(読み)あわい

精選版 日本国語大辞典「淡」の解説

あわ・い あはい【淡】

〘形口〙 あは・し 〘形ク〙
① 色、味、調子などが薄い。⇔濃い
※書陵部本名義抄(1081頃)「澹淡 アハシ〔集〕」
※白氏文集天永四年点(1113)三「曲淡(アハク)節稀に声多からず」
② 物事に対する執着、関心の度合が浅い。あっさりしている。
※世俗諺文鎌倉期点(1250頃)「君子の交はり也 淡(アハイコト)水の若し」
※徒然草(1331頃)一七二「老いぬる人は、精神おとろへあはくおろそかにして、感じうごく所なし」
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉九三「欲に淡(アハ)く道に励めば」
③ 考え、行動、判断などが一貫していない。軽薄である。
※源氏(1001‐14頃)澪標「なのめなることをだに少しあはき方によりぬれば、心とどむるたよりもなきものを」
※読本・南総里見八犬伝(1814‐42)八「恁(かう)(まう)さば、淡(アハ)き女子の身の程をしも、思はぬまでに舌長しとて叱らせ給ふ歟(か)
④ かすかではっきりしない。
※黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉三「志村鶴松との昔の浮名は、十四五の淡(アハ)い事であったとするも」
※夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉江戸ッ児になる迄「記憶はそれ程に、淡(アハ)く、たよりないが」
あわ‐さ
〘名〙

たん【淡】

[1] 〘名〙 「たんが(淡画)」の
※色葉字類抄(1177‐81)「淡 タム 淡絵」
[2] 淡路国(あわじのくに)の略。

あわ‐・む あは‥【淡】

〘他マ下二〙
① よそよそしくする。うとましくする。疎遠に扱う。
※源氏(1001‐14頃)夕霧「いみじうあはめ恨み申し給へば」
② 相手の言動を非難しておとしめる。言いけなす。
※源氏(1001‐14頃)帚木「つまはじきをして、いはむ方なしと、式部をあはめ憎みて」
③ 相手の言動の欠点をとがめいさめる。たしなめてやめさせようとする。
※書紀(720)天武八年一〇月(北野本訓)「上は下の過を責め、下は上の暴きを諫(アハメ)ば」
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一七日「かかる所に上臈(じゃうらふ)のけぢめ、いたうは分くものかとあはめ給ふ」

あわつけ・し あはつけし【淡】

〘形ク〙 軽々しい。軽率である。軽薄である。思慮が足りない。
※源氏(1001‐14頃)空蝉「あはつけしとは思(おぼ)しながら、まめならぬ御心は、これも、えおぼしはなつまじかりけり」
[語誌](1)「あはむ・あはし・あはあはし・あはつかなり」のアハと同根で「淡」の意。
(2)類義の「あはあはし」が事件や行為を総合的、客観的にとらえて判断した非難であるのに対して、「あはつけし」はその時々の思慮を欠いた行為や事態に対する感情的、感覚的な嫌悪感であると思われるが、中世の注釈書では「あはあはし」と同義と考えられている。
あわつけし‐さ
〘名〙

あわ あは【淡】

[1] (形容詞「あわい」の語幹) あっさりしていること。
※源氏(1001‐14頃)竹河「待ちつけたてまつりたるかひなく、あわの御ことわりや」
[2] 〘名〙 (形動) (淡と泡とをかけて、多く「あわに」の形で用いる) 消えやすいさまにいう。はかなく。たよりなく。
※枕(10C終)九〇「うはごほりあはにむすべるひもなればかざす日かげにゆるぶばかりを」

あわ・す あはす【淡】

[1] 〘他サ五(四)〙 柿の渋を抜く。さわす。
[2] 〘他サ下二〙 (一)に同じ。
※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)上「秋の夜にさはしら柿の味よりもあわせざるにも味まさりけり」

あわ・し あはし【淡】

〘形ク〙 ⇒あわい(淡)

あわ‐に あは‥【淡】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「淡」の解説

たん【淡】[漢字項目]

常用漢字] [音]タン(漢) [訓]あわい
〈タン〉
色などが濃くない。あわい。「淡黄淡彩・淡粧/濃淡
塩けがない。「淡湖・淡水
気持ちがあっさりしている。情が厚くない。「淡交淡淡淡泊枯淡恬淡(てんたん)冷淡
淡路(あわじ)国。「淡州
〈あわ〉「淡雪
[名のり]あわ・あわし・あわじ
[難読]淡海(おうみ)淡竹(はちく)

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世界大百科事典内のの言及

【絵所】より

…内豎はこの当時の民間工匠をいい,熟食はもと内匠寮に所属した雑工であった。さらに他の文献から,墨書配下の工匠のなかに,画工司の金画長上とよばれた金泥専門工人に相当する淡(たみ),主として彩色を担当する作絵(つくりえ),また顔料を調製する丹調(にづくり)などの職名と絵画制作の分担が知られる。この宮廷の絵所絵師たちがさかんに活躍する12世紀に入ると,公認された絵仏師も工房を組織し,寺院の造営を場としてともに手腕を競った。…

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