(読み)ココロザシ

デジタル大辞泉 「志」の意味・読み・例文・類語

こころ‐ざし【志】


㋐ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標。「を遂げる」「事、と異なる」「を同じくする」「青雲のを抱く」
㋑心の持ち方。信念。志操。「を高く保つ」
相手のためを思う気持ち。厚意。「を無にする」「おはありがたいが、辞退します」

㋐謝意や好意などを表すために贈る金品。「ほんのですが、御笑納ください」
香典返しや法事の引き出物、僧への布施の包みの表に書く語。→寸志
心を集中すること。注意。
「―はいたしけれど、…上のきぬの肩を張り破りてけり」〈伊勢・四一〉
相手を慕う気持ち。愛情。
「一夜のほど、あしたの間も恋しくおぼつかなく、いとどしき御―のまさるを」〈・若菜上〉
死者の追善供養
「未来の因果を悲しみて、多くの―を尽くして」〈曽我・二〉
[類語]抱負大志謝礼返礼報礼謝儀礼物礼金謝金報謝報酬薄謝薄志謝辞

し【志】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]こころざす こころざし しるす さかん
学習漢字]5年
心がある目標をめざして動く。こころざす。「志学志願志向志望
こころざし。「意志弱志初志寸志大志闘志同志篤志微志有志立志
書き記す。書き記したもの。「三国志
志摩しま国。「志州
[名のり]さね・むね・ゆき

し【志】

紀伝体歴史書で、天文・地理・礼楽などを事項別に分類して記した部分。
律令制で、衛門府えもんふ兵衛府ひょうえふ検非違使庁けびいしちょう主典さかん

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精選版 日本国語大辞典 「志」の意味・読み・例文・類語

こころ‐ざし【志】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「こころざす(志)」の連用形の名詞化 )
  2. 心中で、こうしよう、ああしようと思う心の働き。心が、ある方向をめざすこと。
    1. (イ) ある方向に向いている心の働き。しようと思う気持。意向
      1. [初出の実例]「大臣の君の、尋ね奉らむの御心ざし深かめるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
    2. (ロ) 高潔で、むやみに変わることのない気持。高尚な精神。志操。
      1. [初出の実例]「武芸(たけきわさ)(ひと)に過(す)ぎたまへり。而して、志尚(みココロサシ)沈毅(をこ)し」(出典:日本書紀(720)綏靖即位前(北野本南北朝期訓))
    3. (ハ) 目的をはっきりとさだめ、その実現のために努力しようとする気持。
      1. [初出の実例]「仏法を伝へむ志深くして」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)
    4. (ニ) 失敗などをしないように注意を集中させること。また、気を配る心。
      1. [初出の実例]「心ざしはいたしけれど、さるいやしきわざもならはざりければ、うへのきぬの肩を張り破(や)りてけり」(出典:伊勢物語(10C前)四一)
    5. (ホ) 信心や、芸道をめざす気持のあついこと。信仰・修行の方面でつとめはげむこと。
      1. [初出の実例]「恩をいただけること山よりも重く、志を懐ける事海よりも深き宮人也」(出典:観智院本三宝絵(984)序)
  3. 相手に好意を寄せる心の働き。
    1. (イ) 相手に寄せる好意。相手のためになるような計らい。厚意。親切。配慮。
      1. [初出の実例]「医師(くすし)ふりはへて屠蘇(とうそ)、白散、酒くはへて持て来たり。こころざしあるに似たり」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二九日)
    2. (ロ) ある特定の人に対して抱く恋情。愛人をしたう気持。恋愛の情。思慕の気持。
      1. [初出の実例]「世のかしこき人なりとも、深き心ざしを知らではあひがたしとなん思ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. (ハ) 親子兄弟など肉親の間の情愛。親子の情。
      1. [初出の実例]「子を思ひける親の心ざし已にねむごろなりき。親をみちびく子の心ざし、今日争かおろそかならむ」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
    4. (ニ) 先方の厚意を感謝する気持。お礼の気持。
      1. [初出の実例]「ありがたき御はぐくみを思し知りながら、何事につけてかは、深き御心ざしをもあらはし、御覧ぜさせ給はむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    5. (ホ) 死んだ人を悲しみ悼む気持。
      1. [初出の実例]「万里小路大納言などは、とりわき御心ざし深くて、御だ火の果つるまで、墨染めの袖を顔におし当てつつさぶらひ給ふ」(出典:増鏡(1368‐76頃)一一)
  4. 性質。人柄を表わすような心の働き。
    1. [初出の実例]「壮(おとこさかり)に及りて、倜儻(すく)れ大(おほ)いなる度(みココロサシ)います」(出典:日本書紀(720)垂仁即位前(北野本室町時代訓))
  5. 死者への追善供養。冥福を祈るための仏事。
    1. [初出の実例]「国王、未来の因果を悲みて多くの心ざしを尽くして、かの苦をまぬかれ給ひけるとかや」(出典:曾我物語(南北朝頃)二)
  6. 気持を表わすための金品。
    1. (イ) 謝意や好意を表わすために贈ったり奉納したりする金品。お礼の品。
      1. [初出の実例]「いとはつらく見ゆれど、こころざしはせんとす」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
    2. (ロ) 故人の追善供養のための金品。喜捨。布施(ふせ)
      1. [初出の実例]「夜もあけて、別れさまに、旅の道心者の、こころざし請度(うけたき)といふ」(出典:浮世草子好色一代男(1682)五)

し【志】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 事件を記した書。記録。
  3. 紀伝体の歴史書の中で、本紀、列伝とは別に天文、地理、礼楽、政刑などを記述した部分。
    1. [初出の実例]「文以詔奏論説要、記序志伝次之」(出典:童子問(1707)下)
  4. 令制で、兵衛府衛門府の主典(さかん)
    1. [初出の実例]「大志二人、少志二人」(出典:令義解(718)職員)
  5. こころざし。こころざしや誠意のあること。
    1. [初出の実例]「是皆希有難想の思ひを凝し、随喜渇仰の志(シ)を尽し給ふ作法なり」(出典:屋代本平家(13C前)抜書)
  6. イギリスの旧貨幣単位シリングを表わす当て字

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普及版 字通 「志」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音]
[字訓] こころざし・しるす

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
字の初形は之(し)に従い、之声。士はその楷書化した形。〔説文〕十下に「なり」と訓する。大徐新修十九文の一として徐が加えたもの。次条に「は志なり」とあるので、互訓したものである。〔詩序〕に「詩は志の之(ゆ)くなり。心に在るを志と爲し、言に發するを詩と爲す」とあり、それで志を「心の之(ゆく)する」意の会意とする説もあり、〔段注〕にも之の亦声とする。古くは誌・識の意に用い、むしろ心にある意こそが初義であろう。之はもと止と同形であった。

[訓義]
1. 心にあるもの、本心。
2. しるす、心にしるす、おぼえる、かきとめる。
3. こころざし、のぞみ、ねがい、めざす。
4. しるしのもの、はた。
5. 記録する、記録。
6. 識・誌と通じ、しるす。

[古辞書の訓]
名義抄〕志 ココロザシ・ツクル・オモフ・ココロ・ネガフ・イタハル 〔字鏡集〕志 ツノル・コフ・イタハル

[声系]
〔説文新附〕三上に志声として誌を加え、「記誌なり」という。また〔説文〕三上(識)には「常なり」と訓する。誌・は通用の字。同系の字で、は旗じるし、をまた常という。(しよく)に赤色の意がある。〔漢石経〕にはを志に作る。

[語系]
志・tjiは同声。止・阯tjiも同声であるから、両者の間に通ずるものがあると考えられる。

[熟語]
志意・志介・志怪・志・志格・志学・志願・志気・志義・志局・志計・志向・志行志士志識・志趣・志尚・志乗・志性・志節・志操志度・志道・志念・志望・志略・志慮
[下接語]
異志・意志・遺志志・詠志・鋭志・遠志・嘉志・雅志・快志・求志・強志・決志・言志・広志・抗志・厚志・高志・降志・弱志・夙志・宿志・述志・初志・序志・尚志・心志・遂志・寸志・積志・善志・素志・壮志・喪志・志・他志・大志・達志・地志・致志・通志・志・志・闘志・同志・篤志・薄志・微志・服志・奮志・方志・芳志・報志・民志・明志・猛志・喩志・有志・雄志・憂志・輿志・養志・立志・励志・惑志

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