金勝寺(読み)こんしようじ

日本歴史地名大系 「金勝寺」の解説

金勝寺
こんしようじ

[現在地名]栗東町荒張

金勝こんぜ山頂にある天台宗寺院。金勝山と号し、本尊釈迦如来。「続日本後紀」天長一〇年(八三三)九月八日条に「以在近江国栗太郡金勝山大菩提寺、預定額寺」とあり、もと大菩提だいぼだい寺と称し、定額寺に列した。寛平九年(八九七)六月二三日の太政官符(類聚三代格)により当寺に年分度者二人を賜った。一人は甲賀こうか飯道いいみち名神・坂田さかた山津照やまつてらす名神に、一人は野洲やす三上みかみ兵主ひようず両所名神にそれぞれ法華経・金光明最勝王経を転読して祈願する、法相宗に属する僧であった。毎年許可される年分度者の試業や修学は金勝寺独自に実施すると定められている。なお同官符によれば、当寺は金粛菩薩(良弁)が開創、金粛こんしゆく寺とも称した。のち奈良興福寺の願安が当地で修法、弘仁年中(八一〇―八二四)国家安寧を祈願するため伽藍を建立、仏像を安置し、別に八宗はつそう院を建て一切経・法華経を書写し、さらに一堂に七僧を定め法華三昧を行った。仁明天皇は綸旨を下し灯分を施入、金粛寺を金勝寺と改めたという。

天暦八年(九五四)四月七日の左弁官下文(宮内庁書陵部蔵金勝寺文書)によれば、前年三月太政官符が下され、当寺の四至「限東阿星水堺谷 限南紫野南鈴嶽 限西岡牟礼山 限北滝山阿羅尼原」内へみだりに乱入し濫行することが禁じられたが、守られないため再び境内地への乱入を禁じ、検田・収納・雑役をも停止している。


金勝寺
こんしようじ

[現在地名]山形市山家本町二丁目

仏母山と号し、曹洞宗。本尊華厳釈迦如来。寺伝によれば暦応三年(一三四〇)夢窓疎石の開創という。しかし山家氏系図(安倍文書)では安倍氏の先祖安部富忠(法名建正寺殿忠山慶公大禅門)が前九年の役と後三年の役の功績により出羽権守となり、仏母山建正けんしよう寺を開基したとの説を伝え、寺が最上直家菩提寺となった折、金勝寺と改称したという。最上氏系図によれば、山形城主二代直家は応永一七年(一四一〇)没し、月潭光公と号し金勝寺と称した。直家嗣子満直が父の菩提を弔うため当寺の堂塔伽藍を建立し、寺領一〇〇石と山林竹木を直家の永代供養として寄進したと伝える。当寺はもとは臨済宗であったが、天正二年(一五七四)瑞雲ずいうん(現新庄市)五世三光存辰が住職となってからは曹洞宗に改宗したと伝える。


金勝寺
きんしようじ

[現在地名]平群町椣原

竜田たつた川西岸にあり、清滝きよたき街道に面する。椣原山と号し、真言宗室生寺派。本尊薬師如来。もと奈良興福寺一乗院の末寺で、法相・真言兼帯寺であった。寺伝によれば、天平一八年(七四六)行基の創建といい、寺領七〇〇石を得、金堂・阿弥陀堂・護摩堂のほか、三六の子院を数える大伽藍であったという。天正年間(一五七三―九二)松永久秀の焼討ちにあってことごとく焼失、寺領も没収された。


金勝寺
きんしようじ

[現在地名]大和高田市大字市場

市場いちばの北部、北市場垣内きたいちばがいとにある。真言宗の寺であったが、現在廃寺。堂一宇を残し、本尊の大日如来(江戸時代)とほかに大日如来(鎌倉後期)を安置する。「春日権現験記」に「正安三年十月廿五日子時悪党社頭に乱入て。云々。十四面の神鏡を盗取。云々。当国常業といふ所の堂にはかに瑞光あり。云々。堂内をうかゞひみれば。神鏡三面しろき布袋にいれて仏前にかけたてまつる。云々。事のよしを平田庄の地頭につげければ。


金勝寺
こんしようじ

[現在地名]刈谷市高津波町

高津波たかつなみ町の西、碧海へきかい台地の西端に位置する。高布山と号し、真宗大谷派。本尊阿弥陀如来。文明一六年(一四八四)慶宗が蓮如に帰依して、高津波道場を開創したのに始まる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金勝寺」の意味・わかりやすい解説

金勝寺
こんしょうじ

滋賀県栗東(りっとう)市にある天台宗の寺。山号は金勝山。733年(天平5)東大寺の良弁(ろうべん)が紫香楽宮(しがらきのみや)の鬼門鎮護のため創建したという。平安初期、興福寺の願安(がんあん)が伽藍(がらん)を整備、定額(じょうがく)寺となり、現在の寺号を称した。897年(寛平9)年分度者2名を置き、6年の籠山(ろうざん)修行の場とされた。戦国時代に堂宇を焼失、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)に徳川家康が寺領30石を寄せ復興に努めた。平安後期の釈迦如来(しゃかにょらい)像、毘沙門天(びしゃもんてん)像、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)像、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)像は国の重要文化財。付近に平安中期の磨崖仏(まがいぶつ)(国の史跡)がある。

[田村晃祐]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

事典・日本の観光資源 「金勝寺」の解説

金勝寺

(滋賀県栗東市)
湖国百選 社/寺編指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

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