(読み)シャク

デジタル大辞泉の解説

しゃく【×癪】

[名]胸や腹が急に痙攣(けいれん)を起こして痛むこと。さしこみ。
[名・形動]腹が立つこと。不愉快で、腹立たしいこと。また、そのさま。「いちいちなことを言う」
[補説]「癪」は国字

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世界大百科事典 第2版の解説

しゃく【癪】

近代以前の日本の病名で,当時の医学水準でははっきり診別できないまま,疼痛のともなう内科疾患が,一つの症候群のように一括されて呼ばれていた俗称の一つ。単に〈積(せき)〉とも,〈積聚(しやくじゆ)〉ともいわれ,また疝気と結んで〈疝癪〉ともいわれた。平安時代の《医心方》では,陰陽の気が内臓の一部に集積して腫塊をなし,種々の症状を発すると説かれ,内臓に気が積んで腫瘤のようなものができて発症すると考えられ,癪には日本人に多い胃癌(がん)などもあったと思われる。

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大辞林 第三版の解説

しゃく【癪】

( 名 )
胸や腹のあたりに起こる激痛の総称。さしこみ。 「 -が起こる」
( 名 ・形動 )
物事が気にいらなくて、気持ちがむしゃくしゃする・こと(さま)。 「運動会というのに-な雨だ」
[句項目] 癪に障る 癪を言う

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


しゃく

女性にみられる胸や腹のさし込むような激痛をいい、医学用語の仙痛に相当する俗称。[編集部]

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精選版 日本国語大辞典の解説

しゃく【癪】

〘名〙
① 胸部または腹部におこる一種のけいれん痛で、多く女性にみられる。医学的には胃けいれん、子宮けいれん、腸神経痛などが考えられる。仙気。仙痛。さし込み。しゃくつかえ。
※言経卿記‐文祿二年(1593)五月一二日「くりへ風藤之粉五服遣了。積之薬也」
滑稽本浮世床(1813‐23)二「あげ句の果は発(おこ)りもしねへ癪(シャク)と号して、三日ばかりふて寝をする」
② (形動) 気に入らなくて、腹が立つこと。また、そのさま。かんしゃく。いかり。→癪を言う
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「どくどくしく云なさるけれど癪(シャク)な事はいはねへはな」
[語誌](1)「癪」は国字。「しゃく」は「積」の呉音から。女性特有(まれに美男子や女形にも)の病で辛苦の積もりによって起こるものと解されていた。その心因性の要素が拡大して「癪が上る」「癪にさわる」「癪を言う」などの言い方が生まれた。
(2)類似の病に「癇(かん)」があるが、こちらは子供におこるものをいう。ともに、体内にいる虫がおこすと信じられていた。二つをあわせた「癇癪」は、もっぱら気に障って腹をたてることをいう。

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世界大百科事典内のの言及

【胃痙攣】より

…胃痙攣は,このような症状に対する呼名であって,疾患名ではない。古くいわれた〈癪(しやく)〉もこれに当たる。原因として,急性胃炎,消化性潰瘍,胆石症,膵炎等々多くの疾患が挙げられる。…

【癌】より

…しかし今日環境癌あるいは職業癌と呼んでいる癌について,その発癌の経緯を正確につきとめたのは,ロンドンのセント・バーソロミュー病院の外科医P.ポットであった。 日本では,江戸時代に癪(しやく)・積聚と呼ばれた内科疾患に,胃癌のような悪性腫瘍が含まれていたと思われる。膈噎(かくいつ)といわれた食道狭窄症には食道癌もあったし,舌疽(ぜつそ)といわれたものはほとんどが舌癌であったと思われるが,江戸時代にもはっきり認識されていたのは,華岡青洲の麻酔手術で名高い乳癌であった。…

【心臓】より

…その後の医書にも心臓病にふれている個所があるが,正確な診断はできなかった。江戸時代には胸部の疼痛を伴う病気を(しやく)と総称していたが,この中には心筋梗塞や狭心症も含まれていたと思われる。 ヨーロッパの近代医学で心臓と大動脈の病気についての知識が進歩したのは18世紀以後のことで,フランスのビユサンスRaymond Vieussens(1641‐1716)は大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁狭窄症,心囊水腫などについて,イタリアのランチシGiovanni Maria Lancisi(1654‐1720)は動脈瘤について,イギリスのヘバーデンWilliam Heberden(1710‐1801)は狭心症について病理解剖および臨床医学的に記述した。…

【胆石】より

…胆道系(胆囊,肝内および肝外胆管)において,胆汁成分から生じた固形物質を胆石という。ただし,微小で無構造の砂状物質は胆砂と称し区別している。胆石の存在する部位により,胆囊胆石,胆管(肝外胆管)胆石,肝内(肝内胆管)胆石に分類される。そのうち,胆囊胆石が最も頻度が高く,胆石症cholelithiasisという名称は,一般に胆囊胆石症のことを指す。
[胆石の頻度]
 胆囊胆石の保有率は年齢とともに高くなり,女性に多い。…

※「癪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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