口惜しい(読み)クチオシイ

デジタル大辞泉 「口惜しい」の意味・読み・例文・類語

くち‐おし・い〔‐をしい〕【口惜しい】

[形][文]くちを・し[シク]
思うようにいかなかったり大切なものを失ったりして残念に思うさま。また、いまいましく思うさま。くやしい。「こんな結果になるなんて―・いことだ」
対象期待外れで満足できないさま。つまらない。取り柄がない。
「人のありさまの、とりどりに―・しくはあらぬを」〈・若菜下〉
身分などが低くて言うに足りない。取るに足らない。
「いと―・しききは田舎人こそ」〈・明石〉
[類語]悔しい残念うらめしい腹立たしい無念心外しんがいしゃく惜しいもったいないあたら残り惜しい名残惜しい残り多い惜しむ心残り物惜しみ未練愛惜痛惜去り難い後ろ髪未練がましい後を引くしつこい執念深いねちっこいねついねちねち悪あがきうじうじうだうだいじいじぐじぐじもじもじ因循断腸の思い負け惜しみこだわる尾を引く執拗恋恋れんれん惜しげ思い残すたゆたう思い迷う忍びない

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精選版 日本国語大辞典 「口惜しい」の意味・読み・例文・類語

くち‐おし・い‥をしい【口惜】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]くちを〘 形容詞シク活用 〙
  2. [ 一 ] 思う事ができなかったり、思うようにいかなかったり、または、大切なものを失ったりして、失望、落胆した気持を表わす。がっかりだ。残念だ。いまいましい。
    1. [初出の実例]「許さぬ迎へまうで来て、とりゐてまかりぬれば、口おしく悲しき事」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「くちをしきもの〈略〉呼びにやりたる人の来ぬ、いとくちをし」(出典:枕草子(10C終)九八)
    3. 「それに疾うにする筈の、殉死をせずにゐた人間として極印を打たれたのは、かへすがへすも口惜(クチヲ)しい」(出典阿部一族(1913)〈森鴎外〉)
  3. [ 二 ] 対象が、期待はずれ、不十分で、満足できないさまである。
    1. つまらない。くだらない。取柄がない。情けない。遺憾だ。
      1. [初出の実例]「人の有様の、とりどりにくちおしくはあらぬを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
      2. 「時にあひ、したり顔なるも、みづからはいみじと思ふらめど、いとくちをし」(出典:徒然草(1331頃)一)
    2. 官位・身分が低くて言うに足りない。
      1. [初出の実例]「かくゆゆしきさまを、見そめ給つらむ人の、なにとかおぼすべき。くちおしき品に思ひ朽し給ふとも」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「男は、くちおしき際の人だに、心を高うこそ、つかふなれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)

口惜しいの語誌

( 1 )八代集には見えないが、平安時代の仮名文学以降見られる語。近世になると、類義語「くやし」と意味が接近し、やがて、「くやし(い)」の方が広く用いられるようになった。
( 2 )語源は、「朽ち」ることを「惜し」むとする説があるが、中世以降「口惜」をあてる例が多い。→「くやしい(悔)」の語誌。

口惜しいの派生語

くちおし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

口惜しいの派生語

くちおし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

口惜しいの派生語

くちおし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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