昭和新山(読み)しょうわしんざん

精選版 日本国語大辞典 「昭和新山」の意味・読み・例文・類語

しょうわ‐しんざん セウワ‥【昭和新山】

北海道南西部、洞爺(とうや)湖の南岸、有珠(うす)山の東麓にある石英安山岩鐘状火山。昭和一八年(一九四三)から同二〇年にかけて地震、爆発を繰り返しながら円形の台地が隆起してできた。標高四〇二メートル。特別天然記念物

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デジタル大辞泉 「昭和新山」の意味・読み・例文・類語

しょうわ‐しんざん〔セウワ‐〕【昭和新山】

北海道南西部、洞爺湖とうやこ南岸の有珠うす東麓に、昭和18~20年(1943~1945)の活動で生じた小火山。畑地が隆起した屋根山溶岩円頂丘からなる。標高398メートル。

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日本歴史地名大系 「昭和新山」の解説

昭和新山
しようわしんざん

洞爺とうや湖南岸にそびえる有珠うす山の東麓、字昭和新山にある溶岩円頂丘で、有珠山寄生火山。国指定特別天然記念物。標高四〇六・九メートル。昭和一八年(一九四三)一二月二八日、有珠山北麓一帯で火山性地震が始まり、しだいに東麓の壮瞥村フカバ地区に地震が移った。翌一九年六月初めまでに二五〇回ほどの地震が発生したのち、同月二七日に低平な畑地に噴煙が上がりしだいに隆起、同年一一月には隆起した台地状(屋根山)のほぼ中央に溶岩がせり出し、翌二〇年九月までの短期に三角状の溶岩尖塔(ベロニーテ)が出現した(壮瞥町史)

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改訂新版 世界大百科事典 「昭和新山」の意味・わかりやすい解説

昭和新山 (しょうわしんざん)

北海道南部,洞爺(とうや)湖の南岸にある有珠(うす)山側火山。標高398m。胆振(いぶり)支庁有珠郡壮瞥(そうべつ)町に属する。1943年12月以降1年余の火山活動によって生成された。新溶岩はデイサイトで粘性が極めて高く,地下からの貫入によって土地を隆起させ屋根山と呼ばれるドーム状の新しい山体をつくったのち,溶岩円頂丘を地表に突出させたものである。43年12月28日以降有珠山一帯を襲った連続的地震が活動の先駆で,翌44年1月に入ると震源は東麓に集中し,東麓部の地盤隆起と地裂発生が観察され,とくに東麓斜面標高120~150mの字九万坪の畑地が地盤隆起の中心となり,6月23日この地に最初の水蒸気爆発が起こった。7月から10月にかけて十数回の大爆発を繰り返して,梅鉢状に7火口が形成されたが,同時に地盤隆起は継続し,標高250mをこえる屋根山を形成した。11月中旬火口群中央部から溶岩円頂丘が出現し,これは410mをこえる高度に達し,45年7月には活動はほぼ終息した。

 この新火山は田中館秀三によって昭和新山と名付けられた。第2次世界大戦末期という情勢のため,この火山の生成は公表されなかったが,地元の郵便局長三松正夫により克明に記録され,それは〈三松ダイヤグラム〉と呼ばれている。溶岩円頂丘はその後山頂部が崩落して高度をやや減じたが,比高約100m,底径約350mある。この円頂丘を生成したマグマは揮発分を失うと急速に固化する性質をもつもので,有珠山火口内の大有珠・小有珠も同様の岩質からなっている。溶岩円頂丘の上昇中,溶岩表部に接した粘土層は厚い天然煉瓦となり,その表面には擦痕が見られ,円頂丘上にはかつて有珠外輪山溶岩の下部にあった河床円礫(えんれき)が多数存在することが注目される。屋根山は底径東西1000m,南北800mで,有珠外輪山溶岩と火山基底の岩類などが破壊されて円礫層などとともに押し上げられている。円頂丘の南西縁には噴気孔があり,この近くまでバスが通じ,大有珠付近の外輪山頂との間はロープウェーで結ばれている。溶岩円頂丘は特別天然記念物に指定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「昭和新山」の意味・わかりやすい解説

昭和新山
しょうわしんざん

北海道南西部、洞爺湖(とうやこ)南岸にある火山。有珠(うす)火山の東麓(とうろく)に昭和時代に新生した寄生火山。石英安山岩質である。胆振(いぶり)総合振興局管内の壮瞥町(そうべつちょう)にあり、支笏(しこつ)洞爺国立公園内で、特別天然記念物に指定されている。有珠山の北側山腹に「明治新山」を生じた1910年(明治43)の噴火から33年間の休止期ののちに、1943年(昭和18)12月末から付近で有感地震が続発し、翌1944年1月から人家に近い平らな麦畑が隆起し始め、「屋根山」と名づけられた丘を生じた。6月末~10月末にはそこで爆発を繰り返し、11月中旬、屋根山中央部にごく粘り強い新溶岩が押し出し始めた。一連の活動は1945年9月に停止したが、標高150メートルだった畑が170メートルも隆起し、その上に突き出た溶岩円頂丘とあわせて、標高398メートルの新山になった。噴気活動はいまも続いている。新火山の生成過程を壮瞥郵便局長であった三松正夫(みまつまさお)(1888―1977)が克明に記録、「三松ダイヤグラム」を作成し、その様相を明らかにしたことは世界的に有名である。付近に火山博物館、植物園などもあり、観光客が多い。なお、玄武岩~安山岩の成層火山である有珠山の頂部にある大有珠、小有珠も石英安山岩の溶岩円頂丘で、有珠火山の噴火の特徴が認められる。

[諏訪 彰]

『三松正夫著『昭和新山――その誕生と観察の記録』(1970・講談社)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「昭和新山」の意味・わかりやすい解説

昭和新山
しょうわしんざん

北海道南西部,洞爺湖の南岸,有珠山の東麓にある火山。標高 398m。壮瞥町に属する。有珠山の寄生火山(側火山)で,1943年から 1945年にかけて地震を伴いながら噴火を繰り返し,人家に近い平坦な麦畑が約 300mも隆起,その上にさらに約 100mもの岩尖が突き出た(→火山岩尖)。その形成過程は当時壮瞥郵便局長でのちに山の所有者となった三松正夫によって記録され,貴重な学問的資料となった。山が形成されるまでの完全な記録と,活動様式の珍しさとでその名は世界の専門家に知られ,噴気活動は今日も続いている。支笏洞爺国立公園内の特別保護地区,および国の特別天然記念物に指定されている。

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百科事典マイペディア 「昭和新山」の意味・わかりやすい解説

昭和新山【しょうわしんざん】

北海道洞爺(とうや)湖南岸の火山(特別天然記念物)。標高398m。1943年12月から1945年9月にかけて,溶岩に押し上げられた土地が地震を伴って隆起,その上に噴火により安山岩の溶岩円頂丘が形成された。現在も赤褐色の岩肌(はだ)からガスを噴出。支笏(しこつ)洞爺国立公園に属する。
→関連項目有珠山壮瞥[町]

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世界大百科事典(旧版)内の昭和新山の言及

【有珠山】より

…二重式火山で山頂部に直径1.8km,標高約500mの外輪山をもち,火口原に小有珠,大有珠(741m)の溶岩円頂丘およびオガリ山,有珠新山(653m)の潜在円頂丘のほか銀沼とよばれる小沼がある。また,北麓にはコンピラ山,西丸山,明治新山,東丸山などの潜在円頂丘があり,東麓には昭和新山の溶岩円頂丘がある。有珠山は完新世のはじめ,玄武岩・輝石安山岩の溶岩・火山砕屑物を噴出して成層火山を形成したのち,山頂部が爆発で崩壊して外輪山を生じ,多量の崩壊物が岩屑なだれとなって南麓を覆い,一部は内浦湾(噴火湾)に達した。…

※「昭和新山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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