。
    1. [初出の実例]「弟近年視之不啻如糞土也」(出典:随筆・山中人饒舌(1813)下)
    2. [その他の文献]〔杜甫‐狂歌行〕
  5. てい(悌)〔論語‐学而〕

おと‐と【弟】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おとうと」の変化した語 ) 男女にかかわらず年下のこと。また、その人。
    1. [初出の実例]「夫れ、昆(このかみ)は上にして季(オトト)は下に、聖(ひじり)は君にして愚(おろか)なるは臣(やつこらま)なるは古今の典(のり)なり」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前(前田本訓))
    2. 「大草香の皇子は、安康のをととなり」(出典:愚管抄(1220)三)

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普及版 字通 「弟」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音] テイ・ダイ
[字訓] しだい・おとうと

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
皮(なめしがわ)の紐でものを束ねた形。〔説文〕五下に「束の第なり。古字の象に從ふ」とあり、次第してものを締結する意。のち兄弟の意に用いる。第は後起の字である。

[訓義]
1. 次第、順序、次第して束ねる。
2. おとうと、としした、としわか、自己の謙称。
3. すなお、つつしむ。
4. 悌と通じ、やすらか、たのしい。
5. 但と通じ、ただ。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕弟 男子後生を弟と爲す。於止宇度(おとうと) 〔名義抄〕弟 ヲトウト・ツイデ・シバラク・ヤスシ・ツギ 〔字鏡集〕弟 ヲト・シバラク・ツギ・タダ・ツイデ・オトト・サイハヒ・ヤスシ

[部首]
〔説文〕に(こん)の一字を属し、〔玉〕に第を加える。(とう)(涙の象形)に従う。鰥(かん)(老いて妻無きもの)がに従うのと同じ構造法である。〔説文〕五下に「の人、兄を謂ひてと曰ふ」とあり、のち昆を用いて昆弟という。

[声系]
〔説文〕に弟声として睇・・涕・など九字を収める。次第の意をもつ字が多い。

[語系]
弟・・悌dyeiは同声。は女弟。兄弟に善きを悌という。遲(遅)dieiは同系の語であろう。

[熟語]
弟舎・弟恭・弟兄・弟敬・弟昆・弟子・弟長・弟靡
[下接語]
愛弟・家弟・外弟・豈弟・凱弟・季弟・義弟・兄弟・賢弟・孝弟・高弟・昆弟・子弟・師弟・舎弟・従弟・順弟・諸弟・小弟・仁弟・宗弟・弟・大弟・長弟・徒弟・不弟・母弟・門弟・友弟・令弟

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

デジタル大辞泉プラス 「弟」の解説

①石原慎太郎の小説。1996年刊行。著者の弟で俳優の石原裕次郎の生涯を描いた私小説。同年、第50回毎日出版文化賞(特別賞)受賞。
②①を原作とする日本のテレビドラマ。放映はテレビ朝日系列(2004年11月)。テレビ朝日開局45周年記念のスペシャルドラマ。全5回。脚本:ジェームス三木。出演:長瀬智也、渡哲也、舘ひろし、三浦友和、高島礼子ほか。

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