逸民(読み)いつみん

精選版 日本国語大辞典「逸民」の解説

いつ‐みん【逸民】

〘名〙
① 俗世間を離れて、隠れ住む人。
※済北集(1346頃か)二・秋日「却歓朝野多休暇。盛世歌謡属逸民」 〔論語‐微子〕
② 善良な民。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 気ままな生活を楽しんでいる人。
※譬喩尽(1786)一「佚民(イツミン)とは遊民をいふ」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「主人も寒月も迷亭も太平の逸民で」

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世界大百科事典 第2版「逸民」の解説

いつみん【逸民 yì mín】

中国の隠者。知識階級に属しながら政治の世界を俗として仕官せず,民間に隠れて高潔に生きる人々で,隠逸,高逸,高士などともよばれる。聖天子に招かれても,これをけがらわしいとした許由(きよゆう)や,周の武王の治世でもそのをくらわなかった伯夷(はくい)・叔斉(しゆくせい)などが,その典型とされる。生活態度は道家に近いが,儒家でも《論語》には〈に道なければ〉隠遁する人を〈君子〉として評価しており,民の声を示す暗黙の批判者として逸民を容認し尊重することが,為政者の務めとされる。

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世界大百科事典内の逸民の言及

【道家】より

… 道家は,その源が戦国の乱世それ自体,すなわちこの一大社会変革の生み出す政治への不信ないし生の不安にあり,それらを理論的に解決して人々に慰めを与えるものだったので,当時の失意の士大夫の間に多数の支持者を得たのみならず,今日まで同様の時代・類似の境遇の人々に広範に信奉されてきた。その先駆は《論語》にいう逸民であるかもしれぬが,直接には戦国中~後期の(1)個人の生命の充実を重んじた楊朱,子華子,詹何(せんか),(2)寡欲に徹し闘争の否定を唱えた宋牼(そうけい),尹文(いんぶん),(3)道徳的先入観からの脱却を説いた田駢(でんへん),慎到,(4)総体としての世界の〈実〉に依拠して,あれとこれとの区別である〈名〉(概念,判断)を軽視した恵施(けいし)などであり,その成立と展開は《荘子》《老子》《淮南子》などによって最もよく知りうる。前3世紀初め,自我の撥無(はつむ)によって一の無たる世界に融即せよ,それこそが道をとらえた聖人の主体性だからとする万物斉同の哲学に始まり,そのように世界を統御しつつ同時にそこから超出して自由であれと説く遊(ゆう)の思想に受け継がれ,以後各方面に展開していった。…

※「逸民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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