雑俳では、四世川柳(眠亭賤丸、文政七年川柳を襲名)が俳風狂句、五世川柳(醒斎佃、天保八年襲名)が柳風狂句の称を用いたので、(ホ)のように川柳一般を指すようになった。
たわぶれまたは滑稽の句の意。早くは,二条良基の《筑波問答》に連歌の風体を分類し,中に〈狂句〉の1体が認められ,芭蕉にも〈かれ狂句を好むこと久し〉(《笈の小文》)や〈狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉〉とあり,俳諧と同義,もしくは物に興じた発句の意に使用された。しかし狭義では,初代川柳時代の作品を〈古川柳〉とし,2世以後の旧派作品を狂句と呼ぶ習慣ができている。1824年(文政7)には,4世川柳が,従来の〈前句〉の称が単独17音句には合わないので〈俳風狂句〉と称してみずから元祖を名のり,次いで5世が,1841年(天保12)に〈柳風狂句〉と改称した。しかし,作品は観念的道徳的な遊戯に堕ちているので,狂句といえば,〈古川柳〉とは価値の違う駄作を意味することにもなっている。この慣行は,様式名に価値観を加味したもので,正しい用い方ではなく,様式名としては,初代時代もふくめて17音句の総称として,いわゆる川柳=狂句とすべきであろう。
執筆者:鈴木 勝忠
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広義には戯れまたは滑稽(こっけい)な句の意であるが、狭義には川柳(せんりゅう)の別称。4世川柳が文政(ぶんせい)年中(1818~30)に「俳風狂句」と称したのが最初。それまでは適当な名称がなく、「川柳の選」「川柳点」などといって人名と紛らわしいので、考えついたものである。5世川柳は「柳風(りゅうふう)狂句」と変え、のちにはただ「狂句」とよばれてたとえば『狂句うめ柳』という川柳集もある。その後、川柳と狂句は並行的に用いられ、明治末になって文学史的には「川柳」で統一されたが、一般には「狂句」がいつでも用いられた。
なお別に、初期の古川柳の新鮮な味わいに対して、末期川柳にある卑俗さや技巧過多を「狂句」とよんで非難する使い方が一時期あったがいまはほとんど用いられない。
[浜田義一郎]
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