産業分類(読み)さんぎょうぶんるい

改訂新版 世界大百科事典 「産業分類」の意味・わかりやすい解説

産業分類 (さんぎょうぶんるい)

ある国の産業構造の変化を調べたり,国際的に産業構造を比較対照するためにも,一定の基準にもとづいて作成された産業分類が必要である。今日,世界各国はそれぞれ国内的にほぼ統一された産業分類を作成しており,国際的にもこれを統一する目的で,第2次大戦後の1947年に国際連合統計委員会から〈全経済活動に関する国際標準産業分類International Standard Industrial Classification of All Economic Activities〉の勧告が公表されている。日本で初めて産業分類が作成されたのは1930年の第3回国勢調査の時であった。そのさい作成された産業分類では,大分類が10項目,中分類が42項目,小分類が280項目であった。その後,しだいに改良され,40年の国勢調査のさいには標準産業分類を作成しようという試みがなされた。しかし戦争の混乱に突入し,戦後,49年に当時のGHQの日本政府への勧告によって,統計委員会産業分類専門部会が〈日本標準産業分類〉を作成した。その後,統計委員会はこの分類を政令として制定するために,内容と適用性を検討した結果,51年4月に第1回の改訂を行い,改訂分類は51年4月に統計法にもとづく政令として制定された。以降93年10月の改訂まで10回の改訂が行われている。

この産業分類を作成するさいの原則と基準は,もっぱら国際連合の分類に準拠している。分類項目を設けるうえで重要な原則は,第1に,この分類が職業別ないしは商品別分類ではなく,産業別分類であること,第2に,どこの国にも存在すると思われる産業の構成を基礎としていて,作業の技術,原材料の性質,生産品の用途とか単一の原則によるものでないこと,第3には,所有権のいかんにかかわらず,各産業についての分類であることである。したがって政府が運営する事業所もその産業の性格によって分類されている。さらに産業分類を理解するうえで重要な分類基準は次のとおりである。(1)分類に適用される単位は事業所である。(2)一事業所内で複数の分類項目に該当する経済活動が行われている場合は,主要な経済活動によって決定する。(3)場所の異なる付随事業所は,主要事業所の産業で分類される。(4)分類項目は,事業所の数,従業者の数,仕事の量,賃金と雇用,その他重要な経済事象の見地からみて意義あるときに設けられる。(5)分類は十進法によっている。

 この産業分類にいう事業所は,経済活動の場所的単位であって原則として次の要件を備えているものをいう。(1)経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。(2)財貨およびサービスの生産または提供が,人および設備を有して,継続的に行われていること。すなわち,事業所とは,一般に工場,製錬所,鉱山,商店,営業所,事務所,農家,学校,病院などと呼ばれるものである。93年10月改訂の日本標準産業分類によると,大分類14,中分類99,小分類463,細分類1324項目となっている。

全産業にわたる産業分類としては,以上のほかに国勢調査に用いられる産業分類がある。これは,各家庭において,間接に各個人が働いている各事業所の経済活動を調べる点に特色がある。そのため簡単な分類でなければ,その目的を達成できないので,日本標準産業分類をもとにし,これを集約,細分して編成された産業分類が用いられる。これら以外に,通産省工業統計商業統計,日本銀行統計局の業種別貸出統計業種分類,事業所統計,農業センサス漁業センサス等に用いられる分類があるが,いずれも日本標準産業分類をもとに集約,細分化したものである。

 このように一定の産業分類に従って分類した産業を,各種の分析目的に応じて再び統合して新しい産業分類を構築する場合が少なくない。産業構造を時系列でみたり,外国の産業構造と横断的に比較する場合に一般的に使用されるのが,第1次産業,第2次産業,第3次産業という三大分類である(〈産業構造〉の項参照)。

最近は,産業の分析目的が多様化しており,それに合わせた産業分類を行うケースが多い。(1)商品の用途面から分類して,生産手段を生産する投資財産業,原材料を生産する生産財産業(以上をまとめて基礎産業),消費にあてられる財を生産する消費財産業(耐久消費財に限定する場合もある),(2)資本装備率が高く,高度な技術と設備を必要とする重化学工業(生産財,投資財関連の産業が多い)とそれらの点で反対軽工業(消費財関連の産業が多い)という分類,(3)生産過程における加工度の違いによる区分で,生産のための資源や材料を生産する素材産業(素材産業・加工組立産業),材料を加工して単品部品を生産する加工産業,部品や材料を用いて完成品を生産する組立産業,(4)生産要素の結合具合の違いにより資本装備率の高い資本集約型産業資本集約型産業・労働集約型産業),それが低く,労働との結合度が高い労働集約型産業,などがある。

 また,製造業の内分類として,自動車や電機などの産業を加工組立産業,技術進歩の影響度が高い産業を技術集約型産業,ハードウェアよりもソフトウェアが重要なコンピューター産業などを知識集約型産業などという場合もある。また石油化学石油精製,鉄鋼,非鉄など大型の生産設備を採用している産業を装置産業という。製品1単位当りの資源・エネルギー消費量の多い産業を資源・エネルギー多消費型産業と呼んだりもする。さらに1970年代初めから未来産業という言葉も登場し,従来の産業の横断的な,有機的な結合によって成立する海洋開発,宇宙開発,情報,住宅・都市開発,医療,教育,レジャー,エンジニアリング,先端技術産業などという分類が登場している。たとえば,レジャー産業という範疇(はんちゆう)には,第1次産業の植木,園芸が入り,第2次産業のカメラ,楽器,レコード,スポーツ用品,書籍,旅行用品,テレビ,ラジオ製造業など,第3次産業の映画館,劇場,野球場,パチンコ・マージャン店,レストラン,バー,旅館,ホテル経営等,きわめて多岐にわたる産業分類項目が含まれる。このような範疇の統計は日本にもまだないので,産業分析のつど新たにつくり直す作業が必要となる。このように産業分類には,時代とともにつぎつぎと新たな分野が生まれてくるのである。
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百科事典マイペディア 「産業分類」の意味・わかりやすい解説

産業分類【さんぎょうぶんるい】

一国の産業構造やその変化を的確に把握(はあく)し,また国際比較を行うなどのため,統一基準により各種産業を適当な同質的グループに統計的に整理したもの。最も大まかな分類としてはC.G.クラークの唱えた第一次産業第二次産業第三次産業の3分類が広く利用されており,細かな分類の国際的統一を目的としては国連統計委員会から〈全経済活動に関する国際標準産業分類〉が勧告の形で出されている。 日本では1930年国勢調査で初めて産業分類を行ったが,今日では統計法に基づいて定められた日本標準産業分類が,国際標準産業分類に準じて決められており,各種統計調査の産業別表示は原則としてこれによっている。ここではまず次の14業種に大分類し,これをさらに99に中分類,463に小分類,1324に細分類している。A農業,B林業,C漁業・水産業,D鉱業,E建設業,F製造業,G電力・ガス・熱供給業,H不動産業,I卸売・小売・飲食業,J金融・保険業,K運輸・通信業,Lサービス業,M公務,N分類不能の産業。
→関連項目産業

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「産業分類」の意味・わかりやすい解説

産業分類
さんぎょうぶんるい
industrial classification

職業上の活動が個人単位から集団 (経営体) 単位として行われる時代に移ってくると,この集団を単位とする職業的活動の分類が必要となってくる。これが産業分類である。広く使われている産業大分類によれば,(1) 農業,(2) 林業,狩猟業,(3) 漁業,水産養殖業,(4) 鉱業,(5) 建設業,(6) 製造業,(7) 卸売業,小売業,(8) 金融・保険業,(9) 不動産業,(10) 運輸・通信業,(11) 電気・ガス・水道・熱供給業,(12) サービス業,(13) 公務,(14) 分類不能,となっており,それぞれにはさらに中分類,小分類がある。また,(1) ~ (3) を第1次産業,(4) ~ (6) を第2次産業,(7) ~ (13) を第3次産業とも呼ぶ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「産業分類」の意味・わかりやすい解説

産業分類
さんぎょうぶんるい

標準産業分類

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世界大百科事典(旧版)内の産業分類の言及

【統計】より


[標準分類]
 統計調査に用いる分類として,いくつかの標準分類が定められている。そのなかで産業分類,疾病・傷害・死因分類については,総務庁長官の公示する分類によらなければならないと政令で定められている。標準分類はときどき改訂されるが,日本標準産業分類は事業所の分類に適用されるものであって,1984年1月改訂のものでは14の大分類,2けたの数字で表される96の中分類,3けたの数字で表される452の小分類からなり,また小分類の下に1262の細分類が設けられている(〈産業分類〉の項参照)。…

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