浄光明寺(読み)ジョウコウミョウジ

デジタル大辞泉 「浄光明寺」の意味・読み・例文・類語

じょうこうみょう‐じ〔ジヤウクワウミヤウ‐〕【浄光明寺】

神奈川県鎌倉市にある真言宗泉涌寺せんにゅうじ派の寺。山号は泉谷山。開創は建長3年(1251)、開基は北条長時、開山は真阿。当初は真言天台華厳の四宗兼学。鎌倉公方くぼうの祈願所で、足利氏帰依を受けた。
鹿児島市上竜尾町にある時宗じしゅうの寺。山号は松峯山。開創は文治2年(1186)、開基は島津忠久と伝えるが、弘安7年(1284)島津久経が再興、開山は覚阿。西郷隆盛桐野利秋らの墓がある。

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精選版 日本国語大辞典 「浄光明寺」の意味・読み・例文・類語

じょうこうみょう‐じ ジャウクヮウミャウ‥【浄光明寺】

[一] 神奈川県鎌倉市扇ケ谷(おうぎがやつ)にある真言宗泉涌寺派の寺。山号は泉谷山。建長三年(一二五一)北条長時の創建。開山は真阿。後醍醐天皇の勅願寺。近世までは四宗兼学の道場。冷泉為相(れいぜいためすけ)の墓と伝えられる塔がある。
[二] 鹿児島市上龍尾町にあった時宗の寺。山号は松峰山。文治五年(一一八九)島津忠久が宣阿を開山に創建。建治三年(一二七七)久経のとき一遍の弟子覚阿が現宗に改めた。明治初年の排仏毀釈で廃寺。旧境内は西郷隆盛、桐野利秋など西南の役の薩軍二〇二三柱が眠る南洲墓地(県史跡)となっている。

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日本歴史地名大系 「浄光明寺」の解説

浄光明寺
じようこうみようじ

[現在地名]鎌倉市扇ガ谷二丁目

おうぎやつの一支谷であるいずみヶ谷の北側丘麓に位置する。真言宗泉涌寺派。泉谷山と号し、本尊は阿弥陀如来。寺伝によれば、初めは文覚の草庵であったというが確かではない。建長三年(一二五一)北条長時の本願で真阿(真聖国師)によって開かれた。

「鎌倉年代記」には文永元年(一二六四)八月二一日、北条長時が「於浄光明寺卒」とあり、法名を専阿観恵という。「吾妻鏡」文永二年五月三日条には「泉谷新造堂」で鶴岡別当隆弁によって長時の仏事を修したと記す。真阿は浄土教の諸行本願義に属する人で、永仁四年(一二九六)一月二三日の真阿譲状(県史二)にも善導大師の遺戒を慕いとか持戒念仏の寺、あるいは浄土宗解行二門兼備などとあるので、浄土教を中心としながらも兼学の色彩が濃い寺であったと思われる。この譲状には最明寺禅門(北条時頼)と長時が開基であることを記す。二世は真阿譲状や寺蔵の浄土宗諸行本願義流総系譜によれば真了となっているが、寺に残る歴代住持の位牌には「当山二世月航空和尚」とある。月航空和尚とは性仙道空のことで、真了と性仙が同一人であるかは不明。少なくとも位牌が造られた一五世紀後半には、寺では二世は性仙道空とされていた。性仙は浄土宗では九品寺流に属していたが、九品寺流総系譜の注によれば明恵の「摧邪輪」を支持して「選択集」を非難したとあり、竺仙梵僊も「海東之律龍」(来々禅子東渡譜)と性仙を評しているので、浄土一辺到ではなかった。兼学の傾向は三世智庵和上如仙高恵に至って四宗兼学を確立させる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浄光明寺」の意味・わかりやすい解説

浄光明寺
じょうこうみょうじ

神奈川県鎌倉市扇ヶ谷(おうぎがやつ)にある真言(しんごん)宗泉涌寺(せんにゅうじ)派に属する寺。泉谷山(せんこくさん)と号する。1251年(建長3)に北条長時(ながとき)が建立。開山は浄土宗の真阿(しんあ)。第3世智庵高恵(ちあんこうえ)のころには真言、天台、華厳(けごん)、律の四宗を兼学した。1333年(元弘3・正慶2)後醍醐(ごだいご)天皇の勅願所となり、足利尊氏(あしかがたかうじ)・直義(ただよし)兄弟も帰依(きえ)し、1399年(応永6)に足利満兼(みつかね)が祖父基氏(もとうじ)と父氏満(うじみつ)の分骨を当寺に納め、代々の鎌倉公方(くぼう)から寺領安堵(あんど)を受けて栄えた。江戸時代には徳川家康も寺領を寄せた。本尊の阿弥陀(あみだ)三尊像は鎌倉彫刻の代表的作例で、国重要文化財である。地蔵菩薩(ぼさつ)(県文化財)は足利直義の念持仏といわれ、通称矢拾(やひろい)地蔵とよばれている。裏山には石造五輪塔(国重要文化財)や、兄為氏(ためうじ)と和歌所のことで争い、母阿仏尼(あぶつに)とともに鎌倉に下向した鎌倉中期の歌人冷泉為相(れいぜいためすけ)の墓(国史跡)がある。

[祖父江章子]

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改訂新版 世界大百科事典 「浄光明寺」の意味・わかりやすい解説

浄光明寺 (じょうこうみょうじ)

神奈川県鎌倉市扇ヶ谷にある真言宗泉涌寺派の寺。泉谷山と号す。開山は真阿(真聖国師),開基は北条長時。当初は真言,天台,禅,律の4宗兼学であった。鎌倉時代は北条氏室町時代は足利氏の保護を受け,塔頭(たつちゆう)も多い大寺であった。現在,木造阿弥陀如来および両脇侍座像(重要文化財)をはじめとする諸仏像や絵画,足利尊氏,足利直義,足利義満らの古文書数十通が保存されている。
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