法被(読み)ハッピ

デジタル大辞泉 「法被」の意味・読み・例文・類語

はっ‐ぴ【法被/半被】

《「はふひ(法被)」または「はんぴ半臂)」の音変化》
和服上着一種広袖筒袖で、膝丈または腰丈。襟は折り返さないで着る。職人などが用いる。江戸時代は、武家中間ちゅうげん、大店の下僕などが家紋のついたものを、襟を羽織のように折り返して着用した。印半纏しるしばんてん
禅寺で、椅子の背に掛ける布。
能装束の一。胸ひものない広袖の上着。甲冑かっちゅう武者や鬼畜などの役に用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「法被」の意味・読み・例文・類語

はっ‐ぴ【法被・半被】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「はふひ(法被)」または「はんぴ(半臂)」の変化した語 )
  2. 禅宗で、椅子を覆い包む布。
    1. [初出の実例]「打敷・法被・素紗・纐纈」(出典:新札往来(1367)上)
  3. 江戸時代、武家の中間などが着用した袖細、腰切りの羽織の一種。その家の紋やしるしが染め出してある。
    1. [初出の実例]「大名の火事羽織はくすべ皮なり。従者は木綿のハッピ」(出典:随筆・春波楼筆記(1811))
  4. しるしばんてん(印半纏)
    1. [初出の実例]「汚腐た経帷子の半被(ハッヒ)を着」(出典:談義本・八景聞取法問(1754)三)
  5. 装束の一つ。鎧(よろい)をつけた武将・鬼神などの役に扮する時に用いる。広袖で前身(まえみ)後身(うしろみ)とははなれて、裾が幅六センチメートルほどの共切れのまちでつないである。袷(あわせ)は鬼神・武将の鎧に、単(ひとえ)公達の武装に用いられる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  6. はんぴ(半臂)
    1. [初出の実例]「はっひてむくゎむ玉をたれ、身をかざったる女官ぢにょ」(出典:幸若・大織冠(室町末‐近世初))

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改訂新版 世界大百科事典 「法被」の意味・わかりやすい解説

法被 (はっぴ)

衣服の上に着る短衣で,羽織に似ているが襟は折り返っていない。袢纏はんてん)と似ているので,それと混同されることが多いが,法被は下級武士も用いることがあり,絆纏より格が高い。袖は多く広袖で,絆纏より袖丈が長くできている。通常,胸に乳(ち)がついていてひもをつけるようになっている。木綿,麻でつくり,ときには皮でできたものもある。背に紋がついているが,染抜きのほか,ひもを置縫いしたものもある。紋のついた法被を看板という。ほかに能の装束に法被と称するものがある。これは男役が着る広袖の上衣で,脇が開いて裾に襴(らん)がついており,多く武人役が軍陣の上衣として用い,また鬼畜物にも用いられることが多い。禅宗で儀式の際に椅子に掛けて用いる装飾用の掛布に同名のものがあるが,これは服飾品ではない。
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百科事典マイペディア 「法被」の意味・わかりやすい解説

法被【はっぴ】

衣服の上に着る短衣。羽織に似ているが衿(えり)が折り返らず,襠(まち)がない。袖(そで)は広袖が多い。木綿,麻などで作り,背に大きな紋をつける。もとは下級武士なども用いたが,現在は職人が着用したり祭礼のときに用いられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法被」の意味・わかりやすい解説

法被
はっぴ

江戸時代,武家の仲間 (ちゅうげん) ,駕籠かき,大家の下僕,職人などが着た表着の一種。元来は広袖で膝丈の袷仕立てのもので,色は縹 (はなだ) 色や茶色の無地が多い。六尺看板ともいったが,これは駕籠かきの裄 (ゆき) 丈が6尺であることから彼らを俗に六尺と呼んだこと,および主家の紋所をつけたのを商家の看板に見立てたことによる。

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