デジタル大辞泉 「甚」の意味・読み・例文・類語

じん【甚】[漢字項目]

常用漢字] [音]ジン(呉) [訓]はなはだ はなはだしい
はなはだしい。「甚雨甚暑甚大激甚幸甚深甚
[名のり]しげ・たね・とう・ふか・やす
難読甚麼そも・いかん

いた【甚】

[副]《形容詞「いたし」の語幹から》程度のはなはだしいさま。非常に。たいへん。
「―泣かば人知りぬべし」〈・下・歌謡

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精選版 日本国語大辞典 「甚」の意味・読み・例文・類語

はなはだ【甚】

  1. 〘 副詞 〙 普通の程度を越えていることを表わす。ひどく。大変。非常に。肯定表現にも否定表現にも用いる。
    1. [初出の実例]「異なる香気有るを聞ぐ。非常(ハナハタ)郁烈(さかり)なり」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「ただ今の一念において、直ちにする事の甚難き」(出典:徒然草(1331頃)九二)

甚の語誌

( 1 )上代には、「万葉集」に「甚」字をハナハダと訓じたと思われる例はあるが(→はなはだも)、仮名書きの例はない。
( 2 )上代の「万葉集」の例はいずれも動詞を修飾する例だが、中古以後は形容詞・形容動詞を修飾する例がほとんどである。動詞を修飾する例は中古の仮名文にはなく、平安初期の訓点資料や「今昔物語集」にわずかながら見える。
( 3 )中古仮名文では例は多くない。地の文や女性の会話には全く見えず、かわりに「いと」「いたく(いたう)」「いみじく(いみじう)」などを用いる。
( 4 )中古仮名文にあまり例が見えないのに対し、訓点資料には多くの用例が見える。ハナハダは中古以後は男性語的・漢文訓読語的性格を持った硬い語であった。現代語でも硬い感じを伴い主に文章語や演説の中で使われるのは、この伝統を受け継いだもの。

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普及版 字通 「甚」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音] ジン
[字訓] おきかまど・はげしい・はなはだ

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 象形
竈(かまど)の上に烹炊の器をかけている形で、烹(ほうじん)の意。〔説文五上に「尤も安樂するなり。甘匹に從ふ。匹はなり」と甘匹の会意とし、男女相(たの)しむ意とする。の意を以て解するが、古文字形は竈に鍋をかけた形。斗を以てこれをくむを斟酌(しんしやく)という。〔左伝〕にみえる裨(ひじん)は、裨竈(ひそう)と同一人であるらしく、甚・竈対待の名字をもつ人であろう。煮すぎることを過甚という。

[訓義]
1. かまど、おきかまど、行竈、火炉。
2. はげしい、過甚。
3. はなはだ、とりわけ、もっとも。
4. 近世語で、なに、いずれ。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕甚 ハナハダシ・イカラシ・ヲシフ・ナヲシ 〔字鏡集〕甚 ハナハダ・ハナハダシ・ヲシフ・ナヲシ・イカラシ・タダシ

[声系]
〔説文〕に甚声として斟・・湛・など十四字を収める。斟・は烹炊のことや竈に関する字、は過甚の意であろう。は〔説文〕十上に「(おきかまど)なり」とし、とは行竈・火炉の意であるから、はおきかまど。甚がその初文である。

[語系]
甚zjim、斟tjimは声義近く、甚中のものを斗を以てくむことを斟(しん)という。thmはかまどのすすけた色をいう字であろう。〔説文〕十上に「桑(さうじん)のなり」とあるのは、転用の義とみられる。湛・(たん)は耽と同声。別の系列をなす語である。

[熟語]
・甚雨甚急甚緊甚至・甚事・甚日・甚深・甚親・甚酔・甚都
[下接語]
已甚・劇甚・激甚・幸甚・深甚・甚・太甚

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