化学式Ca(OH)2。消石灰slaked limeともいう。酸化カルシウムCaO(生石灰)に水を作用させると,強く発熱してこの物質に変化する。この変化を生石灰の消和slakingと呼ぶ。
CaO+H2O─→Ca(OH)2
白色の粉末で,比重2.24。水には比較的溶けにくいうえ,高温になるとさらに不溶になる。水100gへの溶解度は0.18g(0℃),0.13g(50℃),0.077g(100℃)。しかし溶けた部分は強いアルカリ性を示すので,最も安価なアルカリ源として工業上きわめて広く用いられる。この飽和水溶液を石灰水lime waterといい,また比較的少量の水と乳状に混合したものを石灰乳milk of limeと呼ぶ。水酸化カルシウムは容易に二酸化炭素と化合して水に不溶の炭酸カルシウムに変化するから,石灰水や石灰乳を空気中に放置しておくと炭酸カルシウムが沈殿してくる。
Ca(OH)2+CO2─→CaCO3+H2O
建築材料の漆喰(しつくい)やモルタルは,この反応を利用したもの。水酸化カルシウムはまた,さらし粉の製造,酸性土壌の中和剤,消毒剤等にも用いられる。
執筆者:曽根 興三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カルシウムの水酸化物。消石灰ともいう。酸化カルシウム(生石灰)に水または水蒸気を作用させると得られる(生石灰の消和)。急速に生成したものは白色粉末であるが、水中に放置すると六方晶系の板状晶に変わる。加熱すると580℃で水蒸気を出して分解し、酸化カルシウムに戻る。
Ca(OH)2→CaO+H2O
水にわずかしか溶けず、しかも温度が上昇すると溶解度はかえって減少する。水溶液は石灰水とよばれ、強いアルカリ性を示す。工業的には懸濁液の形で使われることが多く、これは石灰乳とよばれる。固体または溶液の状態で二酸化炭素を吸収し、水に不溶性の炭酸カルシウムに変わる。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
また、塩素を吸収して次亜塩素酸カルシウム(高度さらし粉の主成分)を生成する。
水酸化カルシウムは安価な強アルカリ物質なので、酸性廃棄物の処理剤、酸性土壌の中和剤、消毒剤などとして用いられる。化学工業ではさらし粉の原料となるほか、反応用アルカリとして広く利用され、建築分野でもモルタル、漆食(しっくい)の材料として重要である。
[鳥居泰男]
Ca(OH)2(74.09).消石灰ともいう.酸化カルシウムと水とを反応させるか,またはカルシウム塩の水溶液に水酸化アルカリを加えると得られる.無色の六方晶系結晶.密度2.24 g cm-3.580 ℃ で完全に分解し,水を失って酸化カルシウムとなる.水にはわずかに溶けて強い塩基性を示す.水100 g に対する溶解度は0.18 g(0 ℃),0.13 g(50 ℃),0.077 g(100 ℃).水溶液は石灰水とよばれる.アンモニウム塩水溶液に加えるとアンモニアを遊離し,酸に溶けてカルシウム塩をつくる.空気中では二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムを生じる.塩素を作用させるとさらし粉ができる.炭酸ナトリウムと反応して水酸化ナトリウムを生じる.安価な強塩基性物質として土壌の中和剤などに使用される.また,しっくい,モルタルの原料,防火塗料,さらし粉,パルプ,カルシウム塩の製造,皮なめし,有機合成,二酸化炭素の吸収剤,食品添加剤,凝固剤,消毒剤,医薬品,化粧品などに用いられる.[CAS 1305-62-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新