平安,鎌倉,室町期の歌い物の総称。詠曲とも書く。平安初期には神楽歌,催馬楽(さいばら),風俗(ふぞく)歌,朗詠の雅楽系歌曲を指し,中期以降は,今様,雑芸(ぞうげい)の類も加えられ,鎌倉時代にはさらに早歌(そうが)も加えられた。狭義には朗詠または早歌を指す。〈歌〉本位の,いわゆる旋律的に歌われる声曲を,多少謙譲の意味をこめて,ひらたく言うときに使う用語と思われる。上記の時代に成立,発展した声曲であっても,久米歌,東遊など祭祀用歌舞や仏教儀式における声明(しようみよう),語り物の平曲,猿楽などのように,歌以外のものと深くかかわった声曲は,含まれない。雅楽系歌曲,今様,雑芸の意味における用例は,《郢曲相承次第》《五節間郢曲事》《梁塵秘抄口伝集》などに見え,早歌の意味における用例は《撰要目録》《応仁略記》などに見える。
執筆者:蒲生 美津子
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平安時代から鎌倉時代にかけて行われた歌謡の種目、またはその総称。語源は、中国の春秋時代に楚(そ)の国の都、郢(えい)ではやった卑俗な歌謡の意。平安初期には朗詠、催馬楽(さいばら)、神楽歌(かぐらうた)、風俗歌(ふぞくうた)など宮廷歌謡の総称であったが、平安中期には今様歌(いまよううた)、末期からは神歌(かみうた)、足柄(あしがら)、片下(かたおろし)、古柳(こやなぎ)、沙羅林(さらのはやし)などの雑芸(ぞうげい)も包括し広義に及んだ。狭義には朗詠のみをさし、また別に鎌倉時代の早歌(そうが)(別名宴曲(えんきょく))を示すこともある。『徒然草(つれづれぐさ)』に「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)の郢曲の詞」とあるのは当時の雑芸をさす。これは後白河(ごしらかわ)法皇の撰(せん)と思われる『郢曲抄』が別名『梁塵秘抄巻十一』とも称されるためである。五節(ごせち)の殿上淵酔(てんじょうえんずい)で歌われた朗詠、今様、雑芸などをとくに『五節間郢曲』と称し、鎌倉時代の早歌と結んで貴族の宴席で愛好された。郢曲を伝承する家には敦実(あつざね)親王・源雅信(まさのぶ)を祖とする源家(げんけ)、藤原師長(もろなが)・源博雅を祖とする藤家(とうけ)の2家があったが、室町中期に藤家は絶え、いまは源家の流れの綾小路(あやのこうじ)家が命脈を保つ。
[橋本曜子]
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