アンモニアNH3分子の水素原子をアシル基RCO-で置換した化合物の総称で,単にアミドamideともいう。置換された水素の数に応じてそれぞれ第一アミド,第二アミド,第三アミドと呼ぶが,ふつう,酸アミドといえば第一アミドをさす。
RCONH2 第一アミド
(RCO)2NH 第二アミド
(RCO)3N 第三アミド
第一アミドのアミノ基の水素原子を1個または2個の炭化水素基で置換したものが多数見いだされており,これらはN-置換アミドと呼ばれる。また,イミノ基NHをもつ第二アミドのうち,ジカルボン酸から生成する環状化合物をとくに酸イミド(イミド)と呼び,他の第二アミドと区別することが多い。β-,γ-,δ-アミノ酸が分子内で縮合環化したものはラクタムと呼ばれる。
第一アミドの命名は,酸の翻訳名に〈アミド〉を続けるか,酸の英語名の接尾語〈-ic acid〉を〈-amide〉に変えた英語名の音訳を用いる(ギ酸アミド=ホルムアミド,酢酸アミド=アセトアミドなど)。N-置換アミドの名は非置換アミド名の前にN-置換基名をつける。対称的第二アミドや第三アミド名は,相当する第一アミド名の前に〈ジ〉または〈トリ〉をつける。
ホルムアミドHCONH2以外のほとんどのアミドは無色の結晶で,低位のものは水に可溶である。アルコールやエーテルにはよく溶けるが,石油エーテル,四塩化炭素などの無極性溶媒には溶けにくい。中性の化合物であるが,強酸や強塩基と反応して不安定な塩をつくることがある。また,酸や塩基触媒によって加水分解されてカルボン酸RCOOHを生じ,五酸化リンで脱水すればニトリルRCNを生じる。酸アミドは酸塩化物,酸無水物やエステルにアンモニアを作用させて合成する。この方法でアンモニアの代りにアミンを用いるとN-置換アミドが得られる。ほかに,ニトリルの加水分解,カルボン酸アンモニウム塩の加熱でも合成できる。酸アミドは有機合成原料として広く用いられるが,低位のN-置換アミドは溶媒として利用される。スルホン酸のアミドRSO2NH2はスルホンアミドsulfonamideと呼ばれる。
執筆者:井畑 敏一
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