浸染(読み)シンセン(英語表記)dip dyeing

デジタル大辞泉 「浸染」の意味・読み・例文・類語

しん‐せん【浸染】

[名](スル)《「しんぜん」とも》
液体がしみ込んで、それに染まること。
浸透して感化されること。また、感化すること。
「王政の時より仏道久しく人心に―し」〈田口日本開化小史
染料の溶液の中に、織物・織り糸などを浸して染め上げる染色法。→捺染なっせん

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精選版 日本国語大辞典 「浸染」の意味・読み・例文・類語

しん‐せん【浸染】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しんぜん」とも )
  2. 液体がしみこんで、それに染まること。また、ひたして染めること。〔音訓新聞字引(1876)〕
  3. 次第に感化されること。また、感化すること。
    1. [初出の実例]「故に善良なる児輩は必ず此悪習に浸染すること勿れ」(出典:泰西勧善訓蒙(1873)〈箕作麟祥訳〉二)
    2. [その他の文献]〔杜牧‐斐君墓誌〕
  4. 染色の一方法。染液にひたし、冷浴、温浴または煮沸浴で処理して染めるもの。引き染め、押し染めなどに対していう。漬染(つけぞめ)

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改訂新版 世界大百科事典 「浸染」の意味・わかりやすい解説

浸染 (しんぜん)
dip dyeing

染色物全体を染液に浸して染める無地染の染色法。一般に繊維は非常に多種類の方法によって染色されるが,染色法は浸染および捺染(なつせん)に分けられる。繊維材料を染色する前に染色しやすくするための準備工程を行い,染色後は後処理,仕上げ・加工の工程を経て最終製品とする。準備工程は木綿の場合,毛焼き,のり(糊)抜き,精練,漂白の順で行われる。原綿中にはペクチン質,臘質,脂肪質,タンパク質,色素,灰分などが含まれているので,紡績油,のりなどとともに浸染前に除いておかなければならない。浸染は,繊維材料を染料溶液とときに助剤を含む染浴中に浸漬し適当な温度,時間で処理したのち,水洗,乾燥して終了する。浸染の方法は,繊維の種類,染料の部属により,基法染法として次の6種が挙げられる。(1)直接染法 セルロース繊維に対する直接染料,羊毛に対する酸性・塩基性染料,合成繊維に対する分散染料のように,染料の直接染着性に基づく染色法。(2)媒染染法 染料分子が繊維に対し直接には親和性のない場合,繊維を媒染剤で処理したあと染める方法で,媒染染料酸性媒染染料を用いる。(3)還元染法 水に不溶の染料を還元により可溶化し染着したあと酸化するもので,建染染料硫化染料による木綿染色が代表的。(4)酸化染法 アニリンなどの低分子染料を繊維に吸着後,酸化重合して発色させるもの。(5)顕色染法 ナフトール類を繊維に吸着させたのち,ジアゾ化したアミン類で処理し,繊維上でカップリングさせて色素を合成するもの。(6)反応染法 繊維中の特定基と共有結合をつくる反応染料を用いる方法。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浸染」の意味・わかりやすい解説

浸染
しんせん

浸(ひた)し染め、漬け染め、浴染(よくせん)ともいう。糸や布帛(ふはく)を染めるときに、友禅染めや小紋染めなどのように、染料を刷毛(はけ)で塗る引き染めや塗り染め、型で押したり擦り込んだりする擦り染めなどに対して、染液の中に被染物を浸して染める方法をいう。織物のための糸染めは、ほとんどこの方法によって行われる。染め方は、染料を煮出し、または熱湯をかけて色素を浸出した液に漬ける温浴が多いが、染料によっては、たとえば紅(べに)染めのように、加熱しないで、水の中で物理的に染料をもみ出した染液を用いる場合とがある。また染料そのものがそのままでは被染物に染着しないものには、鉄塩タンニン、アルミニウム塩などの媒染剤を用いるが、染液に漬ける前に、被染物にこれを浸透させておく場合と、染料に浸してのちにこれを施す場合とがあり、前者を先媒染(さきばいせん)、後者を後(あと)媒染という。染料の溶解を容易にし、また発色をよくするための助剤(酸、アルカリなど)は、多く染液に加えて用いられる。

 所望の染め色をつくるためには、化学染料のように、あらかじめ染料を混ぜ合わせることのできない天然染料では、1色ずつ何度か重ね染めを行う。この過程で、模様染めの場合、絞り、糊(のり)、ろうなどの防染法を適宜加除することによって数色に染め分けることも行われる。板締め染めの場合、被染物を挟んで締めた型板を染め液に浸けるかわりにこれに液を注ぎかける注染(ちゅうせん)(注ぎ染め)が行われることが多いが、これも塗り染めに対する浸し染めという意味では、浸染法に入るべきものであろう。

[山辺知行]

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百科事典マイペディア 「浸染」の意味・わかりやすい解説

浸染【しんぜん】

丸染(まるぞめ)とも。糸または布全体を,染料を溶かした液に浸して無地に染めること。ときには布の一部を絞ったり(絞染),布に蝋で模様を描いたり(蝋染)してから浸染して模様を出すこともある。
→関連項目染色染色機

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化学辞典 第2版 「浸染」の解説

浸染
シンセン
dip dyeing

被染物を染浴中に浸漬して染色する方法.なせんに対する染色用語.均一で完全な染色物を得るためには,染浴の pH や温度を調節する以外に,界面活性剤,電解質,高分子化合物などの染色助剤を加え,染色速度,染着平衡の調節を行う必要がある.元来,無地染めの手法であるが,絞り染め,かすり染め,型付け浸染など,模様染めにも応用されている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浸染」の意味・わかりやすい解説

浸染
ひたしぞめ

しんせん,つけぞめともいう。染色技法の一種。糸や布を染液に漬け,さらに媒染剤によって発色,定着させる方法。絞染 (→纐纈 ) ,板締,ろう,糊などを用いて防染し模様をつくる。

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普及版 字通 「浸染」の読み・字形・画数・意味

【浸染】しんぜん

しみこむ。

字通「浸」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の浸染の言及

【染色】より

…特別な例を除いて一般的には染料は水溶液として分子状に拡散したのち,染料の繊維に対してもつ特定の親和性(染着性)によって繊維上に収・固着される。染色は技術的には浸染捺染に分けられるが,染色の原理として共通するのは,なんらかの形をとる水溶性(後述するように分散染料のような例外はある)と,染料分子またはイオンのもつ繊維高分子材料に対する親和性に基づく染着性である。染色される繊維の種類は木綿,麻などの植物性天然繊維,羊毛,絹などの動物性天然繊維,ビスコース,キュプラなどの再生繊維,アセテート,トリアセテートの半合成繊維のほかに,ポリアミド,ポリエステル,ポリアクリロニトリル,ポリビニルアルコールホルマールなど数多くの合成繊維があり,それぞれの化学的性質,物理的構造などはきわめて多様にその染色性を支配する。…

※「浸染」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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