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右派無産政党。1923年末から労農団体や革新的知識人の間で合法無産政党結成の気運が盛り上がるが,日本労働総同盟(総同盟)などの右派は当局の弾圧を利用して日本労働組合評議会(評議会)など共産系を排除して,26年3月に労働農民党(労農党)を結成した。結党後,左派の門戸開放運動がすすみ地方を中心に左派が党内に進出してくると,総同盟や官業労働総同盟など右派勢力の代表は同党を脱退し,安部磯雄,吉野作造,堀江帰一の呼びかけに応じるというかたちで,同年12月5日に社会民衆党を結成した。その方針は,現実主義,反共主義,合法主義の社会民主主義路線を旗印に,総同盟,官業労働総同盟,全日本農民組合総同盟などを主要基盤とし,委員長に安部磯雄,書記長に片山哲(1930年から赤松克麿)が就任した。同党は28年の初の普選による総選挙で片山,鈴木文治,西尾末広,亀井貫一郎を,30年選挙で西尾,片山を,32年選挙で安部,亀井,小池四郎を当選させ,組織的には左派や中間派無産政党に比較して安定していた。しかし,1931年に満州事変が勃発すると,全体としてその侵略を肯定して排外主義的性格を明らかにしたが,同党をより国家主義的に変質させようとする書記長の赤松派と社会民主主義的性格を維持しようとする安部・片山派が対立し,前者が敗れて離党すると,32年7月に中間派の全国労農大衆党と合同し社会大衆党となった。
執筆者:岡本 宏
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社会民主主義派(右派)の無産政党。労働農民党の共産派への門戸開放決議に反対した日本労働総同盟幹部の松岡駒吉(こまきち)、西尾末広(すえひろ)らが、労働農民党を脱退し、安部磯雄(いそお)、吉野作造(さくぞう)らの新党樹立の提唱にこたえて、1926年(大正15)12月5日結成した。委員長には安部、書記長には片山哲(てつ)が就任。反資本主義、反共産主義、反ファシズム(三反主義)を掲げ、総同盟、日本海員組合、官業労働総同盟など労働組合主義に基づく組織労働者を主たる支持基盤として、金融恐慌下の失業救済、田中義一(ぎいち)内閣下の対華出兵反対、浜口雄幸(おさち)内閣下の労働組合法制定運動など、穏健で漸進的な立場から社会運動を展開した。しかし、31年(昭和6)満州事変が開始されるや、中央委員会は満州事変支持を決議し、翌年4月には赤松克麿(かつまろ)、嶋中雄三(しまなかゆうぞう)らが国家社会主義を唱えて軍部に接近し脱党した。このような党内外での国家社会主義や日本主義運動の台頭に対抗するため、総同盟系統の松岡ら社会民主主義派は、32年7月23日に中間派の全国労農大衆党と合同して社会大衆党へと発展させた。1928年の第1回普通選挙には、安部(東京)、鈴木文治(ぶんじ)(大阪)、西尾(大阪)、亀井貫一郎(かめいかんいちろう)(福岡)らが当選。議会活動を重視し、戦前日本の無産政党のなかではもっとも多くの代議士を送り出した。
[塩田咲子]
『中村菊雄著『松岡駒吉伝』(1963・経済往来社)』▽『西尾末広著『大衆と共に』(1951・世界社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
大正末~昭和初期の無産政党。労働農民党の左傾化に反対し,日本労働総同盟を中心とする右派が脱党して1926年(大正15)12月5日に結成。委員長安部磯雄,書記長片山哲。合法的手段による資本主義の改革をめざし,第2次大戦前最大の労働組合である総同盟を基盤に,28年(昭和3)の総選挙で4人当選。満州事変を契機に赤松克麿書記長らの国家社会主義派が台頭したが,赤松派の脱党後,32年7月に全国労農大衆党と合同,社会大衆党を結成した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
… 労農党脱退派から二つの党が生まれた。総同盟主流派などは独立労働協会の安部磯雄,吉野作造らと12月,社会民衆党(社民党,委員長安部)を結成した。同党は日本の右翼社会民主主義政党の源流となったが,活動は概して低調であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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