悔しい(読み)クヤシイ

デジタル大辞泉 「悔しい」の意味・読み・例文・類語

くやし・い【悔しい/口惜しい】

[形][文]くや・し[シク]
物事が思うとおりにならなかったり、はずかしめを受けたりして、あきらめがつかず、腹立たしい気持ちだ。残念でたまらない。「負けて―・い思いをする」「―・かったら見返してやれ」
後悔される。くやまれる。
「わが心しぞいをこにして今ぞ―・しき」〈・中・歌謡
[補説]本来は、「くやし」は「悔いる」に対する形容詞自分行為について後悔する気持ちを表し、1の意については「くちおし」を使ったが、のちにこの使い分けはなくなった。
[派生]くやしがる[動ラ五]くやしげ[形動]くやしさ[名]
[類語](1口惜くちおしいうらめしい腹立たしい残念無念心外しんがいしゃく悔しがる歯軋り歯噛み切歯扼腕悔し泣き悔し涙唇を噛む臍をかむ地団駄を踏む

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「悔しい」の意味・読み・例文・類語

くやし・い【悔・口惜】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]くや〘 形容詞シク活用 〙 ( 「悔いる(悔ゆ)」の形容詞化 )
  2. 自分の行為について後悔する心情にいう。取り返しがつかないことで残念だ。
    1. [初出の実例]「わが心しぞ いや愚(をこ)にして 今ぞ久夜斯岐(クヤシキ)」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. 「おろかに過ぎにし方さへくやしうおぼさるるもあながちなり」(出典:和泉式部日記(11C前))
  3. 勝負に負けたり、相手にはずかしめられたり、外部の状況が期待に反したりして、後悔したり腹立たしく思ったりする気持にいう。しゃくだ。いまいましい。
    1. [初出の実例]「よし川のながれ名にたつおほぬさはひくてになびく心くやしき」(出典:評判記・剥野老(1662)吉川六彌)
    2. 「ヱヱ悔ししや憎らしし腹立ししと言ながら」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)二)

悔しいの語誌

( 1 )本来はのように過去の自己の行為を悔やむ意で和歌にも多く用いられた。
( 2 )中古から広く用いられるようになった類義語クチヲシは、周囲に期待を裏切られた時に起こる失望感を表わした点においてこれと異なっていたが、やがてクヤシにも同様の意のが生じ、両語の使い分けは、近世以降、見られなくなる。
( 3 )同じく類義語と考えられるネタシは、相手が自分より優位にあることをうらやましく思う意味重点があり、自省的な意味をもつクヤシとは、異なっている。

悔しいの派生語

くやし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

悔しいの派生語

くやし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

悔しいの派生語

くやし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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