沸く(読み)ワク

デジタル大辞泉 「沸く」の意味・読み・例文・類語

わ・く【沸く】

[動カ五(四)]《「」と同語源》
水などが熱せられて沸騰する。また、適当な熱さになる。「湯が―・く」「風呂が―・く」
感情が高ぶる。熱狂して騒ぎたてる。「ファインプレー場内が―・く」「勝利に―・く」
発酵して泡を立てる。「ぬかみそが―・く」
水が激しくたぎり流れる。さかまく。
「川の―・きたる、滝の落ちたる」〈宇津保・祭の使〉
金属が熱せられて溶ける。
「(大仏ノ)御身は―・きあひて山の如し」〈平家・五〉
[類語]沸き立つ沸き上がる沸き返る煮えたぎる煮えくり返る煮え返る煮え立つ煮立つ沸騰たぎる沸かす煮沸蒸発揮発蒸留

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「沸く」の意味・読み・例文・類語

わ・く【沸・湧・涌】

  1. 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ( 沸 ) 熱気などの作用によって、中から激しく動く。
    1. 液体が熱せられて高温になり、泡立ち盛りあがる。沸騰する。また、ある適当な温度になる。
      1. [初出の実例]「鬼泣き神なげき、山なり海わきぬ」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
      2. 「ユガ vaqu(ワク)」(出典日葡辞書(1603‐04))
    2. 金属が熱せられて融ける。
      1. [初出の実例]「狗、門の両廂に在り。口に融(ワク)銅を咋めり」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    3. 怒りの気持が起こる。立腹する。
      1. [初出の実例]「わく、根本わき桜といふ下略也。腹をたつる㒵(かたち)なり」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
    4. 熱狂して騒ぎ立てる。また、熱中する。「観客がわく」
      1. [初出の実例]「さめるのもわくのも早し湯女の恋」(出典:雑俳・都富士(1744))
  3. [ 二 ] ( 湧・涌 ) 見えなかったものが表面に現われ出る。
    1. 液体が地中からふき出す。また、激しい勢いで流れる。
      1. [初出の実例]「四は水踊(ワキ)て梁に繞り」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
      2. 「川のわきたる、滝落ちたるなど見給ふとて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
    2. 虫などが、自然に発生する。
      1. [初出の実例]「空よりやふりけん、土よりやわきけん」(出典:徒然草(1331頃)二四三)
      2. 「明はつる伊勢の辛洲のとし籠り〈里圃〉 蓑はしらみのわかぬ一徳〈馬莧〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)上)
    3. 比喩的に、物事が発生する。また、考えや感情などが生じる。
      1. [初出の実例]「うきことのかくわく時は涙川目の前にこそ落ちたぎりけれ」(出典:伊勢集(11C後))
      2. 「何か理窟種が生(ワ)いてきたら」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)

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