江戸時代に制定された浄土宗僧侶育成のための学問所18ヵ寺の称。古くは学問所を談所,談義所,談林といった。栴檀(せんだん)林の略称である檀林を称するようになったのは,〈伊欄の悪木といえども,栴檀林の近くに生えれば,その香に染まる〉というたとえから,学僧が正しく訓育される学舎という意味からである。檀林は他宗にも設けられた。18の数は増上寺12世存応(ぞんのう)が徳川家康とはかり弥陀の十八願に擬して松平十八公の盛運を祈らしめたことによると伝えられ,その成立は1602年(慶長7)あるいは15年(元和1)といわれる。しかし最後にできた深川霊巌寺は24年(寛永1)の開山であるので,制度としての確立はそれ以降のことである。かくして成立した十八檀林は,開山の年代順に相模鎌倉光明寺,武蔵鴻巣勝願寺(埼玉県鴻巣市),常陸瓜連常福寺(茨城県那珂市の旧瓜連町),江戸芝増上寺,下総飯沼弘経寺(茨城県常総市の旧水海道市),下総小金東漸寺(千葉県松戸市),上総生実(おゆみ)大巌寺(千葉市中央区),武蔵川越蓮馨寺(埼玉県川越市),武蔵滝山大善寺(東京都八王子市),武蔵岩槻浄国寺(埼玉県さいたま市岩槻区),常陸江戸崎大念寺(茨城県稲敷市の旧江戸崎町),上野館林善導寺(群馬県館林市),下総結城弘経寺(茨城県結城市),江戸本所霊山(りようぜん)寺(東京都墨田区),江戸下谷幡随院(東京都小金井市,もと台東区浅草神吉町),江戸小石川伝通院,上野新田大光院(群馬県太田市),江戸深川霊巌寺(東京都江東区)である。学問所としての檀林はやがて幕府の寺院統制下で行政の一端をにない,一,二の変動はあったが宗教行政の中心となった。
執筆者:藤井 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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