潜〔潛〕(読み)セン

デジタル大辞泉の解説

せん【潜〔潛〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]セン(漢) [訓]ひそむ もぐる くぐる かずく ひそかに
水中にもぐる。「潜航潜水
中にひそんで表面に現れない。「潜居潜行潜在潜伏
思いをひそめる。物事に没頭する。「潜心沈潜
「潜水艦」の略。「原潜
[名のり]すみ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

かずき かづき【潜】

〘名〙 (「かつぎ」とも)
① (━する) 水中にもぐること。水中にもぐって魚介などを採ること。
※古事記(712)中・歌謡「淡海の海に 迦豆岐(カヅキ)せなわ」
※枕(10C終)三〇六「海女(あま)のかづきしに入るは」
② 海にもぐって魚介などを採ることを業とする者。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「あま・かづき召しつどへて」

かず・く かづく【潜】

(「かずく(被)」と同語源。「かつぐ」とも)
[1] 〘自カ四〙 水中に頭からくぐり入る。水の中にもぐる。
※古事記(712)中・歌謡「鳰鳥(みほどり)の 加豆伎(カヅキ)息づき」
[2] 〘他カ四〙 水中にもぐって魚介などをとる。水にもぐってさがす。
万葉(8C後)一一・二七九八「伊勢の白水郎(あま)の朝な夕なに潜(かづく)といふ鰒(あはび)の貝の片思(かたもひ)にして」
[3] 〘他カ下二〙 魚介などをとらせるために水にもぐらせる。多く鵜(う)についていう。
※万葉(8C後)一三・三三三〇「上つ瀬に 鵜を八頭漬(かづけ)

かつぎ【潜】

〘名〙 ⇒かずき(潜)

かつ・ぐ【潜】

くぐり【潜】

〘名〙 (動詞「くぐる(潜)」の連用形の名詞化)
① くぐること。
② 「くぐりど(潜戸)①」、または「くぐりもん(潜門)」の略。
※石山本願寺日記‐証如上人日記・天文七年(1538)正月八日「然間東の門あけ候てと申〈略〉仍くぐりばかりあきたるとて候」
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)二「くぐりのすこし明たる所より、そと入れてかへりしに」
③ 茶室建築で、潜って出入りするようにつくった露路口、中潜、躙口(にじりぐち)などをいう。
仮名草子・尤双紙(1632)上「せばき物之しなじな〈略〉ろぢ口のくぐり」

くぐ・る【潜】

〘自ラ五(四)〙 (古くは「くくる」)
① 物の下やすき間など、狭い空間を通り抜ける。
(イ) 漏れて出る。漏れ出るように狭い空間を流れる。
※万葉(8C後)四・五〇七「しきたへの枕ゆ久久流(ククル)涙にそうき寝をしける恋の繁きに」
※日葡辞書(1603‐04)「ミヅ イワノ シタヲ cuguru(クグル)
(ロ) 狭い空間を身をかがめて、また、身をかがめるようにして通る。
※金葉(1124‐27)雑上・五六三・詞書「傍のつぼねの壁のくづれよりくぐりて逃しやりて」
(ハ) 多くの物事の間を、縫うように、また、すり抜けるように通る。
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)六「寒暑を潜(クク)て物を化す」
雑俳柳多留‐一(1765)「網の目をくぐってあるく娵(よめ)の礼」
② 水や土の表面に出ないようにして進む。
※万葉(8C後)一一・二七九六「水泳(くくる)珠に混じれる磯貝の片恋のみに年は経につつ」
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)四「地の中に潜(クク)り、穴ほて空に入りて」
③ 門を通り抜ける。
※夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「寺の山門をくぐったその日から」
④ 他の気づかないところをねらって事をする。
(イ) 弱点、欠点、油断などに乗じて、うまく事を運ぶ。
※東京学(1909)〈石川天崖〉二四「よい工合に法律の下を潜(クグ)って居るのである」
※大寺学校(1927)〈久保田万太郎〉四「その網の目をくぐって一寸一寸(ちょいちょい)寄合をつけた」
(ロ) 先まわりして考える。心を読む。
※狂歌・吾吟我集(1649)六「ゆがみゆく君の心をくぐり見てたえず恨はありどをし哉」
⑤ 困難な状態や危険にさらされながら過ごす。困難や危険の中を、切り抜けていく。
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六「明日をも知れぬ危険を潜ってゐるんだといふことを」
[語誌](1)上代文献では第二音節も清音で「くくる」の語形である。平安末頃には、「くくる」と「くぐる」の両形が存したらしい。
(2)平安朝の仮名散文では、①(イ) の意味は主に「漏る」(四段)によって表わされていたようである。
(3)「くぐ」については「くぐまる」「くぐもる」や「くぐせ」「たにぐく」などとの関係が考えられる。

こぐ・る【潜】

〘他ラ四〙 (「くぐる」の変化した語) 低い所や狭い所を、からだをまげて通り抜ける。また、水の中や土の中などにはいる。
※俳諧・鷹筑波(1638)四「そろそろと野ばなれへ出る猫の音 山がらこくるあし付の盆〈一伊〉」

ひそ‐・む【潜】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 人目を避けてこっそりかくれる。かくれて静かにする。しのぶ。〔文明本節用集(室町中)〕
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉六「木の皮の下に潜み居る、虫を捕りて食はんが為めに、嘴にて木を叩くなり」
② 力、能力、実体、原因などが外にあらわれないで内部に隠れる。
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「奥深く潜みたりしまことの我は、やうやう表にあらはれて」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒ひそめる(潜)

ひそ‐・める【潜】

〘他マ下一〙 ひそ・む 〘他マ下二〙
① ひっそりと静かにする。〔和玉篇(15C後)〕
② ひかえめにする。表だたないようにする。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「隠しひそめて、さる心、し給へ」
③ しのばせる。かくす。
※大唐西域記長寛元年点(1163)四「兵を潜(ヒそ)め甲を伏し」
④ 心を平静にする。落ちつかせる。
渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉一「しかし抽斎は心を潜(ヒソ)めて古代の医書を読むことが好で」
⑤ 内にひめて外にあらわさないようにする。内に蔵する。ひめる。
※桐の花(1913)〈北原白秋〉白猫「魔力を秘(ヒソ)めた声音」

むぐり【潜】

〘名〙 (動詞「むぐる(潜)」の連用形の名詞化)
① 水中にもぐること。また、その人。もぐり。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
② こっそりと入り込むこと。潜入すること。また、その人。もぐり。
※歌舞伎・御国入曾我中村(1825)中幕「深川の住人、桜川善好、むぐりながらもこれにあり」
③ 無許可で、縁日などで芸を披露し、稼いでいる人。もぐり。
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉一「ムグリといふ者あり、芸人の鑑札を有せずして夜縁日に出でて三味線等を弾ける者、年取れる婦女多し」
④ 鳥「かいつぶり(鸊鷉)」の異名。《季・冬》
※博物図教授法(1876‐77)〈安倍為任〉二「(にほ)はムグリといふ、池沼に棲み水に遊泳する事甚巧なり」

むぐ・る【潜】

〘自ラ四〙 =もぐる(潜)
※雑俳・柳多留‐初(1765)「灯籠の人を禿はむぐって出」

もぐり【潜】

〘名〙 (動詞「もぐる(潜)」の連用形の名詞化)
① 水にもぐること。また、その人。その役目、職業などにもいう。むぐり。《季・春》
※風俗画報‐一七一号(1898)江之島の部「此辺には潜夫(モグリ)群居して、遊客の為めに身を逆にし海水に没入し鮑若くは海老、栄螺等を捕へ来る」
② 法を犯し、こっそりと行なうこと。無許可、無免許で物事を行なうこと。無資格で行なうこと。また、その人。名詞の上に付けて用いることもある。
人情本・春色雪の梅(1838‐42頃か)初「もぐりなら、構はねえ、頭(かしら)の所へ引きずって行くが可(い)いわな」
③ ある特定の土地以外の者や仲間でない者が、素姓を隠して仲間のような様子をしていること。また、その人。
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉みぞれ「柳橋で西巻さんを知らなかったらそれこそモグリ」

もぐ・る【潜】

〘自ラ五(四)〙
① 水中にくぐり入る。くぐる。
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉六「然れどもめだかは常に水面に浮び游ぎて、水中に深く潜り入ること莫し」
② 物の中や下に入り込む。中にはいってかくれひそむ。
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一「鳥は殆く墜やうとして、〈略〉もぐるやうにして、辛じて林の際まで漕付」
③ 法を犯してひそかに物事を行なうために、社会の表面からかくれる。
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六「弾圧がはげしいから、機関に就いた労働者はどうしてももぐらなくてはならない事情もある」

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