(読み)ちから(英語表記)force

翻訳|force

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


ちから
force

物体の運動状態を変化させる作用で,物体に加速度を与える。質量 m の物体に働く力 f と加速度 a との関係を表すのがニュートンの運動方程式 maf であって,この方程式によって物体の運動が決定される。力の単位は SIではニュートン,CGS単位系ではダインであり,重力単位系ではキログラム重である。力はベクトル量で,複数の力のベクトル和を合力といい,合力がゼロとなる複数の力は釣合っているという。複数の力が作用するとき,質点が釣合って静止しているためには合力がゼロであればよいが,大きさをもつ物体が釣合うためには合力だけでなくて力のモーメント (トルク) のベクトル和もゼロでなければならない。これらがゼロでないときには,物体の重心の運動は合力によって,またある点のまわりの物体の回転運動はその点に関する力のモーメントのベクトル和によって決定される。ニュートン力学では,慣性系で現れる力を真の力といい,非慣性系で観測されるこれ以外の力のようなもの (質量と加速度との積で力とは考えない) を見かけの力または慣性力という。遠心力などは見かけの力である。力には手で押したり引いたりする力,ばねの力,摩擦力などのように直観的に知覚できるものもあるが,最も基本的な力は質点の間の万有引力,荷電体の間のクーロン力,陽子や中性子の間に働いて原子核を形成させる核力の3つであって,これらの力から地球の重力,荷電体に働く電磁気力,原子や分子の間に働く化学結合力や分子間力などが導き出される。

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デジタル大辞泉の解説

ちから【力】

人や動物にもともと備わっている、自ら動き、または他の物を動かす働き。体力。「筋肉の」「あらん限りのを出して戦う」
物事をするときに助けとなるもの。助力。「先輩を杖ともとも頼む」「金ので政界に進出する」
ききめ。効果。効力。「彼の発言には大いにがある」「薬のでせきが止まる」
学問・技芸などの能力。力量。実力。「国語のが不足だ」「まだ翻訳のが足りない」「のある選手」
影響力。権力。「親ので就職する」「の政治」
腕力。暴力。「で事を解決する」「に訴える」
気力。迫力。「のある文章」「なげに答える」「が抜ける」
努力。骨折り。「を尽くして平和に貢献する」「医師ので全治した」「を惜しむ」
資力。財力。「娘を大学にやるがない」
10 物体の静止あるいは運動している状態に変化を起こさせたり、物体に変形を生じさせたりする作用。大きさはベクトル量で表され、単位はニュートン。力の働きかたの違いによって、弾性力摩擦力などに区別される。重力電気力磁気力などは場の力とよばれ、原子核の内部の粒子が及ぼし合う核力も場の力の一つ。
[下接語](ぢから)腕力糞(くそ)力小力底力手(た)力馬鹿(ばか)力・痩(や)せ力・藪(やぶ)力

りき【力】

体力。腕力。また、精力。ちから。「がある」「栄養のある物を食べてをつける」
人数を表す語の下に付けて、それほどの力がある意を表す。「十人

りき【力】[漢字項目]

りょく

りょく【力】[漢字項目]

[音]リョク(漢) リキ(呉) [訓]ちから
学習漢字]1年
〈リョク〉
肉体的、精神的なちから。「握力学力気力脚力筋力視力実力精力体力胆力知力独力能力微力腕力
その物に備わる働きや勢い。「圧力引力火力強力(きょうりょく)権力効力国力資力磁力重力出力水力勢力総力速力弾力張力電力動力入力浮力武力風力有力
力を尽くす。つとめる。「助力努力
〈リキ〉
肉体的、精神的なちから。「力士力量怪力眼力強力(ごうりき)自力地力念力非力
物の働きや勢い。「力学馬力
つとめる。「力行力作力説力戦力走
〈ちから(ぢから)〉「小力底力馬鹿力(ばかぢから)
[名のり]いさお・いさむ・お・か・ちか・つとむ・よし
[難読]苦力(クーリー)角力(すもう)

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世界大百科事典 第2版の解説

ちから【力】

一般に,自己,他者,他物に対して作用を及ぼす可能性の総称。作用者と被作用者とがともに個人もしくは社会であり,その作用が人間的価値をめぐる意志的な性格をもち,しかも制度を伴って発揮される場合は〈権力〉と呼ばれる。その不当性が強調されるとき〈暴力〉ともなる。〈能力〉〈学力〉〈戦力〉あるいは〈魔力〉や〈神通力(じんづうりき)〉なども力の一種であるが,最も抽象的に理論化されているのは,自然学領域における力の概念であろう。

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大辞林 第三版の解説

ちから【力】

人や動物の体内に備わっていて、自ら動いたりほかの物を動かしたりする作用のもととなるもの。具体的には、筋肉の収縮によって現れる。 「拳こぶしに-を込める」 「 -を出す」 「子熊でも-は強い」
そのものに本来備わっていて、発揮されることが期待できる働き。また、その程度。効力。 「風の-を利用する」 「運命の不思議な-」 「この車のエンジンは-がある」 「薬の-で助かる」
ほかに働きかけて影響を与えるもの。
ほかの人を支配し、自分の思うとおりに動かすことのできる勢い。権力。勢力。 「君主の強大な-を物語る遺跡」 「大国間の-の均衡」
ほかの人が目的を達成しようとするのを助ける働き。骨折り。尽力。 「彼の-で八方まるく収まった」 「会の発展のために皆様のお-を拝借したい」
人の心を動かす力強い勢い。迫力。 「 -のある文体」
何かをしようとする時に役に立つもの。
行動のもとになる心身の勢い。気力・体力。精気。 「目的達成に向けて-をふるいおこす」 「さぞお-を落とされたことでしょう」
修得・取得した、物事をなしとげるのに役立つ働きをするもの。能力。 「国語の-が弱い」 「対戦相手の-を分析する」
支え。よりどころ。 「子供の成長を-にして生きる」 「不幸な子供たちの-になる」
〘物〙 物体を変形させたり、動いている物体の速度を変化させる原因となる作用。巨視的な力としては、物体表面に働く圧力や物体内部に生ずる応力などのほか、力の場を形成する重力と電磁気力がある。微視的には、原子核の核子間に働く核力と、原子核・電子間および電子相互間の電磁気力が基本的な力である。さらに、一般的には素粒子の相互作用のことを力とよぶこともある。 → 素粒子の相互作用

りき【力】

ちから。体力。 「 -をつける」 「 -がある」
能力。実力。
人数を表す語に付いて、その人数分のちからがある意を表す。 「十人-」

りき【力】

【力】
⇒ りょく〔力〕 [漢]

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


ちから

物質間の相互作用が、物質の速度あるいは運動量を変化させる場合、この相互作用を力という。微視的世界では、物質粒子は位置と運動量が同時に定まるような状態をとることはない。したがって、微視的世界では、ある位置における粒子の運動量の変化を考えることはできない。この意味で力は巨視的世界の物理量である。
 粒子と粒子との間の相互作用はさまざまな仕組みを通って現れる。たとえば、原子間には量子的効果に基づく原子間相互作用があり、原子核を構成する中性子、陽子などの核子の間には中間子を媒介する相互作用が現れる。これらの相互作用をそれぞれ「交換力」「核力」とよぶことがあるが、この場合の力の意味はあいまいであり、相互作用というほうが近い。
 力はもともと仕事の際の筋力感に発した用語であって、運動の法則が定式化される以前にはさまざまな意味に用いられた。現在でもエネルギーという意味で用いることもある。「原子力」はその一例である。[田中 一]

力の単位

力は
  (質量×長さ)/(時間×時間)
の次元をもち、MKS単位ではニュートン(N)、CGS単位ではダイン(dyne)を用いる。これは、それぞれ1キログラム(または1グラム)の質量の物体に加えたとき1m/sec2(または1cm/sec2)の加速度を与える力であって、1ニュートンは1ダインの10万倍である。1キログラムの物体に作用する重力を1キログラム重という。これはおよそ9.8ニュートンである。[田中 一]

力の合成と分解

向きが同じ二つの力が図Aのように1個の粒子に同時に作用する場合、粒子が得る加速度は、個々の力が作用したときに粒子が得る加速度の和である。力は大きさとその作用する方向をもつ物理量で、数学的にはベクトル量である。二つのベクトルの和は、図Bの(1)のように二つのベクトルを引き続いて描いて得られる三角形の新しい辺で与えられる。加速度はベクトル量であるが、もし前述の加速度の和をベクトルとしての和に置き換えれば、方向の異なる二つの力が同時に作用したときの粒子の得る加速度およびこの加速度を与える単一の力を求めることができる(図Bの(2))。このようにして力の三角形を作成して、二つの力を合成した合力を得ることができる。力の合成は、その見方をかえれば、図Cが示すように力の分解とみることもできる。また力の合成は、合成にあずかる個々の力が他の力に妨げられず独立に作用することを示すといってもよい。このことを力の独立性の原理とよぶことがある。剛体に力が作用したときの力の効果は、力の作用する点にも関係する。1点に固定された剛体の場合には、固定点からみた作用点の位置ベクトルrと力fとのベクトル積N(N=r×f)が剛体の角運動量の変化を与える。これを力のモーメントとよぶ(図D)。
 物体外から物体に働く力を外力といい、物体内部間に働く力を内力という。内力は物体全体の運動には関係しない。そのほか、力の種類や作用の仕方などによって、保存力、摩擦力、偶力、引力、斥力、遠心力、求(向)心力、慣性力などがある。[田中 一]

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世界大百科事典内のの言及

【エネルギー】より

…英語ではエナージーenergyという。
【エネルギー概念の発展】

[仕事と力学的エネルギー]
 エネルギーの概念が確立したのは19世紀後半であるが,これと深いかかわりをもつ仕事の概念の歴史はずっと古く,すでに紀元1世紀ごろ,アレクサンドリアのヘロンは,てこや滑車などの機械による仕事について,力に関する利得が速さまたは移動距離に関する損失で帳消しにされるということを述べている。これは現在仕事の原理と呼ばれるもので,詳しくいうと次のようになる。…

【輸送現象】より

…したがって,逆にいうと,輸送現象を起こすためには,なんらかの方法で熱平衡を破る必要がある。この熱平衡を破る原因になるものを一般的な力と称している。例えば,前述の豆電球に電流が流れる場合,電流を流す原因となるものは体系に外部から加わる電場である。…

【力動説】より

…機械論に対立する考え方。ダイナミズム(ディナミスム)ともいい,力本説とも訳される。事物の原理のうちに,質量と距離の関係としての運動には還元されえぬダイナミックな力の存在を認める哲学説を指す。…

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