溶連菌感染症(読み)ヨウレンキンカンセンショウ

デジタル大辞泉 「溶連菌感染症」の意味・読み・例文・類語

ようれんきん‐かんせんしょう〔‐カンセンシヤウ〕【溶連菌感染症】

溶血性連鎖球菌によって起こる感染症。のどの痛み、発熱発疹などをともなう。飛沫感染する。→猩紅熱しょうこうねつ

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家庭医学館 「溶連菌感染症」の解説

ようれんきんかんせんしょうしょうこうねつ【溶連菌感染症(猩紅熱) Scarlet Fever】

[どんな病気か]
 溶連菌(コラム「溶連菌と溶連菌感染症」)の感染によって、全身に紅い発疹(ほっしん)が現われる病気です。
 かつては、死亡率が高かったために、法定伝染病(ほうていでんせんびょう)に指定されていましたが、抗生物質療法を行なうと、症状が3~4日で消え、見かけ上は治ったようになります。
 このため、近年は、猩紅熱という診断名の使用を避けて、法的な規制を受けない溶連菌感染症という病名で治療することが多くなっています。
 したがって、届出数は非常に減少していますが、実数はあい変わらず多く、注意の必要な病気です。
●かかりやすい年齢
 3~12歳の子どもがかかることが多く、幼稚園や学校で集団発生することが多いので、学校伝染病(がっこうでんせんびょう)に指定されています。
●流行する季節
 夏は少なく、晩秋から春にかけての寒い季節に多発しますが、都会では1年中発生します。
[症状]
 潜伏期は2~5日です。のどの痛みで始まり、寒けがして数時間のうちに38~39℃の熱が出ます。病気の初期は食欲がなく、嘔吐(おうと)したりします。のどの中をみると口蓋扁桃(こうがいへんとう)が赤く腫(は)れて、飲食物を飲み込むときに痛みます。
 1~2日たつと、紅く細かい発疹が、くびや胸あたりから現われて全身に広がりますが、かゆみで気づくこともあります。顔は、口の周囲だけ発疹が現われないので口囲蒼白(こういそうはく)といい、風疹やはしかとの区別に役立ちます。
 3~4日たつと、舌の厚い苔(こけ)がはがれて西洋イチゴのようなぶつぶつのある紅い舌(いちご舌)になります。
 熱が下がると、発疹もしだいに消え、皮膚が細かくむけますが、あとは残りません。
●受診する科
 小児科(内科)を受診します。子どもの熱と発疹の出る病気は感染するものが多いので、早く受診し、周囲に感染が広がらないようにしましょう。兄弟姉妹がいる場合は医師に報告しましょう(コラム「溶連菌感染症の緊急予防」)。
[検査と診断]
 熱、のどや発疹のようすなどからだいたい診断できますが、のどの粘液(ねんえき)を、滅菌した綿棒でとって検査をし、溶連菌が多数いることで診断します。近年、10分間で結果がわかる簡単な迅速検査法ができました。
[治療]
 溶連菌に有効な抗生物質を内服で用います。
 2~3日で症状が消え、見かけ上は治ったようになりますが、2週間くらい治療を続けないと、のどの溶連菌が増殖して保菌者になり、合併症をおこしたり、他の人を感染させたりします。菌が完全に陰性になったかどうかは、抗生物質療法が終了して5日おいてから、2~3回、のどの粘液を培養検査し、溶連菌がいないことを確かめてきめます。
●合併症
 病気の初期に、のどの炎症が波及し、中耳炎(ちゅうじえん)をおこすことがありますが、抗生物質療法が行なわれるようになってから、こうしたことはまれになりました。
 第2病週には、しばしば口角炎(こうかくえん)をおこし、くちびるの両端がただれ、食物がしみて痛みます。
 回復期には、リウマチ熱急性腎炎(きゅうせいじんえん)がおこることがあります。発生率は約1%程度ですが、治療に長い年月を要するので、退院後もしばらくは早期発見に留意してください。
 症状が消えても、医師の許可が出るまで抗生物質を服用し続けることがたいせつです。
●看護と養生のポイント
 高熱の間は寝かせて頭を冷やします。のどを痛がるときは、のどを冷やして1日数回うがいをさせます。皮膚のかゆみを訴えるときは、かゆみ止めの軟膏(なんこう)を塗り、かゆみが激しいときは抗ヒスタミン薬を内服します。
 高熱の間は、消化のいい食事にし、解熱して食欲がでれば、消化の悪いもの以外、ふつうの食事にします。ただし、腎炎の疑いがでれば、塩分制限が必要です。
●免疫(めんえき)
 昔は、一度、溶連菌感染症にかかれば、生涯続く免疫ができました。
 しかし、近年は、抗生物質で治療するために病気が軽い状態ですんでしまい、免疫のでき方が不完全で、再感染の可能性もあります。
[予防]
 病人や保菌者ののどにいる溶連菌が、会話やせきの際に飛び散ります。看護をする家族は、感染しないようにマスクをしましょう。うがいや抗菌薬のトローチ(口内錠)をしゃぶるのも効果があります。
 予防接種はありません。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶連菌感染症」の意味・わかりやすい解説

溶連菌感染症
ようれんきんかんせんしょう

溶連菌の感染が原因となっておこる疾患の総称で、ヒトの場合は90%以上がA群溶連菌による。多種多様の疾患が含まれ、化膿(かのう)性の皮膚疾患としては癤(せつ)、癰(よう)(癤が集合性に生じたもの)、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織(ほうそうしき)炎など、炎症性疾患としては咽頭(いんとう)炎、扁桃(へんとう)炎、アンギーナ、中耳炎、乳様突起炎、骨髄炎、産褥(さんじょく)熱など、菌体外毒素の発赤毒によるものでは、小児の場合はしょうこう熱、成人では丹毒があり、続発性のものではアレルギーなどが考えられる糸球体腎(じん)炎やリウマチ熱がある。1975年ごろよりB群溶連菌による新生児の敗血症や化膿性髄膜炎が増加傾向にある。新しいものでは劇症型溶連菌感染症(劇症型A群溶連菌感染症)が、欧米では1980年代の後半から、日本では1992年(平成4)から発生している。劇症型溶連菌感染症については独立の項目があるので参照されたい。

 なお、しょうこう熱は、A群溶連菌による急性扁桃炎のうち、発赤毒による皮膚発疹(ほっしん)を伴うものとみられるようになり、旧法では法定伝染病の一つとされていたが、感染症予防・医療法(感染症法)ではA群溶血性連鎖球菌咽頭(いんとう)炎として5類感染症に分類されている。

[柳下徳雄]

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百科事典マイペディア 「溶連菌感染症」の意味・わかりやすい解説

溶連菌感染症【ようれんきんかんせんしょう】

溶連菌(溶血性連鎖球菌)の感染による病気の総称。皮膚の化膿性疾患,扁桃炎や上気道炎,中耳炎などの急性炎症疾患,猩紅(しょうこう)熱敗血症などの全身性疾患など,さまざまな病気がある。

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世界大百科事典(旧版)内の溶連菌感染症の言及

【猩紅熱】より

…この溶連菌の感染で発病するものにはほかに咽頭炎,扁桃炎,丹毒,急性糸球体腎炎などがあり,さらに反復感染の後にリウマチ熱を起こすこともある。この菌で猩紅熱になることはむしろ少なく,また近年,本症は軽症化が目立ち,不完全型が多くなって,猩紅熱と診断されずに溶連菌感染症といわれている場合もある。 猩紅熱は5~7歳の小児に多い病気で,38~39℃の発熱,咽頭痛,頭痛,吐き気,嘔吐などの症状で始まり,ときには強い腹痛がある。…

※「溶連菌感染症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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