日本の書籍や雑誌の末尾に,著作者あるいは編集者,発行者,印刷・発行の年月日,版数や刷数,著作権の表示,定価など,出版発売に関する必要事項を記載した部分をいう。歴史的には11世紀末から始まった〈刊記〉(開版年紀,開版地名,開版書肆(しよし)または開版人などを表示したもの)に由来し,法制としては1722年(享保7)に南町奉行大岡越前守が猥褻(わいせつ)書を取り締まるために発した御触書が初めである。以後これが踏襲され,とくに1869年(明治2)の〈出版条例〉,ついで93年の〈出版法〉によって不可欠のものとなった。しかし,同法は1949年に廃止され,法的制約はなくなったが,現在までほとんど変更されることなく慣行として存続し,書誌のためにも必要な事項がここに記載されている。ヨーロッパにおいても昔は奥付をつけ,とくに印刷所あるいは出版所の意匠や標章などをも印刷したもの(コロフォンcolophon)が多かったが,1520年ころからは,それらの事項を巻頭に移して記載するようになり,現今ではそれが欧米書の慣例である。したがって,巻末の奥付は日本をはじめ,中国・韓国の一部のみに見られる独特のものである。
執筆者:布川 角左衛門
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刊本の末尾に、著作者、編者、訳者、発行者、印刷者の氏名、発行所、印刷所、印刷・発行年月日、刷数、版数、定価などを記したページ、またはその部分をいう。歴史的には刊記に由来するといわれるが、法的に定められたのは、江戸幕府が1722年(享保7)12月、5か条からなる出版取締令を公布したときに始まる。その第4条に「何書物によらず此後新板之物、作者並板元実名奥書為致可申候事」とある。これが明治新政府の出版条例(1869)に受け継がれたが、記載箇所や形式についての指示はなかった。出版法(1893)になって「文書図画ノ末尾」になり、記載の形式もしだいに整えられてきた。出版法は1949年(昭和24)5月に廃止され、現在は奥付についての法的規制はなくなった。しかし、書誌的事項を表す重要な箇所になっていることから、そのまま踏襲されている。
[矢作勝美]
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…日本では,翻刻の漢籍にとどまらず,和書にも表示されるようになった。現在日本の書物が奥付という木記と似た表示を行うのは,第2次大戦中まで,法令がそれを規定していたものが,慣習として定着したためでもあるが,その形式そのものが木記から発展したものであることも,また疑う余地がない。なお日本書誌学会では,上述の意味の一般用語としては刊記という術語を用い,時,場所,刊行者の名などのほかに,刊行の縁起などの記載が加わって長くなったものを刊語,刊記や刊語のうちとくにまわりに囲いのあるものを木記と呼ぶというように,ことばの使い分けをすることを提唱している。…
※「奥付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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