翻訳|fermium
アクチノイドに属する人工放射性元素の一つ。原子番号100、元素記号Fm。98番元素カリホルニウムの合成(1950)に引き続き、高密度中性子束照射、重原子イオン衝撃などの方法による99番、100番元素の合成が試みられ、それらはのちに成功したが、最初に生成が確認されたのは1952年の太平洋エニウェトク環礁での水爆実験においてであった。軍事上の理由からその科学的報告は99番元素アインスタイニウムとともに1954年まで延期された。原子力エネルギー開発に貢献した物理学者のフェルミを記念して命名された。水溶液中ではアクチノイドに典型的な3価陽イオンになる。
[岩本振武]
周期表第ⅢA族に属し,アクチノイド元素の一つ。1952年11月太平洋で行われた熱核爆発実験によって生じた灰の中からアインスタイニウムとともに発見され,53年1月イオン交換樹脂によって分離されて,100番元素であることが確認された。発見に寄与したのは,アメリカのギオーソA.Ghiorso(1915- )ら多くの人々で,イタリアの物理学者E.フェルミにちなんで命名された。熱核爆発実験で生成する反応は,非常に大きな中性子束の中で起こった多段階の中性子捕獲で238Uが255Uとなり,引き続いてβ崩壊を繰り返して255Fmを生じたものと考えられる。
それ以後発見された同位体には250から256までのものがある。このうち254Fmは半減期3.24時間でα崩壊する。これまで得られた量がきわめて少なく,トレーサースケールの研究がなされているのみで,元素の物理的・化学的性質はほとんど知られていない。水溶液中では3価イオンが普通である。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Fm.原子番号100の元素.電子配置[Rn]5f 127s2の周期表3族アクチノイド元素.8番目に発見された超ウラン元素.E. Fermi(フェルミ)の死去1年後の1955年に発見が発表され,かれの名前にちなんで命名された.1952年12月,カリフォルニア大学バークレー校のA. Ghiorsoらとアルゴンヌ国立研究所,ロスアラモス国立研究所グループの共同作業により,同年11月のエニウェトク環礁における最初の水爆実験の残分中から半減期20 h の 255Fm が確認された.このときの生成過程は 238U の逐次中性子吸収とβ崩壊鎖である.この発見が軍事上の機密として発表されないまま,1953年,スウェーデンのストックホルムのノーベル研究所で,238U を 16O で衝撃して半減期30 min でα崩壊する質量数250の核種の合成に成功した.Puなどからの高中性子束原子炉中での逐次中性子吸収で得られる.融点1527 ℃ の金属.第一イオン化エネルギー640.5 kJ mol-1(6.64 eV).酸化数2~4.現在,知られている同位体核種は,242~260の範囲に19種.質量数257のα崩壊核種がもっとも長寿命で半減期100.5 d.250Fm は102番元素ノーベリウム254No のα崩壊生成物として,ノーベリウムの確認に役立った.[CAS 7440-72-4]
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