平安後期の歌学書。著者は藤原清輔(きよすけ)。「袋草紙」と通称される上巻と、「和歌合(あわせ)次第」または「袋草紙遺編」と称される下巻がある。成立は、上巻が1157年(保元2)か翌58年、引き続き下巻が成った。内容は、上巻が和歌会における細かな作法や故実、『万葉集』以下歴代の勅撰(ちょくせん)集の諸事情や問題点の紹介、歌人の逸話を収める「雑談」、神仏の歌や誦文(しょうもん)歌を集める「希代(きたい)和歌」からなる。下巻は、歌合(うたあわせ)の進行や撰者・判者の故実を論ずる「和歌合次第」、歌合における難陳(なんちん)・難判の例をあげる「古今歌合難」、和歌に対する非難の先例を集めた「故人和歌難」からなる。貴重な和歌研究資料であり、和歌説話集の先駆けともなり、和歌故実の百科全書といえよう。
[藤岡忠美]
『小沢正夫他校注『袋草紙注釈』上下(1976・塙書房)』▽『藤岡忠美他著『袋草紙考証 歌学篇』(1983・和泉書院)』
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