徳島県南部,那賀郡木頭村,木沢村,上那賀町の3ヵ町村(3町とも現在は那賀町)にわたる地域名。那賀川上流域を占め,いわゆる木頭林業地帯をなす。この地方は古くから杉の美林で知られ,近世には藩有林であったが,明治初期に民有林となり,明治中期から造林が本格的に進められた。現在は5万haの森林で杉の人工造林が進められ,人工林は全面積の2/3を占めている。この流域は剣山の南斜面に当たり,年降水量3000mm,平均気温14℃で杉の生育に適している。木頭杉は目は粗いが色つやが良く,板材,造作材,柱材などに利用されている。1908年桜谷発電所ダムの建設でいかだ流しができなくなり,流筏労働者に対する補償問題がおこり,労働運動に発展したが,1950年那賀川の総合開発の一環として,長安口ダムが56年完成したためいかだ流しは完全に不可能となり,運動は消滅した。国道195号線の整備とともに,運材はトラック輸送に変わり,林産資源の開発が促進された。
執筆者:高木 秀樹
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