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中国の雅楽で使われた弦楽器。チター属に属し、日本の箏(そう)の胴を幅広くした形。25弦が普通だが、23~27弦まであり、中国神話には庖犧(ほうぎ)氏が50弦のものをつくったと伝える。湖南(こなん/フーナン)省長沙(ちょうさ/チャンシャー)馬王堆(まおうたい)漢墓(前2世紀)から長さ116センチメートル、幅約40センチメートルのものが発見されたほか、後世には長さ約2メートル、幅約80センチメートルの大型のものがある。日本にも伝来した形跡があり、正倉院に24弦の瑟の尾部の板が残っている。奏法は箏と同様で、柱(じ)を立て、右手で弦をはじく。中国ではかならず琴(きん)とともに用いることから、夫婦の仲がむつまじいことのたとえに「琴瑟相和(あいわ)す」のことばが生まれた。
[橋本曜子]
…柱を用いない琴(きん)とは異なるが,日本や朝鮮では,古くから〈琴〉の字をあてて箏類をもさすことがある。単に箏と称するもののほかに,同類の楽器として,中国の瑟(しつ),朝鮮の伽倻琴(かやきん),大箏(たいそう),牙箏(がそう),日本の和琴(わごん),モンゴルのシトク(ヤトク,ヤタグともいう),ベトナムのダン・チャンなどがあり,撥弦楽器が主流であるが,牙箏のように擦奏するものもある。
[中国]
中国の箏は雅楽用でなくもっぱら俗楽に用いられてきた。…
…また縦笛やそれを組んだ排簫(はいしよう),前5世紀以前には横笛も使われ,和音を出す笙も同時に広く用いられていた。弦楽器は25弦で琴柱(ことじ)のある瑟(しつ)と,琴柱のない琴(きん),また打奏の筑(ちく)も史書にはみえる。後世,琴は7弦を定型とするが,馬王堆漢墓出土の漢制七弦琴以前は,5弦,10弦など不定であったらしい。…
…馬韓では5月の種まきの後と10月の収穫の後に,群衆による歌舞を行うと伝えられており,この時代の歌舞による祭事は,いずれも,今日の農楽や〈クッ〉と呼ぶ神事と関係があると考えられている。楽器についての記録は,弁韓と辰韓に,今日の代表的な弦楽器の伽倻琴や玄琴の祖形と見られる瑟(しつ)に似たチター属楽器があったことを伝えており,これは,朝鮮民族が早くから,長方形の弦楽器を好んで使用していたことを物語っている。(2)三国時代(4~7世紀後半) 高句麗,百済,新羅それぞれに異なる特色があらわれる。…
※「瑟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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