神埼(市)(読み)かんざき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神埼(市)」の意味・わかりやすい解説

神埼(市)
かんざき

佐賀県東部にある市。2006年(平成18)、神埼郡神埼町、千代田町、脊振村(せふりむら)が合併、市制施行して成立。北部は脊振山地となり、福岡市早良(さわら)区と接する。中部、南部には佐賀平野が広がり、南端筑後(ちくご)川を挟んで福岡県久留米(くるめ)市と相対する。市域は縦長で、そこを脊振山地を源とする城原(じょうばる)川、田手(たで)川などが貫流する。中部の神埼町地区と東側に接する吉野ヶ里(よしのがり)町との境界に国特別史跡の吉野ヶ里遺跡がある。旧神埼町の地名は古代の郡、郷名からとられたもので、この地域は古くから開発されており、中世には皇室領荘園の神埼荘、近世には長崎街道の神埼宿が置かれていた。北部の脊振町地区には政所(まんどころ)の地名が残り、神埼庄が市域北部にまで及んでいたと推測される。南部の千代田町地区は、『肥前国風土記(ひぜんのくにふどき)』に記された部族海部直鳥(あまのあたいとり)ゆかりの地とされ、古代条里制の遺称地名も多く残る。

 中央をJR長崎本線と国道34号、その南側を264号が横断し、南北に走る385号と交わる。北部山間地では林業のほか、カキ、クリ、シイタケを生産し、野菜栽培や酪農も行われる。平野部とくに南部においては米作が盛んであるが、ミカン、野菜栽培、畜産などの複合経営がみられる。特産品に「神埼素麺(そうめん)」がある。ヤクルトなどの企業進出がみられ、東部工業団地も造成されている。また、近隣都市への通勤者も多い。九年庵(旧、伊丹(いたみ)氏別邸)庭園は国指定名勝、蘭医(らんい)伊東玄朴(いとうげんぼく)旧宅と伊勢塚古墳(いせづかこふん)は県指定史跡。高志(たかし)の狂言は国の選択無形民俗文化財。櫛田神社(くしだじんじゃ)神幸祭の太神楽(だいかぐら)と仁比山神社の御田舞(おんだまい)は県指定重要無形民俗文化財。脊振山周辺は脊振北山県立自然公園(せふりほくざんけんりつしぜんこうえん)となっている。そのほか、『次郎物語』の著者下村湖人(こじん)生家などがある。面積125.13平方キロメートル(境界一部未定)、人口3万1022(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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