主題(読み)シュダイ

デジタル大辞泉 「主題」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐だい【主題】

中心となる題目・問題。
芸術作品で、作者の主張の中心となる思想内容。テーマ
楽曲を特徴づけ、展開させる核となる楽想。テーマ。
[類語]話題トピック題目論題本題テーマ題材話頭話柄言いぐさ話の種語りぐさ

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精選版 日本国語大辞典 「主題」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐だい【主題】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 主要な題目。
  3. ある事柄で中心となる問題。テーマ。
    1. [初出の実例]「現に着手すべき研究の主題、及び方向等をも知ることを得て」(出典:国語のため(1895)〈上田万年〉今後の国語学)
    2. 「ことに自己の快楽を人間の主題(シュダイ)にして生活しようとする津田には」(出典明暗(1916)〈夏目漱石〉一四一)
  4. 小説、芝居、映画など芸術作品で、作者の主張の中心となる思想内容。テーマ。
    1. [初出の実例]「而して是等第一級及び第二級の貧乏人こそ、以下是物語の主題とする所の貧乏人である」(出典:貧乏物語(1916)〈河上肇〉一)
  5. 音楽で、ある楽曲を生み出し、展開させる楽想の中心となるもの。ソナタ形式では、最初にいくつかのまとまった小節で提示される第一主題と、それを展開させた第二主題とがある。〔音楽字典(1909)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「主題」の意味・わかりやすい解説

主題 (しゅだい)

研究や論文あるいは芸術作品など人間の精神的作物の中心となる題目をいう。〈テーマ〉(ドイツ語Thema,英語theme,フランス語thème)の訳語でもあるが,これはギリシア語tithenaiに由来し,〈置かれたもの〉を意味している。人間が思想を展開するときには集めた素材を自分独自の観点から統一するが,その統一の中心に置かれるものこそ主題にほかならない。芸術作品は,もとより素材に形成作用をほどこして成るものである。その素材は題材と媒材(油彩画ならば油絵具のごとき表現手段)に2分されるが,題材は主題と置きかえられるほど両者は密接に結ばれている。ことに美術における主題とはほとんど題材をさすとみなしてよかろう。

 文芸では表現の目標と見定められた思想内容が主題といわれる。ここでは主題は題材そのものでなく,作者独自の観点から素材をとらえなおすところに一定の意味連関として主題が浮かびあがり,かかる主題はモティーフ(執筆動機)やプロット(物語の筋)によって具体的に展開される。したがって主題は実在世界の構造を見つめる作者の世界観を反映するものでもあり,世界および読者に対する作者の態度いかんによっては〈テーマ小説〉などと呼ばれる傾向性の強い作品の生じることもある。これは一定の主題があからさまに掲げられ,すべての内容がこれに従属せしめられる類のものをいう。なお文芸研究には主題学thématologieと呼ばれる分科があるが,これは文芸作品相互の関係を主題の面から追究する意図をもち,比較文学において重要な一部門となっている。
執筆者:

音楽では一般に主題とは,楽曲の一部ないし全体の構成基盤であると同時に,しばしば固有の性格的相貌を有し,それ自体である程度完全な音楽的表現を成立させる主要楽想をいう。楽曲の冒頭をはじめいたるところで提示あるいは再現され,ときには変奏され展開されて(特に主題に含まれる部分モティーフへの分割・展開を〈主題労作〉という)全体の性格を決定し,楽曲に統一性を与える。音楽の各要素(旋律,リズム,和声,音色,デュナーミク等)の相互作用によって総体的かつ明確に規定され,ある程度まとまった形態を示す点でモティーフとは区別される。音楽用語としての〈主題〉は,16世紀イタリアのG.ツァルリーノに始まるが,上記の定義に特に対応するのは,調性が確立し拍節法や楽節構造が整備され,作曲家の個性的表現が尊重されるようになった18世紀(特に古典派)以後の音楽である。主題は時代やジャンル,形式によってそのあり方は多様であるが,必ずしもオリジナルであるとは限らず,また楽曲中の数も一定でない。20世紀においては,新しい技法の開拓や音楽観の変化に伴って,主題概念そのものが再検討を迫られている。なお,フーガなどの模倣対位法楽曲の主題をサブジェクトsubject(ポイントpointともいう)という。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「主題」の意味・わかりやすい解説

主題【しゅだい】

〈テーマ〉(英語theme,ドイツ語Themaなど)の訳語。思考や表現において素材を統一するうえで中心となるもの。文芸では表現の目標となる思想内容,音楽では楽曲の性格を決め,統一性を与える,それ自体でひとつの音楽表現であるような主要楽想をいう。
→関連項目変奏曲

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「主題」の意味・わかりやすい解説

主題[音楽]
しゅだい[おんがく]
theme; subject

楽曲や楽章のなかで,その有機的な展開と統一の核となる主導的な楽想。多少とも形態的なまとまりをもち,特徴的な外観を呈する。そのためには旋律,和声,リズムの点で明瞭な輪郭をもち,労作,発展のすぐれた可能性をもつことが必要とされる。時代や個人様式により種々の形態をとるが,3~20小節ぐらいに収められ,かつまた内部でいくつかの動機に分割されうるのが普通である。

主題
しゅだい
subject

ラテン語の subjectumはギリシア語の hypokeimenon (下におかれたもの) の訳であり,ある基本的なものをさす。文学作品あるいは芸術作品では表現しようとする中心的内容,本題をさし,テーマとも呼ばれる。作者や作品における根本的意図,支配的態度,本質的概念と結びついて,作品の統一的効果を確保する機能をもつ。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「主題」の解説

主題

テキスト資料,とりわけ活字資料の著作の中で中心として論じられている概念.テーマ,論題などともいうが,芸術作品の主題とは異なるものと考えられている.日本では「件名」とも呼ばれてきた.

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音楽用語ダス 「主題」の解説

主題 [motif]

ある楽曲を構成する基となるメロディー。テーマともいう。器楽曲には特に重要。提示された主題をもとにそれをいろいろと展開、変化させて作曲されることが多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「主題」の意味・わかりやすい解説

主題
しゅだい

テーマ

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世界大百科事典(旧版)内の主題の言及

【芸術】より

… ところで作品の形成には素材が必要で,これには2種類ある。一つは何を表現するかという〈題材(主題)〉である。もう一つは素材は何を用いて表現するかという〈媒材〉である。…

【主語・述語】より

…ヨーロッパ諸言語の場合,副詞句等は除いても目的語や補語は含めることが多い)を特に述語と呼んで,訳語を使い分ける場合もある。
[主語・主格・動作主・主題]
 なお,従来は主語・主格・動作主(主体)・主題などの各語を厳密に使い分けずにきた面があるが,最近の言語学では,これらを明確に区別する。主語subjectは,上述のように簡単には規定できないが,ともかく,すぐれてシンタクス上の概念という色彩が強い。…

【ソナタ形式】より

…〈主要形式〉〈ソナタの第1楽章の形式〉,ソナタの第1楽章はアレグロであることが多いところから〈ソナタ・アレグロ形式〉などとも呼ばれる。一般に全体の構成(表)は主題の(a)提示,(b)展開,(c)再現の三つの基本部分からなり,冒頭に序奏がつくこともある。 提示部では多くの場合,第1主題(主要主題),第2主題(副(次)主題)の二つの主題が提示され,各主題が長かったり多数の楽想が含まれる場合は第1主題部,第1主題群などともいう。…

【日本語】より

…このように形態的に対立する動詞が非常に多く,英語や中国語のように同じ形で自他両用に使われる動詞はきわめて少ないというのも日本語の特徴の一つとしてあげられよう。
[取り立てと主題]
 先に西洋文法でいう〈主語〉に当たるものは日本語にはないと考えるべきだという主張があることを記したが,西洋語の主語は,日本語では,形としては〈~は〉か〈~が〉で表されるのがふつうなので,この形式が,では,何を表すのかということが問題になる。現在では,学校文法は別として,〈~が〉は,述語の表す動作やできごとの主体,存在するもの,性質や状態を帯びるもの,つまり〈主格〉を表す形式であるのに対し,〈~は〉は,格とは別の次元の,話の主題を提示する形式だとする考え方が有力である。…

【文章】より

…その各段階の段落も,それ自身文章と見ることもできる。このような低次から最高次の文章へとまとめていく脈絡は,それぞれの段階での主題に導かれて,ついには文章全体としての一つの主題に統括されるわけである。 文章は,広義には話しことばの場合を含むが,狭義にはそれを談話として除外する。…

※「主題」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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