翻訳|assay
鉱石や合金の定量分析をいう。鉱石の利用可能性を調べることと,金属製品の品質を検定することの二つの機能がある。ふつうの化学分析との明確な区別はないが,比較的簡便な迅速分析をさすことが多く,その方法には試料を溶液にして行う湿式法と加熱溶融による乾式法とがある。狭義には乾式法による貴金属の定量分析のみをさす。
試金は,古代オリエントの金細工師が,金を精製して用いるようになるとまもなく始まったようである。前14世紀のアマルナ文書には試金に関する記事があり,《旧約聖書》にも金銀の精錬や試金が数多く言及されている。金の精製技術と試金法の確立は,やがて金属貨幣の生まれる基礎となった。近代ヨーロッパにおいて冶金術が発展すると,《試金小書》(著者不詳,1510ころ)やL.エルカーの《鉱石と試金の書》(1574)など,もっぱら試金法を扱った書物が出版された。そこに詳述された方法は現在行われているものとほとんど異ならない。金銀を卑金属から分離する方法として,最も古く,また最も効果的なのは灰吹(はいふき)法(詳細は〈金〉の項目を参照)で,この方法でえられた金銀合金から金と銀を分離するには,合金を熱硝酸で処理する。銀は硝酸に溶解し,金は溶けずに残るので,残った金を秤量(ひようりよう)し,最初の重量と比較して金銀の含有量を求めることができる。
以上のほか,試金石touchstoneも古代から利用された。試金石には黒色で緻密(ちみつ)な玄武岩やチャートが用いられ,それに試料をこすりつけて,その条痕色と標準品の条痕色とを比較して金の純度を知るのである。各種の化学分析法の発達した現代では,試金は化学の一応用分野にすぎないが,近代化学の誕生以前においては,試金は定量的方法を追求した化学的技術として,大きな意味をもったといえよう。
執筆者:内田 正夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】鉱石,材料などの金属成分を迅速に定量すること.【Ⅱ】主として金,銀を含む鉱石を高温で処理分析する方法のこと.原理は,金,銀を含む鉱石を鉛とともに融解して還元し,鉛中に金銀を溶解させ,ついで鉛を酸化して金銀のみを金属としてはかり,さらに硝酸で銀のみを溶解して金を残留させひょう量する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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