摂家,清華家,大臣家につぐ公家(くげ)の家格の一つ。近衛中・少将を経て大・中納言,参議を昇りうる家。羽林とは,中国では漢代以来禁衛の称として用い,日本では近衛府の異称としたが,転じて近衛府を経て納言に至る家柄の称となった。この家格は平安時代末より漸次形成され,江戸時代にほぼ固定したが,時期により羽林家の数に出入りがある。そのおもなものをあげると,正親町・滋野井・姉小路・清水谷・河鰭(以上閑院庶流),中山・難波・飛鳥井・野宮・今城(以上花山院庶流),松木・持明院・東園・園(以上中御門庶流),四条・山科・油小路・鷲尾・櫛笥(以上四条流),水無瀬・冷泉等の藤原氏,六条・千種・久世(以上久我(こが)流)および庭田・綾小路の源氏諸家等で,幕末には40余家を数える。これらの中には,大・中納言となり,大臣に代わって節会等の朝儀を行うことがあるため,有職故実を家業とするものがあり,また装束,楽道等を家業とする家が多いのは,儀仗を任とする近衛府の職掌によるものであろう。
執筆者:米田 雄介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
摂家、清華家(せいがけ)、大臣家に次ぐ公家(くげ)の家格の一つ。近衛(このえ)少将、中将を経て参議、中納言(ちゅうなごん)、大納言に昇りうる家柄。羽林とは近衛府の唐名(とうみょう)であり、転じて近衛将から納言に昇る武官の家柄の称となった。平安時代から漸次形成され、江戸時代に家格として固定した。正親町(おおぎまち)、滋野井(しげのい)、清水谷(しみずだに)、小倉(おぐら)、四辻(よつつじ)、河鰭(かわばた)、阿野、橋本、梅園、中山、難波(なんば)、飛鳥井(あすかい)、松木(まつのき)(中御(なかみかど))、持明院(じみょういん)、園、冷泉(れいぜい)(上冷泉)、冷泉(下冷泉)、四条、山科(やましな)、西大路、鷲尾(わしのお)、油小路、水無瀬(みなせ)、庭田、綾小路(あやのこうじ)、六条の旧家(きゅうけ)と、旧家から分かれた約40家の新家(しんけ)があった。装束や楽道(がくどう)を家業とする家が多いのは、儀仗(ぎじょう)を任とする近衛府の職掌によるものであろう。明治の華族制度では多くが伯爵を授けられた。
[平井誠二]
『下橋敬長他著『幕末の宮廷』(1979・平凡社)』
摂家・清華(せいが)家・大臣家につぐ公家の家格。羽林とは,近衛府の唐名。近衛少将・中将をへて,中納言・大納言を極官とする。平安末~室町時代に家格が形成され,江戸時代に固定。幕末には40余家となった。おもな家には,正親町(おおぎまち)・滋野井(しげのい)・清水谷(しみずだに)・姉小路(あねがこうじ)・河鰭(かわばた)(以上閑院(かんいん)庶流),中山・難波(なんば)・飛鳥井(あすかい)(以上花山院庶流),持明院(じみょういん)・園(その)・松木(まつき)(以上中御門流),四条・油小路(あぶらこうじ)・鷲尾(わしのお)・山科(やましな)(以上四条流),水無瀬(みなせ)・冷泉(れいぜい)などの藤原氏諸家や,六条・千種(ちぐさ)・久世(くぜ)(以上久我(こが)家庶流),庭田・綾小路(あやのこうじ)などの源氏諸家がある。多くは1884年(明治17)に伯爵となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
※「羽林家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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