(読み)アミ

デジタル大辞泉 「網」の意味・読み・例文・類語

あみ【網】

糸・縄・針金などを方形・ひし形に目を透かして編んで作ったもの。魚や鳥などを捕らえる道具焼き網、囲い、建具などに用いる。
捕らえたり、取り締まったりするために張りめぐらしたもの。「捜査にかかる」「法のをくぐる」
[下接語]揚繰あぐり網いわし受け網打瀬うたせ打ち網・追い網・置き網落とし網垣網かすみ金網かぶせ網救助網巾着きんちゃく小鳥網刺し網叉手さで敷き網地引き網すくい網底引き網そでたい台網高網き入れ網たたき網建て網建て切り網玉網たも坪網定置網手繰り網鳥網トロール網流し網投げ網張り網引き網袋網棒受け網捕虫網巻き網ます待ち網身網もち焼き網八つ手網・夜網・四つ手網
[類語]金網餅網捕中網鉄条網ネット

もう【網】[漢字項目]

常用漢字] [音]モウマウ)(呉) [訓]あみ
〈モウ〉
あみ。「網膜網羅漁網天網法網羅網
連絡がとれるように張りめぐらした組織。「通信網鉄道網
あみを打つ。「一網打尽
〈あみ〉「網戸網元霞網かすみあみ鳥網袋網
[難読]網代あじろ投網とあみ旋網まきあみ

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精選版 日本国語大辞典 「網」の意味・読み・例文・類語

あ【網】

  1. 〘 名詞 〙 「あみ」のこと。主として上代、中古に「網代(あじろ)」「網曳(あびき)」「網具(あご)」などのように、他の語と熟した形で使われた。
    1. [初出の実例]「大宮の内まで聞こゆ網引(あびき)すと網子(あご)調(ととの)ふる海人(あま)の呼び声」(出典:万葉集(8C後)三・二三八)

い【網】

  1. 〘 名詞 〙 ( 糸の意 ) くもの糸、くもの巣をいう。
    1. [初出の実例]「露にても命かけたる蜘蛛(くも)のゐに荒き風をば誰かふせがむ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
    2. 「蜘のいに手足を繋けられて更にはたらき得ざりけり」(出典:太平記(14C後)二三)

もうマウ【網】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 血管や神経繊維などの結合組織網状組織細網組織。叢。〔医語類聚(1872)〕
  3. 網目のように張りめぐらしたもの。「連絡網」「情報網
    1. [初出の実例]「国家全組織を一丸とした知識網であり」(出典:美学入門(1951)〈中井正一〉二)

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普及版 字通 「網」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

(旧字)
14画

(異体字)网
6画

[字音] モウ(マウ)・ボウ(バウ)
[字訓] あみ・とらえる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は罔(もう)。罔はの初文。その初文は网で、網の象形。鳥獣を捕る網のほか、すべて網目のものをいう。〔老子、七十三〕「天(くわいくわい)、疎(そ)なるも失はず」とあり、〔馬王堆帛書老子〕に「天罔」に作る。天網は自然の法網をいう。

[訓義]
1. あみ、あみする、むすぶ。
2. とらえる。
3. のり、世の秩序。

[古辞書の訓]
名義抄 アミ・イクモイ/四不網 ノアミ〔立〕 ノリ・モトム・タチマチ・ナハ

[語系]
(网・罔)miuangは同声。靡miai、末muatと声に通ずるところがあり、細靡のものをいう。綱に対して、細かい網目の意である。

[熟語]
網開・網眼・網魚・網巾・網罟・網戸・網・網糸・網師・網車・網城・網・網虫・網沈・網辟・網墨・網密・網目・網・網羅・網絡
[下接語]
科網・解網・寛網・挙網・魚網・禁網・刑網・憲網・厳網・罟網・綱網・細網・網・祝網・峻網・触網・塵網・世網・政網・繊網・疎網・網・俗網・蛛網・天網・湯網・法網・密網・羅網・猟網・漏網

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「網」の意味・わかりやすい解説


あみ

鳥獣や水産動植物などを捕獲、採集する目的で糸などの繊維を編んだもの。粗い茎皮繊維でつくった目の粗い網地は海女(あま)のスカリ(獲物入れ)や弁当入れ、砥石(といし)入れなどの袋状の容器類に用いられてきた。しかし網は魚や鳥をとる道具としてもっとも発達した。捕鳥法に用いられる網には、渡りの途中の小鳥や、ときにキジ、カモなどをとるため、鳥の通過する尾根などに渡すかすみ網、鳥がかかるとたるんで包んでしまう張切(はりきり)網、鳥が寄ってくると、速やかに引き起こしてかぶせとる無双(むそう)網、飛び立つ鳥をねらう叉手(さで)網、潜んでいる鳥にかぶせる投げ網、突き網などがある。現在、野鳥保護のためかすみ網などは法で禁じられているが、その珍しい仕掛けと野鳥の味が人気をよんで、使用する業者が跡を絶たない。

 網漁は、釣漁とともに漁法の中心をなしている。中世ことに室町末期ごろから、各種の網を使用した漁業が出現した。江戸期に入ると、都市の発達や農業技術の進展による肥料用の魚類の需要が高まり、漁業は急速に発達し、ことに網漁の発達は著しく、漁法のなかでも中心的な位置を占め、今日の基本的な網漁の祖型はほぼ出そろったと考えられる。また網漁は明治以後の綿糸紡績工業の発達によって著しく進歩し、さらに軽くて強靭(きょうじん)な化学繊維の出現は揚繰(あぐり)網などの規模をいっそう大きいものにした。

 漁網の種類は豊富であるが、使用形態から次のように分類できる。

(1)抄網(すくいあみ)類 枠で網の周囲を支え、魚類をすくい上げるもの。

(2)掩(かぶせ)網類 水上から魚類にかぶせるもの。投網はこの代表である。

(3)巻(旋)(まき)網類 おもに海の表層の魚群を囲み、船側に繰り寄せて捕獲するもの。巾着(きんちゃく)網や揚繰網はこの形の進歩したもの。

(4)引網(ひきあみ)類 魚群を包囲し、岸あるいは船に引き寄せて捕獲するもの。地引網船引網とに分かれ、船引網には浮(うき)引網と底引網の別がある。愛媛県宇和地方で行われるイワシ船引網は浮引網の一種であり、トロール漁は底引網の進歩したもの。

(5)敷(しき)網類 水中に網を敷き、その上に集まる魚群をすくい上げるもの。

(6)刺(さし)網類 魚その他の海棲動物を網目にかけて捕獲するもの。浮刺網底刺網の別がある。海の表層に張り、潮流に漂わせる流し網もこの類である。

(7)建(たて)網類 魚群の来遊する場所に網を定設して捕獲するもの。一般に定置(ていち)網とよばれる。長崎地方の大敷(おおしき)網、東北地方の太平洋岸の大謀(だいぼう)網、北海道地方の行成(ゆきなり)網など地方名が多い。

[野口武徳]

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改訂新版 世界大百科事典 「網」の意味・わかりやすい解説

網 (あみ)

糸を括(くく)り編んだ粗い目の編物で,魚や鳥,獣を捕らえるときなどに使う道具。縄,針金などを材料として作られることもある。語源は,〈編む〉の連用形の名詞化したものとする説や,〈粗目〉に由来するとする説などがある。日本の文献のうえで最初に出てくるのは《日本書紀》神代・下の歌謡で,〈片淵に 阿弥(あみ)張りわたし 目(め)ろ寄(よ)しに 寄し寄り来ね〉と載せている。考古学上,網の出土例の最古のものは,北欧の中石器時代にさかのぼる。日本では,縄文土器に網目の圧痕のある例が青森県是川遺跡や福島県小名浜などで発見されているほか,漁網の錘(おもり)とみられるものが,縄文時代早期の函館市梁川町遺跡の石錘を最古例として,その他にも多数発見されている。

 網の材料は,最初,蔦(つた),葛(かずら),藤の類が用いられ,やがて苧(からむし),麻に移り,明治になると欧米の漁網にならって綿糸の使用が始まり,現代ではナイロンなど化学繊維が使用されるようになった。

 網の手編は〈手結(す)き〉とか〈網結き〉という。網結きの道具としては,網針,網駒(網目板ともいう),目抜きなどがある。日本において機械編を発明したのは,東京の国友則重で1886年のことであった。以後,綿糸の使用など漸次発達し,編網機の種類も,本目(ほんめ)編,蛙股(かえるまた)編,無結節編,綟子(もじ)編の4種類にふえ,昭和50年代になると,世界の編網生産高の首位を占めるにいたった。

 網の用途は多岐にわたり,漁網,鳥猟網(霞網,張切網,無双網など),獣猟網(鹿網,兎網など)のほか,身近なものでは網袋,網戸,バックネット,ハンモックなどがある。
網漁業 →編物 →網猟
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デジタル大辞泉プラス 「網」の解説

松本清張の長編推理小説。1984年刊行。「黒の線刻画」シリーズの第1作。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【漁労文化】より

…餌を用意した(うけ)だとか,魚道を遮断して一方のかこいに誘導する(えり)や(やな)は,そのままの形では陸上の狩猟とは対比し難いかもしれないが,小鳥を捕らえるための仕掛け罠や,中型獣を誘いこむ檻(おり)等にその類似を見いだすことができる。 の使用は漁労文化史の中で特色のある技術革新であろう。それまでは竹や籐(とう)を使用していたものを,繊維製品におきかえた段階から漁労文化は独自の道を歩みはじめる。…

※「網」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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