耐火物(読み)たいかぶつ(英語表記)refractories

日本大百科全書(ニッポニカ) 「耐火物」の意味・わかりやすい解説

耐火物
たいかぶつ
refractories
refractory material

窯炉の内張りその他過酷な加熱にさらされる場所に用いたときに、相当の高温に耐えることのできる材料をいう。高温というのは一般に1500℃以上である。JIS(ジス)(日本工業規格)では温度の下限をSK26(1580℃)とし、これ以上の耐火度を有するものを耐火物と規定している。

 工業の進歩に伴い、耐火物は単に耐火度ばかりではなく、高温における耐荷重能力、熱衝撃抵抗性、熱伝達性のほか、酸化および還元雰囲気、酸性および塩基性鉱滓(こうさい)、鉱滓粘着、鉱滓浸透、機械的摩耗に対する抵抗性、高温における電気抵抗性などが要求されている。

[素木洋一]

分類

耐火物は、(1)化学的鉱物学的、(2)耐火度、(3)製造様式、で分類できる。化学的鉱物学的には酸性、塩基性、中性の3群に分けるのが一般的である。製造様式からは、〔1〕成形れんがとブロック(電鋳耐火物、焼成耐火物、不焼成耐火物)、〔2〕不定形素地(スタンプ材、吹付けと塗抹材、鋳込み素地、モルタル類)、〔3〕天然石、に分類される。

[素木洋一]

耐火物の特性と用途

耐火物には重量物または粗粒からなる製品と、特殊作業に用いる微細粒子からなる製品とが入るが、一般には前者を耐火物に、後者をファインセラミックスに入れる。それぞれの鉱物を主成分としてつくられた耐火物の特性と主用途は次のようである。

[素木洋一]

珪石耐火物

1710℃の温度以内で1平方センチメートル当り3.5キログラムの荷重に耐えることができ、構造物としては1650℃まで安全に使用できる。その熔融(ようゆう)温度に至るまでは収縮を示さず、600~1700℃の範囲では熱衝撃抵抗性が大きい。製鋼炉の主体になる融剤および酸性鉱滓の侵食に対する抵抗性が大きく、摩耗に対する抵抗性も大きい。塩基性鉱滓およびフッ素には容易に侵食される。高温における熱伝導度が大きい。唯一の重大な欠点は600℃以下、十分に焼成されたものでは300℃以下の熱衝撃に敏感なことである。このような性質があるため、〔1〕製鋼用酸性平炉の壁、天井、炉底など、〔2〕コークス炉炉体、ガス発生炉など、〔3〕ガラス槽窯用と煙道、トンネル窯の台車用ブロック、などに利用される。

[素木洋一]

アルミノ珪酸塩耐火物

一般にシャモットれんがという。特性は、使用する粘土およびシャモットあるいはシャモットを置換する耐火原料の種類や性質に大きく左右される。日本ではその特性によって9種類に区分する。用途は非常に広く、高炉れんが、熱風炉れんが、コークス炉れんが、製鋼用必需材料、ガラスおよびほうろう工業用、交通工業用、金属熔解炉、徐冷窯、ガス発生炉、セメント焼成窯、陶磁器焼成窯、化学工業用炉、ガラス槽窯などに用いられている。

[素木洋一]

ムライト

1830℃までの高温に耐え、熔融鉱滓およびガラスに対する抵抗性が大きく、熱衝撃抵抗性に優れている。ガラス槽窯、バーナー・ブロック、フリット窯、セラミック焼成窯のセッター・タイル、電弧炉天井、その他用途は広い。

[素木洋一]

アルミナまたはコランダム

1900℃までは酸化と還元、鉱滓および機械的摩耗に対する抵抗性がきわめて大きく、高耐火性、荷重軟化抵抗性と熱伝達性が大きい。塩基性鉱滓に対する抵抗性があり、高温で電気抵抗が大きい。スポーリング、鉱滓の粘着および浸透に対する抵抗性は小さい。セラミックスおよびほうろう用の窯のマッフル、バーナー・ブロック、高温ガスまたは重油窯などに用いる。

[素木洋一]

安定化ジルコニア

酸性状態で2400℃まで使用できる酸性耐火物。高温での蒸発は小さい。熱衝撃抵抗性は良好。50~90%アルミナ、クロム、クロム‐マグネシアフォルステライト、マグネシアおよびシリカと接触していても1600℃までは安全。高アルミナ耐火物に対しては1550℃まで、ジルコン耐火物とは1900℃まで安全である。真空中、水素および窒素雰囲気中では約2200℃で分解する。高温度では電気抵抗は低い。酸化物の生成が避けられるならば酸性鉱滓の混じった金属の熔融に用いられる。継目なし炉体構築用、2000℃までのガス焼成窯用耐火物、バーナー・ブロック、ノズル、ガラス供給用ブロック、高温断熱材、1900℃で白金を熔融する高周波誘導炉、2315℃までの窒素固定装置などに使用される。

[素木洋一]

ジルコン

結晶の変態はなく、均一な熱膨張を示す。強酸化状態でない限り熔融金属に対する抵抗性は良好。ホウケイ(硼珪)酸ガラス、メタリン酸塩、塩化ソーダ、塩化ソーダ‐塩化亜鉛融剤、焦性リン酸カリ、五酸化リンに対して抵抗性をもつ。炭酸ソーダとフッ化ソーダ、蛍石、氷晶石、熔融硫酸バリウム、および焦性リン酸四ソーダに侵食される。熱衝撃抵抗性は良好。アルミニウム再熔融用炉、リン酸石灰肥料用炉、ガラス槽窯などに用いる。

[素木洋一]

セルジアン

高密度、低膨張、高衝撃強度、熔融アルミニウムおよびアルカリ蒸気に対しきわめて抵抗性の大きな高塩基性耐火物である。

[素木洋一]

炭素

高耐火性で容積安定性が良好、広範囲にわたって化学薬品に対して抵抗性があり、高温でも強度が大きく、熔融鉱滓または鉄に濡(ぬ)れず、熱伝導度は比較的高い。空気中では350℃以上で酸化し、水とは590℃以上、炭酸ガスとは700℃以上で反応する。熔鉱炉からのアルカリ性残渣(ざんさ)は815℃で炭素れんがを侵食し始める。炭素はブロックでは高炉炉床および朝顔に、れんがは熔鉱炉のスタックに使用される。槽につくったものは湯道に、また合金鉄炉に用いられる。そのほか、炭素管炉内で炭化タングステン焼結用のボートなどの用途がある。

[素木洋一]

炭化ケイ素

室温および高温における耐荷重性に著しく優れ、耐スポーリング性が大きく、熱伝達性がよく、還元、酸性鉱滓、鉱滓の粘着および浸透、機械的摩耗に対して抵抗性がある。耐火度が高く、800~1200℃の温度範囲以外では酸化しにくい。高温における電気抵抗は非常に小さい。そのうえ価格も適当であるため、各種窯炉材料のほかスラリー・ノズル、スプレー・ノズル、保護管、ワイヤー・ガイドなど多くの用途がある。

[素木洋一]

マグネシア耐火物

耐侵食性で、ときに非常に緻密(ちみつ)な組織の代表的な塩基性耐火物で、耐火度がきわめて高く、また熱伝導度が大きい。塩基性鉱滓に対しては抵抗性が非常に大きいが、シリカ含有量の多い鉱滓に対しては抵抗性は小さい。標準れんがはスポーリング抵抗性は悪いが、特殊な型で化学結合あるいはメタルケースにしたものは良好である。塩基性アーク炉と平炉の炉床および天井、製鋼炉の後壁、前壁、突当り壁に用いる。銅、錫(すず)、鉛、アンチモンの熔融炉および精澄炉の内張り、セメント回転炉、ガラス熔融窯、均熱炉の下部側壁に使用する。

[素木洋一]

ドロマイト耐火物

マグネシアよりも安価で、低気孔率、高耐圧強度、荷重軟化温度が高く、軟化温度範囲および容積安定範囲は広いが、熱衝撃抵抗性は非常に劣る塩基性耐火物である。平炉などに用いる。

[素木洋一]

クロム‐マグネシアおよびマグネシア‐クロム耐火物

高温における機械的強度と安定性が大きく、耐スポーリング抵抗性に卓越、塩基性鉱滓による侵食には大きな抵抗性をもつ。高温におけるねじりおよび引張りに対する抵抗性はマグネシアよりも強い。酸化鉄と接触するとバースティングの傾向をもつ。非鉄金属冶金(やきん)炉、転炉および反射熔融炉、全塩基性平炉などに使用される。

[素木洋一]

クロム耐火物

塩基性および中程度の酸性鉱滓および融剤に対する耐侵食抵抗性が大きい。一般的にみて塩基性鉱滓はクロムれんがに粘着しない。荷重軟化温度は比較的低く、熱衝撃抵抗性は小さい。塩基性平炉やマグネシアれんがと珪石れんがの中間積(づみ)に用い、製紙工業におけるソーダ塩回収炉に使用する。

[素木洋一]

『素木洋一著『築炉用セラミック材料』(1973・技報堂出版)』『日本規格協会編・刊『JISハンドブック 耐火物2003』(2003)』

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改訂新版 世界大百科事典 「耐火物」の意味・わかりやすい解説

耐火物 (たいかぶつ)
refractory

高温で溶融しにくく,高熱に耐えるものをいう。原材料を高温で加熱処理する工業は身近なところでも意外に多く,製鉄業をはじめとした冶金工業,セメント,ガラス,陶磁器などの窯業,機械工業,化学工業,ガス,電力,焼却炉など多種多様である。これら各種工業においては,窯炉の内部を高温に保って,必要な反応をさせるので,その内張りに多くの耐火物が使用される。したがって,耐火物は,(1)炉内の温度に耐えるだけの高い溶融軟化点をもつこと,(2)炉内の化学的・物理的反応条件にできるだけ長期間耐えること,(3)熱損失を小さくするために熱伝導率が低いこと,が必要である。

耐火物は一般に種々の鉱物から成っているので,純粋系のもののように一定の温度で溶融せずに,加熱によってある温度に達すると,その一部に融体ができはじめ,きわめて徐々に剛性を失って柔軟になり,温度上昇とともに液体が増加し,軟化変形を起こすようになる。この軟化変形の状態を標準のゼーゲルコーンと比較して,耐火度をゼーゲル番号SKで表している。耐火物の選定に際しては,まずこの耐火度を一つの目安として,使用温度と関連条件により必要とされる耐火度をもつものを選ばなければならない。

各種の窯炉において,耐火物の受ける作用は単に高熱にさらされるのみでなく,燃料の種類によっては,化学変化を起こしたり,炉内の内容物と化学変化を起こして,溶融しやすい新しい化合物を作ったり,また,ガスや溶融物,さらに固体の流動で浸食摩耗を受けたりして,耐火物の寿命を縮めてくる。これらの耐用性を決める耐火物の重要な性質として,(1)化学成分,(2)気孔率,吸水率,見かけ比重,かさ比重,(3)圧縮強さ,(4)荷重軟化(荷重下での加熱による軟化変形),(5)容積変化,(6)スポーリング(急激な温度変化などによる耐火物の剝落(はくらく),崩壊)などがあり,使用条件により必要な性状の製品を選択,使用することが大切である。

熱伝導率が低いことは,耐火物の鉱物組成と気孔率によって決められるが,耐火度とか耐用性の必要条件と両立しない場合が多いので,一般に窯炉の壁を複層構造にしている。すなわち,炉内側は耐用性を基準にした耐火物を使用し,その外側を必要に応じて耐火断熱材を用いて,熱損失を少なくする構造としている。使用条件によっては耐火断熱材のみの単層構造で用いられる場合もある。なお,一部に熱交換用耐火物とか,耐火物を通して間接加熱するマッフル炉などでは,逆に熱伝導率が高いほうがよい場合もあるが,一般的には熱を通さない性質が重要視される。

耐火物は一般に使用する原料名で呼ばれるが,その用途は複雑多岐にわたるので,種類も多く,各種の分類が行われている。まず化学的性質から,酸性耐火物,中性耐火物,塩基性耐火物に大別される。これは,高温で酸性の物質と塩基性の物質が互いに反応しやすい(たとえば,酸性耐火物はふつうの場合,塩基性のスラグや粉塵などと接触する所には使えない)という考えに基づいている。この分類法は使用原料による分類にも応用されるし,だいたいの傾向として,酸性度の高いものほど溶融したときの粘性が高いとか,熱膨張係数が小さいとかいうように,物性と関連性があるので,耐火物の性質を理解整理するうえにも有効である。酸性耐火物,中性耐火物,塩基性耐火物には次のようなものがある。(1)酸性耐火物 R2O型酸化物(SiO2,ZrO2など)を主体とする耐火物。ケイ石質,蠟石質,粘土質,ジルコン質,炭化ケイ素質など(炭化ケイ素質の耐火物はSiCを主体とするものであるが,酸化するとSiO2を生成する)。(2)中性耐火物 R2O3型酸化物(Al2O3,Cr2O3など)を主体とする耐火物。高アルミナ質,クロム質,スピネル質,炭素質など。(3)塩基性耐火物 RO型酸化物(MgO,CaOなど)を主体とする耐火物。ドロマイト質,マグネシア質,クロム-マグネシア質,フォルステライト質など。

 この分類法は耐火物の適用される用途を考える場合の基本になるので,たいへんに重要であり,酸性の材料を処理する場合は酸性耐火物を,塩基性の性質をもつ材料の加熱処理には塩基性耐火物を使用するのが一般的である。

 耐火物の物理的分類としては,形態などに注目した次のような分類がある。

(1)定形耐火物 一定の形状に成形された耐火物。耐火煉瓦耐火断熱煉瓦がある。

(2)不定形耐火物 一定の形状をもたない非成形耐火物で,施工時に形状が与えられる。キャスタブル耐火物プラスチック耐火物,吹付耐火物,ラミング耐火物,スリング耐火物,耐火モルタル,その他。

 従来,耐火物といえば耐火煉瓦を意味していたが,不定形耐火物の発達によって,両者を分類する必要が生じてきた。不定形耐火物については,主として施工方法によって種々の分類がなされている。耐火モルタルは煉瓦の目地材で,別の分類をすることもあるが,ふつうは不定形耐火物に入れられている。

 このほかの分類方法としては,製造工程の熱処理法による分類があり,溶融耐火物(電融鋳造煉瓦),焼成耐火物(一般の耐火煉瓦),不焼成耐火物(メタルケース煉瓦など)と分けることもある。なお,特殊なものとして,高機能性耐火材料としての炭化物,窒化物,ホウ化物,ベリリア,トリアなどがあり,徐々にその活用範囲を拡大している。これらの最近開発されたおもな特殊耐火物についての一覧を表に示す。
耐火煉瓦 →不定形耐火物

土器の製造が中石器時代(前5000年ころ)に始まり,前3000年ころにはガラスが,さらに前2500年ころには鉄が製造されるようになった。耐火物の使用は,火を用いるこれらの作業とともに,自然発生的に起こったものと推定される。その後,徐々にこれらの技術が発展するとともに,耐火物も進歩していくことになるが,本格的な発展は18世紀からの産業革命以降である。すなわち,製鉄技術の革新である木炭銑からコークス銑への移行がイギリスで起こり,大量生産が図られたことによって発展をとげた。ガラスや陶磁器もこのころにはいっそう発展している。そして19世紀に入って,ベッセマー転炉や平炉,電気炉による製鋼法が発明されて,製鉄業が飛躍的に発展し,近代産業の基礎を確立するに至り,また,これより少し前に,イギリスでポルトランドセメントが発明され,土木建築材料として脚光を浴びることとなった。この時期にはボイラーによる発電も行われるようになり,動力源が蒸気機関から電動機に代わって,工業の発展をいっそう促進することになった。このような高温工業の発展にともなって,必然的に耐火物工業も盛んになり,粘土質耐火物をはじめとして,ケイ石質,クロム質,マグネシア質,ドロマイト質などの各種耐火物がつぎつぎと開発された。

 一方日本では,弥生時代の青銅器,鉄器とともに耐火物が発見されており,前200-後300年ころのものと推定されている。しかし日本で耐火物の製造がはっきりと認められるのは,1850年代に大砲鋳造のために,洋式製鉄用反射炉の建造が各地で起こり,それらに用いる耐火煉瓦が必要となったときである。佐賀藩による日本最初の反射炉(1850),江川太郎左衛門による伊豆韮山の反射炉(1856)の建造は有名であるが,これらに使用された耐火煉瓦はいずれも蠟石質であった。その後,洋式高炉が1880年に釜石で操業を開始し,製鉄業の発展にともなって,耐火物も進歩することとなった。耐火物の原料として有名な愛知県尾張粘土は1880年に,岡山県三石蠟石は84年に発見され,それぞれ粘土質,蠟石質耐火物の製造に利用されている。また,ケイ石煉瓦は91年に三河ケイ石を用いて製造が開始された。そして,1900年セメント用ロータリーキルンの建設,01年官営八幡製鉄所の稼働,05年大型ガラス窯の建設があり,これらに必要な耐火物を製造するために各地に耐火物工場が建設され,工業としての体制が確立され,第1次世界大戦でいっそうの発展をみる。原料的には,国内の開発に引き続いて,中国の復州粘土,バン土ケツ岩,大連ケイ石,マグネサイト鉱などが発見され,常用されていった。第2次世界大戦後は欧米の技術導入によって,鉄鋼業とともに飛躍期を迎え,現在では世界最高水準といわれるところまで発展した。
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百科事典マイペディア 「耐火物」の意味・わかりやすい解説

耐火物【たいかぶつ】

主として工業用の各種窯炉の内張りに使用される無機質材料をいう。炉内の高温に耐えうる高い溶融軟化点をもつこと,炉内の化学的・物理的反応に長期間耐えうること,熱伝導率が低いことが必要とされる。原料組成により,二酸化ケイ(珪)素を主成分とする酸性耐火物,酸化アルミニウム,酸化クロム(Cr2O3)を主成分とする中性耐火物,酸化マグネシウム酸化カルシウムを主成分とする塩基性耐火物に分類。近年,不定形耐火物の発達が著しい。→耐火度
→関連項目耐火煉瓦

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化学辞典 第2版 「耐火物」の解説

耐火物
タイカブツ
refractories

築炉で高温に使用するのに適した非金属材料をいう.もともとは高温に耐えることであるが,摩耗,圧力,化学的侵食,および温度の急変という破壊的な作用のいずれかに耐えることが要求されている.日本工業規格では,SK26以上の耐火度を有するものを耐火物と規定している.その種類はきわめて多いが,もっとも一般的なものは,シャモットれんが,高アルミナれんが,けい石れんが,塩基性れんが(クロムマグネシアれんが,フォルステライトれんがドロマイトれんがマグネシアれんが),断熱れんが,炭化ケイ素,炭化物,窒化物,ケイ化物,高耐火酸化物(アルミナ,ジルコニア,スピネルジルコン,マグネシア,ベリリア,トリア,ムライト),炭素,サーメットなどである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

岩石学辞典 「耐火物」の解説

耐火物

窯業,冶金,一般化学工業,電気,ガスなど高温を必要とする工業で,高温を発生させる炉とその炉材に用いられる軟化点・融点が高く,化学変化を起こしにくい条件を供えた材料[片山ほか : 1970].天然に産出する物質で,高温の過程で行われる熱および化学反応の影響に耐えることのできるものをいう.これらは次のように区分される[Boswell : 1918].(a) 酸性耐火物:耐火粘土,ガニスター(ganister),砂など,(b) 中性耐火物:クロム鉄鉱,黒鉛など,(c) 塩基性耐火物:ボーキサイト,マグネサイトなど.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「耐火物」の意味・わかりやすい解説

耐火物
たいかぶつ
refractory material

鉄,銅などの精錬や窯業その他高熱操作を必要とする諸工業で,高熱窯炉を築くのに必要な耐熱性材料をいう。一般にゼーゲルコーン 26番 (1580℃の耐火度) ,アメリカではオルトンコーン 19番 (1520℃の耐火度) の温度以上に耐えるもの。建築物の火災 (1100~1150℃が最高) に耐える耐火材料とは異なる。耐火物は煉瓦とこれを接合する耐火モルタルより成る。代表的なものはケイ質,シャモット質,クロム質,カーボランダム質,マグネシア質など。

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世界大百科事典(旧版)内の耐火物の言及

【荷重軟化】より

…耐火物が加圧下で熱せられるときに軟化変形する現象で,耐火物の重要な性質の一つである。耐火度は自重のみがかかった状態での軟化温度を示すものであるが,実際に耐火物が使用される窯炉においては,荷重がかけられた状態にある。…

※「耐火物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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