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自由エネルギー じゆうエネルギーfree energy

翻訳|free energy

デジタル大辞泉の解説

じゆう‐エネルギー〔ジイウ‐〕【自由エネルギー】

熱力学的な状態を表す量の一。物質または系のもつ内部エネルギーのうち、仕事に変わりうるエネルギーを意味し、内部エネルギーからその絶対温度エントロピーとの積を引いたものとして表される。ヘルムホルツの自由エネルギー。→ギブスの自由エネルギー

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百科事典マイペディアの解説

自由エネルギー【じゆうエネルギー】

物体の内部エネルギーをE,絶対温度をT,エントロピーをSとするとき,F=E−TSをヘルムホルツの自由エネルギーまたは単に自由エネルギーといい,さらに物体の圧力をp,体積をVとするとき,G=F+pV=E−TS+pVをギブズの自由エネルギーまたは熱力学的ポテンシャルという。
→関連項目熱力学

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栄養・生化学辞典の解説

自由エネルギー

 化学変化にともなって発生するエネルギーのうち仕事に使えるエネルギー.

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世界大百科事典 第2版の解説

じゆうエネルギー【自由エネルギー free energy】

物質の熱力学的な性質を規定する関数(状態量)の一つ。ヘルムホルツの自由エネルギーとギブズの自由エネルギーの2種類があり,一般に系の変化は自由エネルギーの減少する方向にのみ進み,熱平衡状態はこれが極小となるとき実現する。
[ヘルムホルツの自由エネルギー]
 ヘルムホルツの自由エネルギーFは,内部エネルギーUエントロピーS,絶対温度Tを用いて,FUTSによって定義される。外部に対して仕事をするとき,熱の出入りがなければ,その仕事は内部エネルギーの減少分に等しいが,実際には熱の出入りが伴い,温度一定の下で仕事をする場合には,外部に仕事をすることによって下がる温度を補うため,外部から熱が流入する。

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大辞林 第三版の解説

じゆうエネルギー【自由エネルギー】

系の内部エネルギーのうち、自由に仕事に変えられるエネルギー。体積一定の場合をヘルムホルツ自由エネルギー、圧力一定の場合をギプス自由エネルギーという。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自由エネルギー
じゆうえねるぎー

物体(熱力学的な体系、以下単に「体系」とよぶ)のもつ内部的なエネルギーの一種で、物体が一定の温度に保たれたまま(等温過程)で、外部に仕事として取り出し可能なエネルギーを自由エネルギーとよんでいる。もちろん物体全体の並進や回転運動のエネルギーは除かれている。正確にはヘルムホルツの自由エネルギーというが、以下しばらくは単に自由エネルギーと称する。[小野郎]

断熱過程と等温過程

気体は膨張するときに、外部に仕事をすることができる。この過程が熱の出し入れなしに行われたときは(断熱過程)、気体のもつ内部エネルギーは、外部に仕事をした分だけ失われる。このとき、気体の温度も一般に低下する。一方、熱の出入りが許されたとき(非断熱的)、外部から自然に熱が流れ込み、失った内部エネルギーが補われる。とくに、希薄気体(理想気体)を一定の温度に保ったときは(等温過程)、外部に仕事した分、減少した内部エネルギーは、流れ込んだ熱量で完全に補われ、結局内部エネルギーは一定に保たれる。この点、ばねの伸縮による弾性エネルギーとは異なっている。一方、自由エネルギーは等温過程で膨張したとき、外部に仕事をした分だけ失われ、逆に圧縮されるとき、外部からもらった仕事の分だけ増加する。[小野郎]

内部エネルギー

熱力学第一法則に従うと、物体の内部エネルギーUの増加ΔUは一般に外部からもらった熱ΔQと外部からもらった仕事ΔWの和であり、
  ΔUΔQΔW  (1)
と表される。これらの量は正負の符号をもつ。ΔUが正なら内部エネルギーの増加、負ならば減少を表す。ΔQは正ならもらった熱、負ならば出した熱である。同様に、ΔWが正ならば外部からもらった仕事、負ならば外部へした仕事になる。気体の場合、ゆっくりと(可逆的に)ΔVだけ膨張したときは(ΔV>0)、気体の圧力をpとすれば、外部へpΔVの仕事をする。外部へした仕事は負の量だから、ΔW=-pΔVと表され、(1)式は
  ΔUΔQpΔV  (2)
となる。断熱過程では、熱の出入りはなくΔQ=0であるから、内部エネルギーはpΔVだけ減少することがわかる。
 一方、希薄な気体(理想気体)の内部エネルギーはその温度Tのみに依存して、体積Vにはよらないことが、実験的に示されている。したがって、気体の等温過程では、つねにΔU=0となるから、外部からもらった熱ΔQは外部へした仕事pΔVと等しいことが(2)式を用いて示される。気体が等温的に膨張し、外部に仕事をしても、内部エネルギーは減少しないことがわかった。[小野郎]

ヘルムホルツの自由エネルギー

自由エネルギーF
  FUTS  (3)
のように定義される。ここで、Tは物体の絶対温度、Sはそのエントロピーである。等温過程では温度Tが一定であるので、自由エネルギーの変化ΔFは(3)式より
  ΔFΔUTΔS  (4)
(2)式を用いて、さらに、熱の出入りがゆっくりと可逆的に行われたとき、エントロピーの増加はΔSΔQ/Tで与えられるので、
  ΔFΔQpΔVTΔS
    =-pΔV  (5)
となる。したがって、等温可逆過程では、自由エネルギーの変化ΔFは-pΔV、つまり外部から圧縮(ΔV<0)によってもらった仕事量だけ増加し、膨張(ΔV>0)によって外部にした仕事量だけ減少することが証明される。
 一般に物体を等温に保ちながら、熱力学的変化をおこさせ、外部と可逆的に仕事のやりとりがあったとき、それに見合った物体のエネルギーの変化は自由エネルギーの変化であり、内部エネルギーの変化ではない。一方、物体と外部が断熱されているときは、内部エネルギーの変化になる。[小野郎]

熱力学関係式

一般に物体の温度も体積も微小変化をしたときの自由エネルギーの微小変化を考えよう。以下では、微小変化をdと表す。(3)式とdQTdSを用いて
  dFdUd(TS)
   =dQpdVTdSSdT
   =-pdVSdT  (6)
となる。Sは正であるから、温度が上昇すると、自由エネルギーは減少することがわかる。dT=0とすると、(6)式より物体の圧力p

と計算することができる。FT,Vの関数として与えられているとき、(7)式はpTVの間の関係式で、物体の状態方程式を与える。ここで、( )Tは温度Tが一定で、もう一つの変数で偏微分することを表している。また、エントロピーSdV=0と置いて、

と求めることができる。さらに、定積熱容量CVSを用いて

で与えられる。ほかに、定圧熱容量、膨張率、圧縮率など、必要な熱力学的な量はすべて計算することができる。
 熱統計力学で定義されている絶対温度Tの体系の状態和または分配関数をZと書けば、自由エネルギーはF=-kTlogZと表すことができる。ここで、kはボルツマン定数である。したがって、分配関数をTVの関数として得られれば、自由エネルギーも求めることができることになる。[小野郎]

熱体系の変化の方向

エントロピーの意義の一つは熱体系全体の変化の進む方向を決めることである。たとえば、高温と低温の物体を接触させたとき、高温の物体から低温の物体に熱が流れ、やがて両物体が同じ温度の熱平衡になってしまう。このとき全体系のエントロピーは増大する。これは孤立系で一般に成り立つ「エントロピー増大則」の一例である。この逆の過程は自然にはおこることはないので、系の変化の方向が決まる。
 温度が一定に保たれていても、系は変化することがある。このとき自由エネルギーは減少する。一例をあげる。一定の温度に保たれ、間仕切り壁のある容器の左と右側に入れられた二つの気体がある。その気体の圧力が異なるとき、間の壁が可動なら、圧力の高い気体の体積が膨張し、圧力の低い気体の体積が減少するように壁が動き、やがて両気体の圧力が同じになるように自然に変化する。このような等温非可逆過程で、変化後の熱平衡になったときの全自由エネルギーは変化前に比べて低くなることが示される。温度が一定に保たれているとき、自由エネルギーが最小となる状態が、一般に熱平衡状態であるということができる。[小野郎]

ギブスの自由エネルギー

もう一つの自由エネルギーはギブスの自由エネルギーGである。Gは熱力学ポテンシャルとよばれることもある。その定義は、ヘルムホルツの自由エネルギーにpVを加えた
  GFpV
   =UTSpV  (9)
である。ここで、pは圧力を表している。Gの微小変化dGは(6)式を用いると
  dGdFd(pV)
   =-SdTpdVpdVVdp
   =-SdTVdp  (10)
GTpの関数で表したとき、この式から、等圧変化(dp=0)では、温度の上昇はギブスの自由エネルギーを減少させる。また等温変化(dT=0)で圧力を増加させることは、このエネルギーを増加させることがわかる。しかし、外部への仕事と直接に関係づけられるわけではない。この式から得られる熱力学関係式はdT=0と置くことにより、

また、(10)式からdp=0と置いて、エントロピー

が得られる。(11)式は(7)式と同等な状態方程式であり、(12)式は(8)式と同じSを与える関係式であるが、独立変数がT,VからT,pにかわっている。[小野郎]

化学ポテンシャル

ギブスの自由エネルギーGから直接得られる重要な熱力学量は化学ポテンシャルμ(ミュー)である。均質な体系の場合は、そのモル数をNとして
  μ(T,p)=G/N  (13)
で定義される。化学ポテンシャルμは1モル当りのギブスの自由エネルギーであり、温度Tと圧力pの関数で表される。μは温度、圧力、密度と同じように物体の量によらない熱力学変数である。これを示強変数とよぶ。一方、物体の量に比例する熱力学変数を示量変数とよぶ。たとえば、体積V、内部エネルギーU、両自由エネルギーFGなどがある。
 温度と圧力が指定されたとき、ギブスの自由エネルギーは熱平衡状態で最小値をとり、非平衡状態での値と比べるとつねに小さい。つまり、等温かつ等圧では、非平衡状態はGが小さくなる方向へ変化していくことになる。たとえば、相転移で、二つのA、B相(たとえば液相と気相)が接しているとき、各相での化学ポテンシャルをそれぞれμA,μB、各相のモル数をNA,NBとすれば、全体のギブスの自由エネルギーは
  GμANAμBNB
と表される。各相のモル数の微小変化をそれぞれdNA,dNBとすれば、Gの微小変化dG
  dGμAdNAμBdNB
   =(μAμB)dNA  (14)
と与えられる。第1式から第2式へは、たとえば、水と水蒸気のように、相が変わっても、化学組成が変わらなければ、全体のモル数は変わらないので、
  dNA=-dNB  (15)
が成り立つからである。μAμBのときは、dNA<0(当然dNB>0)でdGは負となり、Gは減少することになる。つまり、A相のモル数は減少しB相は増加する。一般に、一定の温度かつ一定の圧力下で、2相が接しているとき、化学ポテンシャルの高い相から低い相へ物質は移動する。これにより、全体のギブス自由エネルギーは減少する。μAμBのとき、つまり両相の化学ポテンシャルが等しいときは、両相は共存して、両相の量は任意にとることができる。つまり全体のギブス自由エネルギーは両相の量にはよらず一定である。[小野郎]
 なお、化学においてはヘルムホルツの自由エネルギーと、ギブスの自由エネルギーとがある。一定温度、一定圧下での反応系のギブスの自由エネルギーGは、原系から生成系へと自然に反応が進行する場合にはしだいに減少し、反応系が平衡に達したときには極小になるという性質をもった特性関数であるから、化学反応が進むかどうかを判断する化学親和力の目安となる。
  GHTS
で定義され、熱力学的ポテンシャルまたは定圧自由エネルギーともよばれる(Hは熱含量)。また一定温度、一定容積下での反応系ではヘルムホルツの自由エネルギーFが、原系から生成系へと自然に反応が進む場合にはしだいに減少し、平衡に達したときには極小になる。[戸田源治郎]
『渡辺啓著『エントロピーから化学ポテンシャルまで』(1997・裳華房)』

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