煙霧(読み)エンム

デジタル大辞泉 「煙霧」の意味・読み・例文・類語

えん‐む【煙霧】

。また、もやかすみ
乾いた微小粒子大気中に浮遊して見通しが悪くなる現象スモッグ 冬》
[類語]ガススモッグ雲霧朝霧夕霧夜霧狭霧海霧かいむ海霧うみぎり濃霧

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精選版 日本国語大辞典 「煙霧」の意味・読み・例文・類語

えん‐む【煙霧】

  1. 〘 名詞 〙
  2. けむりと、きり。また、霞と、霧。
    1. [初出の実例]「混濁山河之清、雑燻煙霧之彩」(出典:続日本紀‐養老二年(718)一〇月庚午)
    2. [その他の文献]〔北史‐蕭大園伝〕
  3. 細かい乾燥したちりや煤煙などが空気中に浮かんで空気を濁らせ、見通しを悪くしている現象。主として工場、住宅などの煙突から出る煤煙、自動車などの排気ガスによって起こる。スモッグ。〔大増補改訂や、此は便利だ(1936)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「煙霧」の意味・わかりやすい解説

煙霧
えんむ

地面から吹き上げられて大気中に浮かんでいる細塵(さいじん)や煙の粒子。またそれらのために遠方の風景がはっきり見えなくなる現象をもいう。気象観測上の用語で、煙霧は霧ではない。地面から吹き上げられた細塵であることがはっきりしている場合には塵煙霧(ちりえんむ)、燃焼によって生じた煙であることがはっきりしている場合には単に煙といい、そのいずれとも判別できないものを煙霧とよんでいる。煙霧の濃さは遠景の見えぐあいによって決まるが、煙霧のまったくないときには、50キロメートル遠方の山が見えるが、煙霧があると遠方の山はぼんやりとかすんで白っぽく見える。

 空が青く晴れているときに地上から水平線の方向を見ると、空のある高さから上は青く、その下は白っぽくあるいは茶色っぽく濁って見えることがある。これは、煙霧が地上からだんだん上空に広がって、上空の気温の逆転層の底まで届いたためである。このような煙霧層の高さは普通1000メートル前後である。市街地などでは、煙霧は工場などから出る煙がもとになって発生することが多い。したがって煙霧の濃さは、大気汚染の程度の指標にもなる。人間活動と煙霧による視程の悪化とは相関がある。

[大田正次]

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改訂新版 世界大百科事典 「煙霧」の意味・わかりやすい解説

煙霧 (えんむ)
haze

工場や住宅等の煙突から出るばい煙,自動車の排気ガスに含まれる不完全燃焼物など,微細な乾燥した塵埃が大気中に浮遊していると空気が濁って視程が悪くなる。この状態を煙霧という。湿度が比較的高いときに発生する靄(もや)が灰色っぽいのに対し,煙霧は背景が暗いと青みがかり,明るいときは黄色みを帯びて見える。大都市や工業地帯はもともとばい塵の発生量が多いが,たまたま上空に気温の逆転があると対流が起こらないのでばい塵は大気下層に蓄積し,濃い煙霧が発生する。このようなときもし湿度が上がると濃い霧が発生する。これをスモッグという。暖房や工業用に石炭をたいていたころのロンドンのスモッグは有名で,呼吸器疾患による多数の死者を出した。現在は各国とも法的な規制を行って大気汚染の防止につとめている。人間起源のばい塵のほか,火山性微塵黄砂,海洋起源の塩分等も煙霧の原因となる。雨は大気中の微塵を洗い流してくれるので雨あがりの空はきれいになる。なお,煙smokeと煙霧hazeのまざったものをスメーズsmazeということがある。
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百科事典マイペディア 「煙霧」の意味・わかりやすい解説

煙霧【えんむ】

乾燥した微小粒子が大気中に浮遊して,大気を混濁させ視程を悪くしている状態。煙霧粒子は工場から排出された煤煙(ばいえん),粉塵(ふんじん),強い風で舞い上がった塵埃(じんあい)などで構成される。明るい背景のとき黄色または橙(だいだい)色,暗い背景のとき青色に見える。煙霧濃度は大気の安定度と風に左右される。濃い煙霧が発生しているとき,湿度が高くなると濃い霧が発生し,スモッグとなる。煙霧による大気汚染は,環境技術の発達と住民意識の向上によって先進国では見られなくなったが,近年,経済成長を続ける中国の北京をはじめ主要都市で,PM2.5などの粒子状有害物質を含む煙霧の大発生が続いており被害が懸念されている。
→関連項目ガスもや(靄)

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普及版 字通 「煙霧」の読み・字形・画数・意味

【煙霧】えんむ

けむりやもや。唐・杜甫〔孔巣父~を送り~兼ねて李白に呈す〕詩 (さうほ)頭を掉(ふる)つて(とど)まることを肯(がへ)んぜず 東のかた將(まさ)にに入つて、霧に隨はんとす

字通「煙」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「煙霧」の意味・わかりやすい解説

煙霧
えんむ
haze

湿度が比較的低いときに発生する,乾燥した小さな塵埃がふえた状態。もちろん塵埃は肉眼では見ることはできないが,全体としては,空気を濁して乳白色にし,視程を悪くする。きわめて小さい吸湿性水溶液粒子の集りであるミストとは色が異なり,背景が濃暗色のときは青みを帯びるが,明るい背景のときは黄色,あるいは橙色をしている。 1946年,横浜のアメリカ陸軍病院で見出された「横浜喘息」は,煙霧と関係があると報告されており,ミストと煙霧が喘息発作と相関関係にあることは,他の専門家によっても,十分確かめられている。スモッグとは別のもの。

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世界大百科事典(旧版)内の煙霧の言及

【霧】より

…(e)スモッグsmog 煙smokeと霧fogの混ざったもの。乾いた微細な粒子が大気中に浮遊して大気が白く濁ってみえる現象をヘーズhaze(煙霧ともいう)といい,煙とヘーズの混ざったものをスメーズsmazeという。
[霧の害]
 霧は各種交通の障害となり,また,スモッグなどは健康にもよくないので,古くから霧を人工的に消そうとする試みが行われてきた。…

【大気汚染】より

…最近は多くの化学物質や重金属がエーロゾルを形成し,大気汚染への影響の面から重要視されている。 煙霧ヘーズhazeともいう。大気中でごく微細な乾燥した粒子が浮かび,視程障害を起こしたり,遠景を見えにくくしている現象。…

【霧】より

…(e)スモッグsmog 煙smokeと霧fogの混ざったもの。乾いた微細な粒子が大気中に浮遊して大気が白く濁ってみえる現象をヘーズhaze(煙霧ともいう)といい,煙とヘーズの混ざったものをスメーズsmazeという。
[霧の害]
 霧は各種交通の障害となり,また,スモッグなどは健康にもよくないので,古くから霧を人工的に消そうとする試みが行われてきた。…

【大気汚染】より

…最近は多くの化学物質や重金属がエーロゾルを形成し,大気汚染への影響の面から重要視されている。 煙霧ヘーズhazeともいう。大気中でごく微細な乾燥した粒子が浮かび,視程障害を起こしたり,遠景を見えにくくしている現象。…

※「煙霧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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