北海道南部、石狩(いしかり)平野南部に位置する札幌市の近郊都市。1970年(昭和45)市制施行。島松川と漁(いざり)川を挟んで東西に長い。JR千歳(ちとせ)線、国道36号、453号が通じ、道央自動車道恵庭インターチェンジがある。明治初期に室蘭(むろらん)街道沿いの駅逓(えきてい)として集落ができたが、台地部は支笏(しこつ)泥流の基盤に数回にわたる恵庭岳降下火山灰の堆積(たいせき)で地味がやせ、平野部は厚い泥炭層で開発困難なため、農業は酪農を主体とする粗放的なもので、むしろ背後の森林資源を生かした林産の町であった。第二次世界大戦後は市内2か所に自衛隊基地ができ、台地はその演習地にあてられ、千歳市とともに北海道一の防衛地区ができた。一方、札幌市に近いため、その発展とともに衛星都市化し、国道沿いを中心に食品、機械の工場が進出し、また札幌市への通勤者向けの住宅団地の造成も行われてきた。さらに、石狩湾新港(石狩市)から札幌市を経て苫小牧(とまこまい)市方面に至る道央ベルト地帯の中央にあり、新千歳空港(千歳市)にも近いことから、臨空型工業団地「恵庭テクノパーク」(1988年第1期分譲開始)など五つの工業団地ができ、多数の工場が立地している。元来酪農主体の農業も、札幌への生乳供給圏としてその重要性を増し、近郊農業的園芸もみられるようになった。市域内の島松は、明治中期中山久蔵(きゅうぞう)が道央で初めて水稲試作に成功した所であり、スズラン自生地としても有名である。面積294.65平方キロメートル(一部境界未定)、人口7万0331(2020)。
[奈良部理]
北海道南西部,石狩平野の南部に位置する市。1970年市制。人口6万9384(2010)。千歳市の北隣に位置し,JR千歳線,道央自動車道が通じる。市域東部には水田地帯が広がり,西部は支笏(しこつ)火山とその山麓で,国有林と,1952年以来駐屯している自衛隊の島松演習地になっている。近年札幌のベッドタウン化が進み中心市街地の発展は著しい。その北方の島松は道央の稲作発祥地で,1880年ごろ篤農家中山久蔵が耐冷性品種赤毛の試作に成功し種もみを普及して北海道稲作の基礎をつくった。国道36号線沿いに企業が進出し,食品・機械の諸工場が立地し,恵庭,戸磯恵南,島松に工業団地が設けられたほか,戸磯には地場産業のための軽工業団地がある。道央自動車道のインターチェンジがある。農業は稲作と酪農を主とし,野菜生産も多く,カボチャが特産品。西部の盤尻に用水確保と洪水調節のための漁川(いざりがわ)ダムが1980年完成した。
執筆者:岡本 次郎
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