(1)飛知とも書く。江戸時代,城付(城地,城領)の所領に対し各地に分散している知行地を飛地と称した。一般に外様大名の領地は一円的知行を保ち,1ヵ所にまとまって存在したが,譜代大名の所領は激しい転封と,天領・旗本領との間に所領の著しい統廃合・切替えが行われたため分散知行化した。この場合,城付の所領以外の知行地を飛地といった。たとえば,1664年(寛文4)武蔵忍(おし)藩の所領は老中阿部忠秋の所領であったが,その所領高8万石は,武蔵のうち埼玉郡に3万4113石9斗8升9合(35ヵ村),大里郡に1万6276石6斗7升9合(31ヵ村),秩父郡に1万1685石4斗5升5合(27ヵ村),足立郡に8672石6斗8升9合(13ヵ村),幡羅(はら)郡に1271石1斗2升7合(2ヵ村),男衾(おぶすま)郡に1074石8斗5升5合(9ヵ村)存在したほか,相模国三浦郡に3105石4斗6合(8ヵ村),上野国新田郡に3800石(7ヵ村)が散在する分散知行の形態であった。この場合,武蔵の埼玉・大里両郡の所領が城付の所領で一円的形態を保ち,そのほかは飛地であった。
(2)江戸時代,親村と地続きではなく,他村に入り組んだ土地のことをいう。村境の川が洪水によって河流が変わり,隣村との間に出入りが生じたとき,無高地の場合は新たに地続きとなった乙村の土地となるが,高請地の場合は甲村と離れて乙村と地続きになったときも甲村の土地とされた。この場合,乙村の地続きになった土地を甲村の飛地と称した。分村によって飛地となる場合もある。なお現代でも市町村などの行政区画で,離れた地域にあるものを飛地という。
執筆者:藤野 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)飛知とも書く。江戸時代、城付(しろつき)の所領に対し、各地に分散している知行地(ちぎょうち)のことをいう。一般に外様(とざま)大名の領地は一円的知行を保ち、1か所にまとまって存在したが、譜代(ふだい)大名の所領は激しい転封と、天領・旗本領との間に所領の著しい統廃合、切り替えが行われたため分散知行化した。この場合、城付の所領以外の知行地を飛地と称した。(2)江戸時代、親村と地続きでなく他村と入り組んだ土地のこと。村境の川が洪水によって河流が変わり、隣村との間に出入りが生じたとき、隣村内に入り組んだ土地は、洪水前の地続村が保有することが定められており、この場合、入組地を飛地と称した。分村によって飛地となる場合もある。
[藤野 保]
本拠である城付(しろつき)などの知行地に対して,遠隔地に分散して存在する知行地。江戸時代の大名,その家臣,旗本などの知行地において,全体がまとまって存在するいわゆる一円知行地の例は,一部の外様大名以外には少なく,ほとんどの場合は遠隔地の飛地知行地を含んだ。とりわけ譜代大名は本拠地に対して飛地の占める比率が高く,たとえば延岡藩内藤氏の場合,総高7万石に対して,城付を含む日向国臼杵郡内に2万4000石余,同国宮崎郡内に2万4000石余,豊後国大分・国東(くにさき)・速見郡内に2万石余が分散していた。なお洪水などで本村と地続きでなくなった土地や,新田開発で本村と離れた場所に高請された土地も飛地といった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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