精選版 日本国語大辞典 「逸」の意味・読み・例文・類語
そら・す【逸】
〘他サ五(四)〙 (「そらす(反)」と同語源。本来の位置、進むべき方向からそれるようにするの意)
① 逃げるようにする。逃がす。のがす。
※大和(947‐957頃)一五二「夜昼これをあづかりて、とりかひ給ふほどに、いかがしたまひけむ、そらしたまひてけり」
② わざとねらいをはずして、わきの方に向ける。また、ねらいがはずれ、球などをうけそこなう。逸する。
※梵舜本沙石集(1283)八「さて馬早く進む。又『留めよ』と云たびに、つよくうつが、そらして遠行延びぬ」
③ 視線の方向などを他へ移す。
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉二「主人の顔を仰いでゐる目を逸(ソラ)さなかった」
④ 人の気分を害する。機嫌をそこなう。
※六波羅殿御家訓(13C中)第八条「親疎人の目にたたぬ躰に、何をもそらさず振舞べし」
⑤ 他のことに言いまぎらす。話を他の話題に変える。
⑥ 特に、人の不快な感情などを他のことに一時的にまぎらわす。
そ・れる【逸】
〘自ラ下一〙 そ・る 〘自ラ下二〙
① 思いがけない方向へ飛んでいく。目的にはずれて外へ飛んでいく。〔名語記(1275)〕
② 予想されていた進路とは別の方向へ進む。
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「殆ど柳之助と擦違(すれちがひ)に、すうと翥(ソ)れて小座敷へ入って了ったが」
③ 物事が予想外の方向へ進展する。また、気持が他の方へ移る。
※栄花(1028‐92頃)初花「左よろづにおぼしむつかりて、殊なる物の栄(はえ)なくてそれにけり」
④ 主要な道筋からはずれる。
はぐ・れる【逸】
〘自ラ下一〙 はぐ・る 〘自ラ下二〙
① 連れの人を見失って離ればなれになる。
※鬼剥げ(1954)〈島尾敏雄〉「こんな時に弟とはぐれてしまったことも気がかりだ」
② 調和がとれなくなる。ぴったりしなくなる。
③ 身につけていた物などがはがされて離れる。はがれる。
※和英語林集成(初版)(1867)「キモノ ガ hagureru(ハグレル)〈略〉フトン ガ hagureru(ハグレル)」
④ (他の動詞の下に付いて) しそこなう。機会を失う。失敗する。
※日葡辞書(1603‐04)「マイリ fagurete(ハグレテ) レイニ マイラヌ」
そ・る【逸】
[1] 〘自ラ四〙
① 思いがけない方へ飛んで行く。違った方向へ離れ去って行く。
※蜻蛉(974頃)中「あらそへば思ひにわぶるあま雲に、まづそる鷹ぞかなしかりける」
② 物事が思いもかけない方向へと進む。正常な状態から、ずれて行く。
[2] 〘自ラ下二〙 ⇒それる(逸)
はぐ・る【逸】
[1] 〘自ラ下二〙 ⇒はぐれる(逸)
[2] 〘他ラ四〙 しくじる。多く動詞の連用形に付けて「…しそこなう」の意を表わす。
※雑俳・柳多留‐九(1774)「心中が出るで結納うりはぐり」
いっ‐・す【逸】
〘自他サ変〙 ⇒いっする(逸)
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