エリマキシギ(その他表記)Philomachus pugnax; ruff

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリマキシギ」の意味・わかりやすい解説

エリマキシギ
Philomachus pugnax; ruff

チドリ目シギ科全長雄 29~32cm,雌 22~26cm。夏羽(→羽衣)の羽色雌雄で異なる。夏羽の雄は脚と,眼のまわりの裸域は大部分がオレンジ色。頭上には房状の冠羽(→羽冠)があり,頸には房状になった襟状の飾り羽がある。これらは黒色や栗色,白色,まだら模様などのほか,頭部と襟で異なる色の組み合わせになるなど個体により変異がある。背面は各羽の縁の色が淡い黒色から栗色でうろこ模様になる。雌は頭胸部は淡黄褐色,背,上面は各羽が黄褐色の縁のある黒色で,うろこ模様をつくる。雄には,雌に似た羽色の個体もわずかにいる。雄の冬羽は雌に似る。ユーラシア大陸の高緯度地方のツンドラ草原で繁殖する。雄は決まった場所に集まり,それぞれなわばりを決め,飾り羽を立ててディスプレイをし,ひきつけた雌と交尾する(→レック)。有力な雄は多くの雌と交尾する。雄が雌を追い払わない習性を利用して,雌に似た雄がほかの雄のなわばりに侵入し,そこにいる雌と交尾することもある。渡り鳥で,ヨーロッパ西部,南部,アフリカサハラ砂漠以南,アラビア半島から南アジア南部,オーストラリア南東端で越冬する。日本春秋の渡りの中継地で,湿地水田干潟などに渡来し,無脊椎動物を食べる。(→渉禽類

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改訂新版 世界大百科事典 「エリマキシギ」の意味・わかりやすい解説

エリマキシギ
Philomachus pugnax

雄は繁殖期襟巻のような飾羽をもつ脚の長い中型のシギ。チドリ目シギ科の鳥。英名は雄がruff,雌はreeve。ユーラシア大陸の北部で繁殖し,冬はアフリカ,インド,南アジアで越冬する。日本には旅鳥として春と秋に渡来し,海岸近くの入江や水田にすむが多くない。全長は雄が約32cm,雌は約25cm。夏羽の雄には眼の上に耳状の飾羽,後頸(こうけい)には襟巻状の飾羽が生ずるが,その色や斑紋は個体によって違い,背,肩羽,脚の色も多様である。雌と冬羽の雄は上面は褐色で下面は淡褐色。浅い水の中を歩きながら動物質の餌をあさる。繁殖地では,雄はレックlekと呼ばれる一定の場所に集まり,互いに飾羽を広げて向かい合って争い,レックを訪れた雌は気に入った雄と交尾をして,離れた場所で巣をつくり雛を育てるが,雄は営巣,抱卵,育雛(いくすう)に関与しない。地上にへこみをつくり,皿形の巣をつくり,1腹4卵を産む。抱卵日数は約21日。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリマキシギ」の意味・わかりやすい解説

エリマキシギ
えりまきしぎ / 襟巻鷸
ruff(雄)
reeve(雌)
[学] Philomachus pugnax

鳥綱チドリ目シギ科の鳥。ユーラシア北部で繁殖し、冬は南へ渡る。日本には旅鳥として渡来するが数は多くない。全長は雄約32センチメートル、雌約25センチメートル。翼長は雄約18センチメートル、雌約15センチメートル。夏羽の雄には襟巻状の飾り羽があり、その色は個体によってさまざまに異なる。雌と冬羽の雄では上面は黄褐色で黒い縦斑(じゅうはん)があり、下面は淡褐色。繁殖期には雄はレックとよばれる一定の場所に集まり、飾り羽を広げて向かい合って争う。レックを訪れた雌は気に入った雄と交尾するが、乱婚的で何羽かの別の雄とも交尾する。渡りのときには入り江、水田、湿地などにいて、浅水中で動物質の餌(えさ)をあさる。

[高野伸二]

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百科事典マイペディア 「エリマキシギ」の意味・わかりやすい解説

エリマキシギ

シギ科の鳥。翼長17cm。ユーラシア北部で繁殖し,冬季はアフリカやアジア南部など南へ渡る。日本では春と秋に旅鳥として海岸や水田などに渡来するが,数は少ない。中型のシギで,雄は繁殖期には目の上から首にかけて襟巻状の羽毛が伸びるのが特徴。繁殖場所では雄は踊り場所に集まり,求愛のディスプレーを行って雌を引きつける。

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世界大百科事典(旧版)内のエリマキシギの言及

【シギ(鷸∥鴫)】より

…繁殖期には営巣地の上を鳴きながら飛び回り,なわばり宣言を行い,近くの木の枝,杭,石の上などに止まって鳴くこともある。あまりはっきりしたなわばりをもたずに,比較的狭い範囲に数つがいから十数つがいが巣をつくるもの,一雄多雌で繁殖するもの,エリマキシギのように集団交尾場(レックlek)をもち乱婚的繁殖をするものなどがある。地上のくぼみや草の根もとに枯茎,枯葉,細い枯枝などで皿形の巣をつくり,淡色の地に黒褐色の斑紋のあるヨウナシ型の卵を産む。…

※「エリマキシギ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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