翻訳|bay
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
陸地の中に入り込み、外海に開口している海面。湾の面積は、メキシコ湾(アメリカ合衆国南部)、ベンガル湾(インド洋)、ハドソン湾(カナダ北東部)のようにきわめて広大なものから、日本列島あるいはその属島にある湾のようにきわめて小規模なものまで存在する。外洋から陸地に入り込んでいるので、小規模なものは、とくにその中は波が静かで、港湾や風待の港として発達している所が多い。その成因によって、陥没湾、階段湾、氾濫(はんらん)湾に分けられる。ベンガル湾、アデン湾(アラビア半島南端)、鹿児島湾、内浦(うちうら)湾(北海道)などは陥没湾の好例で、アラスカ湾(アメリカ合衆国)は階段湾、黄海や有明(ありあけ)海は氾濫湾の例である。
[市川正巳]
湾とは、その海岸が同一の国の領土に属し、湾の入口の幅が比較的狭く、かつ海の陸地への入り込みが深い海の部分をいう。従来、一国の領域となる湾は、入口の幅が10海里までの湾とされてきた。しかし領海の幅が拡大される傾向を反映して、現在の海洋法条約では、湾口の幅を24海里までとし、かつ湾の奥行が湾口の幅と比較して十分に深いために陸地に囲まれた水域を含んで、単純な海岸のくぼみ以上の明白な湾入としている。そして湾入の面積が、湾口を横切って引かれた線を直径とした半円の面積以上の広さをもつものとしている。入口の幅が24海里を超えないときには、入口に閉鎖線を引いて、その内側の水域を内水とする。また幅が24海里を超えるときには、湾内で24海里に狭まるところで、かつ湾内に最大の水域を囲むように閉鎖線を引き、その内側水域を内水とする。なおこれらの規制は、歴史的湾に適用されない。
[中村 洸]
湾は海岸線が陸に深く湾入した部分で,湾口部に引いた直線を直径とする半円を想定し,その半円の面積より広い水域を有するものをいう。ただし半円の面積より狭いものでも古くから湾と呼ばれていた場合は湾として扱う。大きな湾を海湾gulf,小さい湾を入江(または浦)coveというが,厳密な区別はない。湾口に比して奥行きが小さいものを開湾bight,奥行きが長く外洋水の影響が少ないものを内湾という。氷河で形成された峡湾(フィヨルドfijord),構造運動でできた陥没湾,河谷の沈水でできた沈水湾などがある。湾は外洋の波浪や風を遮り,〈天然の良港〉あるいは避難港として古くから利用されてきたが,後背地が狭いため最近の港湾は沖積平野の海岸を掘り込んでつくることが多くなり,〈人工の良港〉という考え方が強くなった。また三陸沿岸はリアス海岸として多くの湾と港を有するが,津波に対しては大きな被害を生ずることがある。1958年採択された〈領海および接続水域に関する条約〉では(1982年に117ヵ国により署名された〈海洋法に関する国際連合条約〉でも),湾口部に引かれる直線を領海の基線とすることができるが,この湾口閉鎖線は24カイリ以上であってはならない。この場合は湾内に24カイリ以内の直線基線を引くことができるとされている。
執筆者:佐藤 任弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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