通志(読み)ツウシ(英語表記)Tōng zhì

デジタル大辞泉 「通志」の意味・読み・例文・類語

つうし【通志】

中国歴史書九通の一。全200巻。三皇時代からまでの紀伝体通史で、鄭樵ていしょう撰。1161年ごろ成立。

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精選版 日本国語大辞典 「通志」の意味・読み・例文・類語

つう‐し【通志】

[1] 〘名〙 志を通わせること。共感を寄せること。
俳諧・遅八刻(1771)「仙府は冬至庵・是非庵をはじめ蕉門通志の連中も多し」
[2] 中国の史書。二〇〇巻。三通の一つ。南宋鄭樵(ていしょう)撰。紹興年間(一一三一‐六二)成立。上古の三皇から隋までの紀伝体の通史。帝紀一八巻・皇后列伝二巻・年譜四巻・略五二巻・列伝一二四巻からなる。正史の「志」に当たる「略」は唐代までの二〇略を記載。氏族・都邑・器服などの項目を立て独創性に富み、地理や芸文に注目すべき議論がある。唐の杜佑(とゆう)の「通典(つてん)」、元の馬端臨(ばたんりん)の「文献通考」とともに三通と称せられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「通志」の意味・わかりやすい解説

通志 (つうし)
Tōng zhì

博学をもってきこえた中国,南宋の鄭樵(ていしよう)(1104-62)の著。後世,唐の杜佑(とゆう)の《通典(つてん)》,元の馬端臨の《文献通考》とあわせて〈三通〉とよばれ,政書に分類されることが多い。だがその総序で《史記》をほめ《漢書》をおとしめていることからも明らかなように,断代史ではない通史を著そうというのが鄭樵の目的であった。本紀18巻,后妃伝2巻,年譜4巻,略52巻,列伝124巻,あわせて200巻。本紀と列伝は旧来の正史の記事を簡略にまとめ,年譜は正史の〈表〉に相当する。もっとも特色が示されるのは正史の〈志〉に相当する略の部分であって,あわせて20略をかぞえ,それらのなかには唐の劉知幾の《史通》の意見にもとづくところの〈氏族略〉〈都邑略〉〈草木昆虫略〉,文字学,音韻学に関する〈六書略〉〈七音略〉,目録学として創見に富む〈校讐(こうしゆう)略〉など,旧来の〈志〉にはないあらたな項目が設けられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「通志」の意味・わかりやすい解説

通志
つうし

中国の歴史書。宋(そう)の鄭樵(ていしょう)が1161年に著した。200巻。『通典(つてん)』『文献通考』とともに三通といわれ、また『続通考』などとともに九通の一つに加えられている。鄭樵は唐の劉知機(りゅうちき)とならぶ史論家で、王朝ごとの断代史でなく通史を書くことが歴史の本命と考え、事項本位に歴史の流れを書いた二十略を本書に収めている。主観を重んじた宋代の学風を表しており、清(しん)朝の章学誠(しょうがくせい)がこの史論の価値を高く評価して注目されてきた。

[斯波義信]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「通志」の意味・わかりやすい解説

通志
つうし
Tong-zhi; T`ung-chih

中国,南宋の鄭樵 (ていしょう) が紹興 31 (1161) 年に著わした紀伝体の歴史書。 200巻。帝紀 18巻,皇后列伝2巻,年譜4巻,略 51巻,列伝 125巻から成る。冒頭の総序にいうとおり,歴史は通史を主とすべきであるとして,一王朝だけを叙述の対象とする断代史を退け,帝紀,列伝,年譜は上古から隋まで,正史の志にあたる略は上古までを叙述している。著者は略に最も力を入れ,注目すべき議論がみられる。

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世界大百科事典(旧版)内の通志の言及

【九通】より

…中国,書名に通の字を持つ9種類の制度中心の百科全書集。唐の杜佑(とゆう)の《通典(つてん)》,宋の鄭樵の《通志》,元の馬端臨の《文献通考》は,性格は違うが歴代の制度沿革を知るに有用な書で三通と呼ばれてきた。清の乾隆帝は1747年(乾隆12),67年にそれぞれ〈皇朝〉と〈欽定続〉の名を冠した《文献通考》《通典》《通志》6種を勅撰,これらが一括して九通といわれるが,実録,会典などにくらべ,二次史料的でかつ膨大なため,あまり使われない。…

※「通志」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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