〘他ラ五(四)〙 (
動詞「うける(受)」に「賜わる」の付いたもの)
目上の人などから、物を「受け、いただく」意が本義。
(イ) (上の人から物や命令などを)つつしんでお受けする。いただく。
※延喜式(927)祝詞(享保板訓)「幣帛
(みてぐら)を、
神主(かむぬし)、祝部
(はふり)等、
受賜(ウケたまは)りて事過
(あやま)たず捧
(ささ)げ持
(も)て奉れ」
(ロ) (「受け」は「受けつぐ」意) 受けつがせていただく。つつしんで受けつぐ。
※
書紀(720)崇神四年一〇月(熱田本訓)「今、朕
(われ)大運
(あまつひつぎ)に
奉承(ウケタマハル)。
黎元(おほたから)を愛育
(めぐみやしな)う」
(ハ) (手紙などをいただく、の意から) 拝見する。
※
源氏(1001‐14頃)宿木「『うけ給はりぬ。いと悩ましくて、え聞えさせず』とばかり書きつけ給へるを」
② (目上の人のことばを身に頂戴する、の意から) 「聞く」また「伝え聞く」の謙譲語。つつしんで聞く。拝聴する。うかがう。
※書紀(720)舒明即位前(北野本訓)「吾
(をのれ)、天皇臥病と聞
(ウケタマハリ)、
馳上(まうのぼ)りて」
※源氏(1001‐14頃)蓬生「御琴の音もうけたまはらまほしがる人なむはべる」
③ 「(命令などを受け、聞いて)承諾する、受諾する」の謙譲語。つつしんで承諾する。つつしんで承知する。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「諸仏の覚悟、弟子、
身上に唯
(ウケタマハル)と」
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「おほせ給はんことは、難かるべきことなりともうけ給らん」
④ (「私が…とうかがう」の気持から) 「おっしゃる」の意を間接的にいう。
※世阿彌筆本謡曲・
弱法師(1429頃)「この
乞食に名を付けて、皆弱法師
(よろぼし)とうけたまわるぞや」
⑤ 動詞に上接して、「聞き…」「受け…」の謙譲語を作る。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「中のおとどのひめ君をなん、ちひさく聞え給しときよりうけ給はりおきたるを」
[語誌](1)「ロドリゲス日本大文典」には、「うけたまわる」は
書き言葉で、
話し言葉に「うけたまうる」の形がある、と述べる。
(2)①(イ) については、八世紀初頭の
公式令に規定された
文書様式との
関連が考えられる。勅、
勅旨などを受けて文書を起草する場合、たとえば、「奉
(ウケタマハルニ)勅…」と書き始めることになっていた。また、上位者の意を受けて作成する文書の
末尾には、作成者(
差出者)の名の下に「奉
(ウケタマハル)」字を添えたが、この様式は
中古・
中世にはよく行な
われた。