鈍色(読み)ドンジキ

デジタル大辞泉 「鈍色」の意味・読み・例文・類語

どん‐じき【鈍色】

法衣ほうえの一。上衣ほう)とはかまくんと帯からなるひとえのもの。無紋の絹で仕立て、僧綱領そうごうえりを立てる。鈍色の衣。

にぶ‐いろ【鈍色】

にびいろ」に同じ。
「―の雲の彼方に」〈有島或る女

にび‐いろ【鈍色】

染め色の名。濃いねずみ色。昔、喪服に用いた。にび。にぶいろ。

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精選版 日本国語大辞典 「鈍色」の意味・読み・例文・類語

どん‐じき【鈍色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 薄黒い色。灰色。にびいろ。にぶいろ。どんしょく。
    1. [初出の実例]「僧正香也。法印以下有職至悉白色也。鈍色にふいろ訓。凡黒色事歟。雖然、黒色未見及。又旧記無之」(出典:醍醐寺新要録(1620))
  3. 法衣(ほうえ)一種袍服と同じく上衣(袍(ほう))とはかま(裙(くん))と帯の三つから成るが、袍服が袷(あわせ)であるのに対して、単衣(ひとえ)である。無紋の絹の良質なもので仕立て、僧綱領(そうごうえり)を立てる。鈍色の衣。〔左経記‐長元八年(1035)三月二七日〕
    1. 鈍色<b>②</b>〈信貴山縁起〉
      鈍色信貴山縁起
    2. [初出の実例]「御どんじきの御寸法、御裳以下いつでも御しゐにぶにおなじ」(出典:法体装束抄(1396))

にび‐いろ【鈍色】

  1. 〘 名詞 〙 染色の名。濃いねずみ色。昔、喪服に用いた色。にぶいろ。にび。
    1. [初出の実例]「垣下公卿殿上人・諸大夫巻纓、着鈍色衣云々」(出典:九暦‐逸文・天暦八年(954)四月一五日)

にぶ‐いろ【鈍色】

  1. 〘 名詞 〙にびいろ(鈍色)
    1. [初出の実例]「にぶ色の薄らかなる一かさねに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)

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色名がわかる辞典 「鈍色」の解説

にびいろ【鈍色】

色名の一つ。「にぶいろ」とも読む。薄をさした染色の伝統色名のこと。濃い鼠色平安時代貴族喪服の色に用いられた。天皇の喪服も近い色だが、とくに錫紵しゃくじょと呼ばれた。それ以前の喪服はだったが、やがて灰色がかった薄墨になり、徐々に濃くなっていったとされる。その後、白に戻るが明治時代になって西洋の喪服の色であるになった。ややみがかった青鈍も、平安時代は凶事に用いられたとされる。江戸時代になると鼠色が流行し、鈍色に近い色が日常着物に用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鈍色」の意味・わかりやすい解説

鈍色
にびいろ

色名の一つ。やや藍(あい)色みのある薄墨色。「にぶいろ」ともいう。平安時代以降、公家(くげ)の喪服に用いられた色の一つ。亡くなった人との関係によって、鈍色の濃さ・薄さを変えて用いた。喪服として、男子は衣冠、直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)、布衣(ほい)、下襲(したがさね)、指貫(さしぬき)など、女子は袿(うちき)に鈍色のものを着用する。『源氏物語』(葵(あおい))に「中将の君にびいろの直衣指貫うすらかに衣かへして」とある。

 この色は、青花(露草)の汁と墨で染めるとされている。青鈍色は青(緑色)みのある薄墨色で、凶時ばかりでなく、日常に尼や壮年の人が用いた。

[高田倭男]

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世界大百科事典(旧版)内の鈍色の言及

【衣帯】より

…いずれも紋織の綾などで仕立て,宮廷装束のものとほぼ同じである。
[法衣]
 もっとも一般的な法衣は,袍裳(ほうも),鈍色(どんじき),素絹(そけん),直綴(じきとつ)の4種である。(1)袍裳 法服(ほうぶく),袍服(ほうぶく)とも記し,上半身の袍と,下半身の裳とに分かれた仕立てである。…

【法衣】より

…赤色袍裳,香袍裳,黒袍裳,布袍裳の別がある。なお平安時代から,絹で仕立てた白色の同形式の鈍色(どんじき)も着用された。(3)裘代(きゆうたい),素絹(そけん),打衣(うちぎぬ),(かさね),空袍(うつほ)など平安時代に登場した裳付の法衣。…

※「鈍色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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