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チャイコフスキー作曲の4幕のバレエ。作品20。台本はベギチェフとゲルツェル。1877年ライジンガーの振付によって,モスクワ・ボリショイ劇場で初演。80年と82年にも同劇場でハンセンの振付で再演。いずれも目だった評判は得なかった。95年ペテルブルグのマリインスキー劇場でM.ペチパとL.I.イワノーフの振付で上演,大成功を収めた。この成功には,作曲者の弟モデスト・チャイコフスキーが台本の一部を作り直したことも助けになった。現行の演出は基本的にこの上演を継ぐものが多い。粗筋は以下の通り。領主の王子ジークフリートは,魔法使いロットバルトによって白鳥の女王に姿を変えられた美しいオデッタ(オデット)を愛し,母王妃の選んだ花嫁候補をすべて断る。ロットバルトは城の舞踏会にオデッタと瓜二つの娘オディール(黒鳥)を連れて現れ,ジークフリートを魅了する。ジークフリートの裏切りで,オデッタは死ぬ。しかしだまされたことに気づく王子とオデッタの愛の力が,邪悪な魔法をとく。
執筆者:森田 稔
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クラシック・バレエの代表作。全四幕。V・P・ベギチェフとV・F・ゲルツェルの台本によりチャイコフスキーが作曲(1876完成)し、ライジンガーの振付けで1876年2月20日(ロシア暦)モスクワのボリショイ劇場初演。物語は救済メルヒェンで、魔法使いロットバルトによって白鳥に変えられている王女オデットは、夜の間だけ人間に戻るが、彼女に恋をした王子ジークフリートは強い愛情によってその魔法を解くというのが大筋である。初演は成功を収めることができず、作曲者の死後の1895年に、M・プチパとその弟子イワーノフの振付けによってペテルブルグのマリンスキー劇場で改訂上演されて大成功を収め、今日の大流行の基礎がつくられた。プチパはマイム的な身ぶりの多い第一幕と、第三幕の王子の花嫁候補たちの舞踊競争ともいえるディベルティスマンを、イワーノフは第二幕、第四幕のロマンチックなチュチュを着た白鳥たちの登場する場面を担当した。その後も振付けや演出に多くの改訂が加えられており、結末も2人が悪魔を倒して結婚するもの、死によって結ばれる悲劇的なものなどさまざまである。清純な白鳥オデットと、ロットバルトの娘で王子を誘惑する黒鳥オディールを1人で演じ分けるのが、プリマ・バレリーナへの第一歩とされる。
[市川 雅]
『アン・ヌージェント著、小倉重夫訳『白鳥の湖』(1987・新書館)』
…しかし,舞踊の因襲的な技法が自由な音楽表現の束縛となり,一級の作曲家たちはバレエ音楽に創作意欲を示さなかった。パリにおけるドリーブの《コッペリア》(1870)と《シルビア》(1876),モスクワにおけるチャイコフスキーの《白鳥の湖》(1876),ペテルブルグにおける同じ作曲家の《眠れる森の美女》(1890)と《くるみ割り人形》(1892)の成功は,この通念を打開し20世紀のバレエ音楽への道を開いた。 1910年代から20年代にかけて,ディアギレフの主宰する〈バレエ・リュッス〉のために,現代音楽の新しいイズムをもったバレエ音楽が相次いで創造される。…
…独舞と群舞の有機的なつながり,踊りとマイムの交替による劇的展開など,さまざまな新手法を打ちだし,欧州屈指のバレエ団をつくりあげた。彼の作品は《ドン・キホーテ》(1869),《バヤデルカBayaderka》(1877)をはじめ自作だけでも60編を超すが,その作舞法は年とともに深味をまし豊かになり,とくに晩年にはチャイコフスキー,グラズノフの協力のもとに交響楽的バレエ《眠れる森の美女》(1890,曲チャイコフスキー),《白鳥の湖》(1895,イワノフと分担,曲チャイコフスキー),《ライモンダ》(1898,曲グラズノフ)など,近代バレエの頂点をなす不朽の名作をつくりあげた。また《ジゼル》《海賊》《エスメラルダ》など,先人の作品の改訂増補にいどみ,精彩さを加えた傑作として後代に伝えた。…
※「白鳥の湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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