朝鮮,李朝第26代高宗の妃。驪興(れいこう)閔氏の一族,閔致禄の娘として,京畿道驪州に生まれる。1866年,大院君の夫人閔氏の推薦で王妃となったが,宮中内外に閔氏一族の勢力を扶植し,73年には大院君を失脚させた。翌年,王子坧(のちの純宗)を産んで基盤をさらに固め,閔妃とその一族は政権の中枢を独占する。閔氏政権がすすめた開国政策は国内にさまざまな対立を生み出し,82年には壬午軍乱がおこった。このとき閔妃は変装して王宮を脱出したが,清国軍が介入して大院君を天津に連れ去ると,再び勢力を回復した。このころから事大=守旧派としての性格を強め,84年の甲申政変を清国軍の力を借りてのりきったあとは,袁世凱(えんせいがい)の勢力とも結んで開化派を弾圧し,守旧的な政治を続行した。94年7月,日本軍が大院君をかついで王宮を占領し,開化派の政権が成立すると(甲午改革),閔妃の一派は政権から追われた。しかし翌年,三国干渉ののちロシアと結んで巻き返し,政権を回復。このため,勢力後退で焦燥感にかられた日本の手によって殺された。
1895年,日本公使三浦梧楼の指揮により日本軍人・大陸浪人らの手で閔妃が殺害された事件。三国干渉を契機として復活した閔氏政権の排日政策に対抗して勢力挽回を図った三浦は,10月8日早朝,ソウル駐在の日本守備隊および岡本柳之助,安達謙蔵ら日本人壮士のグループに命じて景福宮を襲撃させた。宮殿内に乱入した彼らは閔妃を斬殺して奥庭にひきずり出し,死体を凌辱したうえ石油をかけて焼き払い,これと同時に,大院君をかつぎ出して金弘集を首班とする親日開化派政権を成立させた。三浦は朝鮮軍隊の内紛を装ったが,王宮の内部にいた外国人の目撃などから国際的な非難をあびた。そこで日本政府は,三浦以下48名を召喚して形ばかりの裁判を行い,翌年1月,証拠不十分として全員を免訴・釈放した。日本のこのような蛮行に対して,朝鮮各地で反日義兵闘争がまきおこった。
執筆者:吉野 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
朝鮮王朝(李氏(りし)朝鮮)第26代高宗の妃。1866年に王妃に冊封(さくほう)された。時の執権者であった高宗の実父大院君と対立し、閔氏一族を中心に反対派を糾合、政府の要職に登用し、1873年には国王親政の名のもとに大院君を退け、自ら権力を握った。鎖国主義を改め、1876年には日本と江華条約(日朝修好条規)を結んだ。1882年の壬午(じんご)軍乱で失脚したが、ふたたび政権を掌握。1884年の甲申政変では一族の有力者を失いながらも、清(しん)国軍の介入で政変を挫折(ざせつ)させた。日清戦争後、親日的な金弘集らの手で甲午改革が始まると、ロシアに接近して日本の侵略を阻止しようと図った。これを憎んだ日本官憲、浪人の手によって、1895年10月8日殺害され、死体は焼却された。
[宮田節子]
1851~95
朝鮮王朝末期第26代李太王(りたいおう)(高宗)の妃。1873年兄閔升鎬(びんしょうこう)らとともに,摂政大院君(だいいんくん)の失政を攻撃して引退させ,国王親政の名のもとにみずから実権を握り,一族とともに政権を専断した。内政面では守旧主義,外交面では清国に従属する事大主義をとり,日本と結ぶ独立党を押えていた。日清戦争で清国が敗退すると,ロシアと結んで政権を維持し日本を排斥しようとしたため,日本公使三浦梧楼(ごろう)の陰謀により95年10月暗殺された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1851.9.25~95.10.8
李氏朝鮮第26代国王高宗の妃。1866年王妃となり,73年高宗の実父大院君(たいいんくん)を引退させ閔氏戚族による政権独占をもたらす。壬午(じんご)・甲申(こうしん)両事変の危機を脱してから,清国・ロシアの力を背景に権力を強化した。日清戦争・甲午改革で閔氏戚族は失脚したが,三国干渉後ロシアに接近し再び権力を握った。これを不満とした駐朝公使三浦梧楼(ごろう)らによって,95年10月王宮を襲われ殺害された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…1886年アメリカのメソディスト派宣教師W.B.スクラントン夫人創設の梨花学堂に始まる。〈梨花〉の名称は閔妃(びんひ)(明成皇后)が下賜。女子教育に消極的な儒教的風土の下でその先駆となり,女性の地位向上に貢献した。…
※「閔妃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新