鎌倉時代よりみえる地名で、
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
千葉県南西部、小櫃川(おびつがわ)下流にあり東京湾に面する市。1942年(昭和17)木更津町と巌根(いわね)村、清川村、波岡(なみおか)村が合併して市制施行。1954年(昭和29)鎌足(かまたり)村、1955年金田村、中郷(なかごう)村、1971年富来田(ふくた)町を編入。日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征に際して亡き妃弟橘媛(おとたちばなひめ)を恋う「君さらず袖(そで)しからみに立浪のその面影を見るぞ悲しき」の歌に地名の起源があると伝える。市の東部、南部は下総(しもうさ)台地の末端で、北部に小櫃川が流れて平野をなし、河口の東京湾には弧状三角州が大きく張り出していて、その部分のみが湾岸埋立地から取り残されている。JR内房(うちぼう)線、館山(たてやま)自動車道、国道16号・127号が走り、房総丘陵方面へはJR久留里線(くるりせん)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、国道409号・410号が通じる。また神奈川県川崎市との間は圏央道から続く東京湾横断道路(アクアライン)で結ばれる(1997年開通)。東京湾横断道路の開通に伴い、川崎との間に就航していた東京湾横断フェリーボートは廃止された。木更津港は周辺地域の工業化に伴い1968年重要港湾に指定された。
多くの貝塚や祇園大塚山古墳(ぎおんおおつかやまこふん)、金鈴塚古墳(きんれいづかこふん)などが発見されて、金鈴、大刀(たち)、馬具などの副葬品が出土し、また馬来田国造(まくたくにのみやつこ)が置かれたこととあわせて、開発の古さが知られる。1456年(康正2)武田信長が上総(かずさ)守護となって真里谷城(まりやつじょう)を築き、里見氏も勢力を伸ばしたが、江戸時代には幕府の直轄地となった。大坂冬の陣に際し木更津の船頭24名が活躍したので、幕府は上総・安房(あわ)の物資の江戸への独占的輸送権を与え、江戸橋筋にも船付場を設けて木更津船の往来を盛んにした。1912年(大正1)鉄道が開通すると、遠浅のために大型船の接岸ができなかった港は衰えた。1936年(昭和11)海軍航空隊が置かれ、同時に築港が完成してふたたび活気を取り戻した。第二次世界大戦後は陸上自衛隊が駐屯し、南部の埋立地に君津市にまたがって新日本製鉄(現、日本製鉄)などの工場が進出した。住宅地開発も活発である。南部の君津市にまたがる丘陵地に、千葉県の新産業三角構想の一つで先端技術産業の研究開発拠点「かずさアカデミアパーク」が1987年造成開始された。小櫃川流域は米と野菜や畜産中心の農業地域をなし、海岸の干潟ではノリ養殖が盛んであるとともに、潮干狩り場として有名。太田山公園の「きみさらずタワー」からは木更津市内から東京湾横浜まで眺望できる。金鈴塚古墳出土品(国指定重要文化財)、上総井戸掘り用具(国指定重要有形民俗文化財)やノリ生産用具を展示した木更津市郷土博物館「金のすず」があり、市内に「切られ与三郎」の墓(光明寺)もある。また八剣(やつるぎ)八幡神社の夏祭に奉納される県指定無形民俗文化財の「木更津ばやし」や出羽(でわ)三山信仰に起源をもつ梵天(ぼんてん)立て、證誠寺(しょうじょうじ)の「狸(たぬき)まつり」など年中行事も多彩である。面積138.95平方キロメートル、人口13万6166(2020)。
[山村順次]
『『木更津郷土誌』(1952・木更津市)』▽『『木更津市史』(1972・木更津市)』
千葉県中部,東京湾に面する市。1942年市制。人口12万9312(2010)。市の北部を流れる小櫃川の三角州に弥生~古墳時代の菅生遺跡や金鈴が出土した金鈴塚古墳,大塚古墳などがあり,古代から対岸武蔵国に渡る船着場であった。中世は鎌倉街道の基点で,近世には木更津船が江戸幕府から江戸と安房,上総の渡船営業権を与えられ,江戸船町(現,中央区日本橋)に木更津河岸を公認されていた。その起りは大坂冬の陣で木更津の水夫が徳川方に協力したための論功行賞という。江戸市民の信仰を集めた鹿野山の登山口であり,切られ与三で有名な歌舞伎《与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)》の舞台ともなった。1871年(明治4)安房,上総を管轄する木更津県の県庁が旧桜井藩主邸を改造して置かれ,73年木更津県が千葉県となるまで続いた。1936年に海軍航空隊と海軍航空厰が設置され,現在も自衛隊の基地がある。京葉臨海工業地域の貿易港として発展,館山自動車道も通じて人口が増加している。JR内房線と久留里線の分岐点をなす。木更津駅前には多くの大型店が進出して港湾中心の旧中心商店街を圧している。市内の光明寺には切られ与三の墓があり,狸ばやしの伝説が残る証誠(しようじよう)寺もある。1997年12月に川崎との間に自動車専用の東京湾横断道路(東京湾アクアライン,全長15.1km)が開通した。館山自動車道が南北に横切る。
執筆者:菊地 利夫
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