西尾(市)(読み)にしお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西尾(市)」の意味・わかりやすい解説

西尾(市)
にしお

愛知県中南部矢作(やはぎ)川左岸にある市。南部は三河湾に臨み、沖合いに湾内最大の佐久(さく)島が浮かぶ。1953年(昭和28)市制施行。1954年平坂(へいさか)、寺津の2町と室場(むろば)、福地の2村、1955年三和(みわ)村、明治村の一部を編入。2011年(平成23)幡豆(はず)郡一色(いっしき)、吉良(きら)、幡豆の3町を編入。名古屋鉄道西尾線、同蒲郡(がまごおり)線、国道23号、247号が通じ、西三河南部の中心都市。江戸時代は岡崎、吉田(現、豊橋市)とともに三河三都といわれた。地名は「煮塩」から転化したといわれる。中世は足利(あしかが)氏の所領、1764年(明和1)以降は松平氏5代105年間続く西尾藩6万石の西三河最大の城下町。平坂は西尾藩の外港で、矢作川の舟運の結節点、三河五箇所湊の一つとして栄えた。明治以降東海道本線から外れたために商況は停滞した。三河木綿などの繊維工業、鋳物工業が中心であったが、近年では自動車関連の輸送機器工業が発展している。苗木栽培や洋ランの生産が盛んで、碾茶(てんちゃ)生産は日本有数である。三河湾に面した南部は三河湾国定公園の一部で、海水浴場や温泉(吉良温泉)があり、観光拠点となっている。また、漁業ノリ養殖も盛ん。御殿万歳(三河万歳)(国指定重要無形民俗文化財)の発祥地で、伝統の祭りとしててんてこ祭、かぎ万灯祭が伝承されている。別称雲母(きらら)山の八ツ面山麓(やつおもてさんろく)の久麻久神社(くまくじんじゃ)本殿は国の重要文化財、神明社の大シイは国の天然記念物である。市立図書館岩瀬文庫があり、国の重要文化財に指定されている後奈良天皇宸翰(しんかん)般若心経(はんにゃしんぎょう)を所蔵する。吉良町地区は吉良氏関連の史跡も多く、金蓮寺(こんれんじ)の弥陀(みだ)堂は国宝。面積161.22平方キロメートル、人口16万9046(2020)。

[伊藤郷平]

『『西尾市史』全6巻(1973~1983・西尾市)』


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